ショッピングモール フードコート、本屋

武器と防具を買った俺はフードコートへやってきた。

見た目は前世と変わらない。

家族連れがお店で買った料理を笑顔で食べている。


その食材が魔物肉なのが前世との違いだった。オークやジャイアントラビットなど前世でもイメージできる物もあれば虫系の物も……ある。


魔物肉と聞くとウッと嫌悪感が少し湧いたが、同時に沸いた好奇心の方が勝った。


今世の記憶の中で家族で食べた記憶もあるけれど、こうして前世の記憶を思い出してから食べるのは初めてだ。


今回はあまり冒険はしないが気になったものいくつか注文するとしよう。


オーク肉とテーグーとかいう魔物の乳を使ったチーズインハンバーグ。

最近韓国で流行りだと売っていたスモールフローティングアイとかいう魔物の目玉のキムチ漬け。

レッドビーン•ウォッシャーなる魔物が落とすレッドビーンつまり小豆を使った羊羹。

この魔物、前世では小豆洗いという妖怪だし昔は今世でもそう呼ばれていたらしいが、戦後、海外に合わせてこうなったとか……GHQは今世の歴史でもある。今世は今世なりに第二次世界大戦もあったようだ。


それらを注文した。


魔物素材ということだったが前世のものより美味しかったと思う。基本的な味はそこまで変わらなかった。羊羹も美味しかった。目玉はゲテ物感あったが普通に柔らかくてトッポギみたいな物だろう。

韓国料理には詳しくないからあってるかわからないけどね。

前世でもう少し料理に詳しかったらもっと楽しめたろうな〜食レポというのは難しい。

美味しかった。楽しかった。以上!


食事中に第二次世界大戦ガーなどという話題が浮かぶ俺には適当な感想しか湧かなかった。

今度はもう少し攻めた料理を食べてみるか。

今世のこれからの経験でもっと上手い感想を言えるような大人になりたいものだな。


さて、腹ごしらえを終えた俺は本屋に向かった。


ネットの台頭で本屋は縮小傾向にあるのは今世でも変わらない。

けれどもこのショッピングモールの本屋は大きかった。冒険者用の本が売られているのが繁盛の理由だろう。


ネットがあったとしても本という信頼できる情報は欠かせないものなのは変わらないのだ……とカッコつけて言いたかったが、


「それは違うか……」


怪しい陰謀論の本が片隅で売られてるのを見るとあと数年もしたら変わってしまいそうだ。悲しいね。こういう本の方が信頼できる情報より売れるらしい。


なので繁盛してる理由はこの本屋が冒険者向けの呪文書を売っているからだろう。

呪文書はいわゆる現代版魔法の巻物というやつである。

魔力のこもったインクで書かれた魔法陣や発動手順が書かれており、万人がその本を消費して書かれているその呪文が使えるようになるという物で高価な消耗品である。


昔はダンジョン産のを参考に作られた高価な魔法の巻物だったようだが、現代の技術で本にすることで何回か使えるようになっていたり使える種類が増えていたりする。

特殊な技術が必要な事やインクの希少性から高いのは変わらずで、安い物で一冊で一万円はする。


前世のファンタジー通はご存知の通り、今世においては魔術師はこの呪文書から呪文を覚えることができる。

描かれた魔法陣から魔力の流れを学び発動の仕方を身につける。

呪文の巻物はダンジョンからもドロップするがありがたいことに現代だと多くの呪文がこういった呪文書となっている。

この世界の研究者に感謝。


呪文書に描かれた発動手順の通りでも良いんだが、魔術師は魔法陣を解析して魔法発動の手順を自らの手で編み出すことができる。

文字通り魔力を操作する感覚を養って自分なりの発動手順を作り出さなければならないのだ。

初めは書かれた通りで感覚を掴むことからはじめようと思っているがその先は指パッチン一つでありとあらゆる呪文が使えるかも……。


ここは前世の記憶はほとんど役立たないところで少し心配してるが、この困難は望むところである。

前世で夢見た魔法を、その手で解析して自らのものにするなんてことができる。

言葉にできない喜びを覚える。


「なんという喜び、悦び、歓び、よろこび……あぁなんて素晴らしいのか」


思わず口に出してしまい周りの客から変な目で見られてしまった。

男はロマンに触れるとIQが2とかになるのだ。

前世のコミケなんかではそういう奴がたくさんいたし前世の俺もまたそういう男だった。


俺は本屋で一番発動難度が低いと言われているLv0呪文が複数書かれている本を何冊か買うことにした。発動難易度の順で次に難しいと言われてるのがLv1と以後数字が増えていく。

少し悩んでLv1呪文も一冊だけ買っておくことにもした。俺は魔術師だしここはお金のかけどころだろう。Lv1呪文の本だけでも五万は飛ぶが……魔術師は使える呪文を増やしてなんぼと言われているし本の余った使用枠は売ったり使えば良いしで絶対無駄にはならない。


ちなみに呪文難易度の呼び方はLv◯で統一されていて国際規格って奴だ。呪文名は国によって違うのは言語だししょうがないね。


ここでも店員さんにもおすすめを聞きつつ、買った本のタイトルはこんな感じ。


『国連冒険者ギルド公認冒険者支援Lv0呪文セット〜これさえあればダンジョンも快適〜』

『地味に便利!Lv0呪文のススメ』

『もう不遇とは言わせない。魔術師向けおすすめLv0呪文習得書』

『最初の一歩!実は使える攻撃用Lv1呪文三選』


以上の4冊を購入し、本日の買い物は終了となった。さて、家に帰って魔法の練習と行きますか。

習得が上手くいったら中古の本屋(呪文)巡りもいずれしたいな〜

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