第4話 おっさん、スキル獲得②
岩の前で剣を構えてそのまま……
「スラッシュ」
横に剣を振り抜いた。
普通であれば、『かーん』なんていう音が鳴って弾かれそうだが……
ザン!!!!
まるで豆腐を斬るかのように岩は斬ることができた。
グラッ……
ドシーン。
斜めに斬ったせいか、上にあった岩が地面に落ちた。
そして、光となって消えていく。
「こ、壊せた」
ペタリ。
その場に尻もちを着いた。
「岩を壊せてしまった」
破壊不能岩なんていう名前がついた物騒な岩を壊してしまった。
しかし、すぐに立ち上がり俺は確信した。
(間違いない。このスキル、かなり強いと思う)
これでスキルの効果の確認は終わった。
帰ろうかと思っていたら俺の視界に文字が浮かび上がった。
さっきの岩を壊した時の戦利品だろうか?
【経験値を獲得しました】
【レベルが上昇しました】
「おー、またレベルが上がった」
今日だけで何度もレベルが上がってしまった。
俺の今までの苦労はなんだったんだろう。
そう思わざるを得ないくらいのハイスピードレベルアップである。
いざ、ステータスチェック。
名前:タツヤ オノ
レベル:10
攻撃力:10
防御力:10
スキル:防御無視
ってな感じ。
レベル以外はいつもと変わらないステータス画面だったので閉じようかと思ったのだが。
「ん?」
【ボーナスポイントが10溜まっています。割り振りますか?】
「ボーナスポイント?」
呟くとウィンドウが変わった。
攻撃力:10 ↑
防御力:10 ↑
ボーナスポイント:10
「ステータスを割り振るのに使えるポイントってことか?」
ためしに攻撃力の↑を押してみると数値が【11】になりボーナスポイントの数値は【9】となった。
「なるほど。そういうことか」
どうやらレベルアップとは別に自由に使えるポイントがこの世界では手に入るらしい。
「こんなものあるなんて知らなかったなぁ」
ていうか。
(スキルに関しても知らなかったんだよなぁ。レベル上がったらスキルが開放されるなんて知らなかったぞ俺)
ステータスがあることは知っていたが、スキルを獲得できることは知らなかった。
だから正直スキルを獲得した俺が一番驚いているくらいだ。
(はぁ、あのリーダーが何も教えてくれなかったもんなぁ)
クソみたいな職場あるあるだと思うんだが、上司が仕事内容や職場のルールなどをマトモに教えないってやつね。この世界に来ても俺はそれをやられてた。
日本のブラック独特のものだと思っていたが、異世界でもそういうものらしい。
だが、しかし困ったな。
「どうやってステータスを振るのが正解なのか」
って少し考えて俺は攻撃力の↑を連打した。
【攻撃力:20で確定させます、よろしいですか?】
→はい
いわゆる極振り(?)である。
こうしたのには理由がある。
(俺がやってたゲームバランス型が弱かったんだよな)
俺が1番遊んだRPGなんだけどバランス型が弱かった。
というより防御力振りとか耐久特化のキャラとかが弱かった。
敵のインフレが進みすぎて防御力が追いつかない。
だから、殺られる前に殺るっていうのが強かった。
というより俺がやってきたゲームだいたいこんな感じだった。だいたい火力押しでなんとかなる。
殺られる前に殺った方が早いし安全。
安心安全の火力ゴリ押し。
という経験があっての行動である。
そして今の俺には【防御無視】がある。
高火力と合わせて最高に頭のいいチンパンジー戦闘スタイルである。
「さて」
ステータスウィンドウも閉じたことだし今日は俺も帰ることにした。
俺は手当り次第に邪魔な岩を切って帰ってた。
まるで豆腐みたいに斬れるので楽しくなってしまった。
そうして帰ってると同業者のおっさんとすれ違う。
「こんばんは」
「こんばんはー(スパン)」
同業者の前で岩を斬り裂いた。
ギョッとしたような顔で俺を見てくる。
「え?岩を斬った?」
俺はスキルやスキルポイントの話を同業者のおっさんに少しだけした。
「そうなんですよー、実は俺、岩斬れちゃうんですよー。はははっ(スパーン)」
もう一度岩を斬った。
「ぎょえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
同業者は走って俺から逃げるように走ってった。
「あららっ。不審者に思われたかな?」
考えてみれば夜の森の中で岩を斬ってる人間なんて見たら不審者だよな。
これからはやめておこう。
それにしても。
(俺案外強くね?スキルも強そうだし)
ゲームでたまに見かける【育ててみたら案外強かったキャラ】枠じゃね?俺。
略してSAT。
S(育ててみたら)A(案外)T(強かった)。
実は俺はまだ本気を出していなかっただけだったっぽい。
~おっさん移動中~
街に帰ってくるとさっそく酒場に向かうことにした。
腹が減ったのだ。
「ふぅ」
軽く息を吐きながら席に座りメニューを見る。
そうしていると顔馴染みのウェイトレスが近くにやってきた。
「お、今日も来てくれたんですね。タツヤさん」
「うん、ここのご飯おいしいしね」
メニューを見ていつものように注文した。
今日は懐がちょっと賑わったし、いつもより多めに頼もうかな。
ふふふ、あれも食べたいし、これも食べたい。
「はーい!ご注文ありがとうございますー」
そう言ってウェイトレスは厨房のほうに入っていこうとしたが、思い出したように俺を見た。
「あっ、そういえばタツヤさんにお客さんが来ているみたいですけど、ここにいることお伝えしてもいいですか?」
「俺に客?誰?心当たりないんだけど」
「さ、さぁ。私も今日初めて見た方なんですよ」
そう言ってウェイトレスは隅の席にいた少女を指さした。
すぐに誰かが分かった。
それは俺がさっき森で助けた白い髪の兎のような少女だった。
「あー、一応知り合いだからいいよ」
話くらいは食事しながらでも出来るし、少し話してみようか。
それにあの様子だと俺を探して待っていてくれたみたいだし。
その気持ちを否定するほど性格も悪くないつもりだ。
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