第2話 死んでしまうとは、何事だ!

「なん……だと!?」

 ヘルメット男は一歩退く。


 まあ、こんなことを言ってすぐに信じてもらえるとは思っていない。

 でも真実だった。


「マジかよ?」

「プロテイン不足か?」

「いや、筋肉痛の副作用かもしれねえぞ?」


 ヒャッハーたちはざわついた。


 落ち着いた頃に、僕は事情を話し始める。




 僕はニートだった。


 そして、日々小説を書いては「カクヨム」というサイトにアップする、Web小説家だった。

 書いていたのは異世界転生ものだ。


 僕みたいなニートがダンプカーにはねられて、死んだ後に異世界に転生する話だ。

 誰にも読まれないし、評価もされないけどそれでも良かった。


 書いているのが楽しかったんだ。


 でも心のどこかで、この作品みたいにならないかなと望んでいた。

 僕も書いている作品のように異世界に行って、活躍するんだって本気で思っていたのかもしれない。


 それぐらい、ニートの生活には救いがなかった。


 そんなある日、僕は本当にダンプカーにはねらた。

 思っている以上に痛かった。


 でも、その後、転生を司る神様に会った。

 これでチートをゲットして、異世界で活躍できると思った。


「君、お金持ってないの?」

 神様はそう言って、お金を要求してきた。


 地獄の沙汰も金次第とはよく言ったもので、常に金欠だった僕のようなニートには能力もくれないらしい。

 そうして僕は何の能力も持たないまま異世界に放り出された。


 しかも、お城で召喚されたとかじゃなくて、いきなり森の中からスタートした。

 五分も歩いていたら、完全武装のゴブリンに囲まれて、タコ殴りにされてしまう。


 思っている以上に痛かった。

 こうして、僕はすぐに神様のところに戻された。


「死んでしまうとは、何事だ!」

 神様は大層ご立腹だった。


 でも、現代人が何も持たず森の中に放り出されたら、異世界でなくても死んじゃうよ?

 そう言い返したかったけど、僕は口を閉ざした。


「お前のようなヤツは出直しだ!」

 そう神様に言われて、地球に戻ってきたんだ。


 目が覚めたら、世界は筋肉の炎につつまれていた。

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