第2話

僕の名前は西園ハヤテ。少しの間だろうけどよろしくね、カオリさん。カオリさんもタメでいいよ」


「よろしくお願いします。私の敬語は癖みたいなものなので気にしなくていいですよ」


「そうなんだ。実は僕、ついさっき目が覚めたばかりなんだ。現状を教えてもらってもいいかな?」


自分から情報を取りに行くことは大切だ。一番最後に来たという点を除いてもいざとなったとき立場が悪くなってしまう


「もちろんです。まずはここにいる人達を紹介しますね。」


「ありがとう。そうしてくれると助かるよ」


するとカオリさんは他の人の特徴を合わせわかりやすいように紹介を始めた。


「まず皆さんの中心で話を進めているガタイがいい男性が警察官の飯田ケンジさん。」


「人形自体はただの人形みたいだな.....この紙を除いては」


警察官ということなのでここに居るうちはケンジさんを頼ることが多くなるだろう。早速リーダーシップを発揮しているし雰囲気が悪くなることはないと思う。


「パソコンを持って積極的に意見を出しているのがIT系の企業につとめている櫻葉コウさん。」


「そもそもこの人形について話しても意味がないだろう。手っ取り早くここから出ることを考えたほうがよっぽどマシだ」


すこし、いや大分言い方はきついが言っていることは的を得ている。コウさんの意見はなるべく良く聞いていたほうがいいだろう。


「緩めのパーカーを着てその隣で話を聞いているのがフリーターの赤坂ソウさん。」


「それもそうだね。でも、ここから出るにしても外につながるであろう場所は全部封鎖されてたし.....」


少し気弱そうに意見を出したのがソウさん。雰囲気も合わせてなんだか気が合いそうな気がする。


「メガネを掛けて紙を凝視しているのが塾講師の後藤タケルさん。」


「それにしてもの紙に書いてあることはだいぶ物騒ですね....人を殺すだとか、処刑だとか....本当のことなのでしょうか.....」


紙に書いてあることはかなり気になるが、塾講師ということはタケルさんは頭がいいのだろう。積極的に意見を聞きに行きたい人物だ。


「ゴスロリで椅子に座って優雅に紅茶を飲んでいるのが七種アノンさん。」


「.....」


本当に何も喋らず紅茶を飲んでいるだけだ.....。アノンさんは何がしたいのか全くわからないな.....


「みなさんとは少し離れたところで怯えているのが宮森ミミさんで引きこもりだそうです。」


「な、なんでこんな事になってるんですかぁ!.....ひ、人を殺すだとか信じたくないですよぉ!」


怯えていると言うか、混乱していると言うか.....多分ミミさんは言われたことを全部鵜呑みにしてしまう人なんだろうな.....


「これで全員ですね。」


なるほど。だいぶ濃いメンツだな.....


「なるほど。だいぶ濃いメンツだな.....」


「口に出てますよ」


口に出ていたらしい....次からは気をつけなければ


「おっと、失礼しました。あとから来た僕が言うのも何だけどそろそろみんなのところに行こうか。」


「そうですね。ハヤテさんのことをみんなに話さなくてはなりませんし」


そう言って全員がまとまっている場所へ向かう。怪しまれないように行動できるといいんだけどな.....


そうして全員が一箇所に集まって時だった


『皆さん目が覚めたようですね。これからゲームを始めます。ルールは簡単。人を殺してここから脱出するための道具を集めるのです。詳しい説明は日本人形の持っている紙、または個室のデスクの上にあるメモ帳に書いてあるので確認してくださいね』


..........は?


「や、やっぱり本当のことでしたぁ!もう嫌ですよぉ!」


「誘拐罪に加え教唆罪。これは許されることじゃないぞ!」


「ふざけたことを言っている暇があったらここから出せ」


「な、なに?どうなってるの.....?!」


「ふふふ.....」


「皆さん落ち着いて.....!」


全員慌てているようだ。かく言う僕も何がなんだかよくわかっていない。


『確認が終わりましたら自室にお戻りください。21時までに自室に戻らなければ処刑が実行されます』


現在の時刻は20時半。あと三十分でさっきの部屋に戻らないと死ぬってことか?まだ詳しいことは何もわかっていないのに....


「さっきも言ったが俺は警察だ。必ずここから出るための手立てを見つけよう。まずは犠牲者を出さないためにも指示に従ってはどうだろうか?」


予想道理、ケンジさんが指揮を取ってくれるようだ。まだ状況整理が出来てないから大分助かる


「なぜ俺がお前の案に従わなくちゃいけない。警察だろうが現状は同じだ。俺は俺でやらせてもらうぞ」


なんとコウさんが反対し1人行動に出るそうだ。こういうのがフラグって言うんだよな.....


「こ、コウさん、ここはケンジさんに従っておいたほうがいいんじゃないかな?ケンジさんは間違ったことは言ってないし.....」


ソウさんの言うことも正しい。やはりケンジさんに従うことが懸命だと僕は思った


「誰がなんと言おうが俺は1人で行動させてもらう。アナウンスのことを信じたどこの誰かに殺されたくないからな」


それ、コウさんが逆に信じているのでは.....?と思ったが声に出してはいけないような気がして黙っておいた。


「それでもいいさ。とりあえず、安全のためにも夜間は歩き回らずに自室にいよう。各自考える時間も必要だろうしな。明日、8時にまたここに集合しよう」


ケンジさん、大分寛大だな.....

まぁ、夜間に出歩かないという提案は大分ありがたいので大人しく従っておこう


「僕もケンジさんの案に賛成です。いつ何がどうなるかわからない以上アナウンスには従うべきだと思います。自分の身を守る意味でも夜間の出歩きは禁止にしましょう」


「ハヤテさんがそこまで言うなら私も賛成します。そのほうがきっといいでしょう」


カオリさんも賛成してくれた。これはきっといい兆しだと思う


「勝手にしろ」


そう言ってコウさんはホールから出ていってしまった。それをしきりに他の人も自室に戻ったようだった。

コウさん以外、ケンジさんに従うのは賛成ぽかったし夜間に出歩く人は居ないだろう


「ここから出られるように頑張りましょうね。ハヤテさん」


そう言ってカオリさんもホールから出ていった。


「そうだね。お互いここから生きて出れるよう、努力しよう」


そう呟いた僕の言葉は、誰も居なくなったホールによく響いた。きっと、この言葉を聞いたものは居ないだろう



自室に戻ってきたのはいいが、やはりこの部屋は気味が悪い。個室はどの部屋も同じ作りなのだから文句は言えないがもっとマシな作りはなかったのだろうか.....


20時52分.....あと少しで鬼が決まる時間だ。時間まで改めてルールの確認をしておこう....

それにしてもやっぱり頭が混乱するようなことばかりだな。そう思ったときだった


ジリリリリリリリリリリリ!!!!!!


「うわぁっ!!!」


ジリリリリリリリリリリリ!!!!!!


「び、びっくりした、電話か.....はい。ハヤテです」


驚きながらも電話に出ると


『今回の鬼が決まりました。厳選な検査の結果今回、西園ハヤテ様は鬼に選ばれませんでした。参加者の方と協力し、鬼を処刑しましょう』


ピー、ピー、ピー


とだけ言って切れた。

今回、僕はどうやら鬼に選ばれなかったらしい。その点は安心したが僕が鬼に殺されてしまうかもしれないし、話し合いで鬼と判断されてしまうかもしれない。それだけは絶対に避けなければならない


今後のためにも、今は寝て体力を温存しよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る