第3話 夢の無限エネルギー
「お前、大丈夫か?」
そう言うと、ヘルメット男はヘルメットを取った。
出てきた顔は普通の顔だった。
てっきり、ヤバいヤツだと思っていたけど、顔はそうでもない。
いや、人は見かけによらないから、まだ警戒しておいた方がいい。
「俺の名前は筋繊維
なんだ、名前教えてくれるんだ。
それにしても変な名前だ。
「ああ、ペンネームだよ。俺もカクヨムマッスルユーザーだ」
そう言うと
僕はハッとした。
まさか、こんな世界にもカクヨムがあったなんて。
ちょっと名称が違うみたいだけど、とりあえず気にしない。
「僕はリッチマンです。あ、ペンネームです」
僕たちは握手をした。
「それにしても、その話……」
「信じてもらえないかもしれないけど……真実です」
他のヒャッハーたちはざわついた。
「そうか。とりあえず熱中症の疑いがあるから、近くの街まで送るよ」
「え?」
どうやら信じてもらえなかったようだ。
残念だけど、仕方ない。
僕は天を仰ぐ。
この砂漠では太陽を遮るものは何もなくて、とても暑いし、喉も渇いていた。
一人でずっと歩くより、ヒャッハーたちに送ってもらった方が良いかもしれない。
「それじゃ、お願いします」
そう言って、
ブロロロッ。
スクーターは砂にタイヤを取られて、とても走りにくそうだった。
スピードも速いわけじゃなくて、時折転びそうになる。
「リッチマン。この世界のこと、どれぐらい覚えてる?」
「いえ、ほとんど知りません」
「そうか」
彼は街までの道すがら、この世界のことを教えてくれた。
超温暖化。
その現象によって世界は後戻りできなくなったらしい。
慌てて化石燃料の使用を止めたけど、それでも気候は元に戻らなかった。
再生エネルギーもあるにはあったけど、全てをまかなうことはできなかった。
「そこで、俺たちの出番さ!」
人類はエネルギーを求めた。
そして生み出された最後のクリーンエネルギー。
それが人力発電だった。
各地のジムと発電所を連結して、マッチョが重りを上げたり下げたりする力を利用して発電する。
夢の無限エネルギー。
こうして人類は全員マッチョに変貌していった、らしい。
僕はその話を聞き流した。
こんな世界は僕の世界じゃない。
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