第4話

「頭を打っているので検査が必要ですが、見る限りでは大丈夫なようです。そのほかに大きなけがはないですし。女がクッションになったんですね」

俺は医者の目をじっと見て言った。

「あの女はどうなりました。先生、どうかお願いですから、教えてください。」

医者は俺を見て少し考えた後、言った。

「患者の症状は一応第三者には言ってはいけないことになっているんですが、あなたは十分すぎるくらいに関係していますので、言ってもいいでしょう。まず頭をコンクリートに叩きつけられた上に、同時にあなたの頭がぶつかっています。頭蓋骨が陥没して、脳にも損傷があります。意識不明です。おまけに腰を強打したために、今は半身不随状態です。すぐに緊急手術がおこなわれるでしょう」

ひどい有様だが、俺は正直ほっとした。

今後のことはわからないが、しばらくはあの女に悩まされることはないだろう。

「警察が話を聞きたいと言っています。あなたの意識が戻ったことはもう伝えましたので、もうすぐここにくるでしょう。その時は対応願いします。その前に、念のために頭の検査はしますが」

「そうですか。わかりました」

「それでは待っていてください」

待っていると、病室の外が急に騒がしくなった。

――なんだ?

俺は病室を出た。

数人の看護婦が口々に騒いでいる。

その内容は信じられないものだった。

例の女がちょっと目を離したすきに、病室から姿を消したと言うのだ。

あの女が消えたこと自体は、それはそれで問題だろう。

しかしそれ以上に問題なのは、頭蓋骨陥没で意識不明の女が、腰を強打して半身不随の女が、いったいどうやって病室を抜け出したと言うのだ。

そして今、いったいどこへ行ったと言うのだ。



       終

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間違い電話から ツヨシ @kunkunkonkon

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