ショッピングモール 防具屋

武器の次は防具である。

前世の魔法職といえば布の服で鎧は着れず紙装甲と言われるのが一般的なイメージだ。

それは今世でも一般的なイメージとしてあまり変わらないがそれには今世なりの理由がある。

武器屋のチャラいお兄さん店員さんも言っていたが魔術師は動きを阻害するようなものを避けなければならない。

なぜなら魔法、呪文と言われる各種呪文の発動には魔術師の場合、身体的な正確な動作が要求されるのだ。

手の動きや正確な詠唱などなどで魔力を正確に操作する必要があるということ。

他の魔法職では口頭での詠唱のみや感覚的なもので咄嗟に発動できるクラスもあるのだが魔術師の場合は色々と呪文によって手順が必要となる。

魔術師は全ての呪文が使える代わりに呪文単体だけを見ると使い勝手が他のクラスに比べて劣るクラスというわけなのだ。


それを踏まえて防具も揃えていくとしよう。

ここが中世ファンタジーの世界だったらただの布の服にならざるおえなかったかもしれない。

今世は現代ファンタジーだ。

動きを阻害せず防御力を高める装備はたくさんある。

まずは頭部を守るヘルメットを見ることにした。

軽量で頑丈、中世には存在しない現代科学が生み出した逸品達だ。


今度は綺麗なお姉さんだった店員さんにバンバン質問したところ現代のヘルメットはABS、PC、PE、FRPの四つの樹脂製品から作られているのが一般的でそれぞれ特徴があるらしい。耐久性だったり熱とか環境だったり薬品とかに対する性能がそれぞれ違うらしい。

俺の頭では馬耳東風というやつだ。

馬の耳に念仏ってやつだな。


「FRPは正確には樹脂ではないけど樹脂って呼ばれてるんでしたかねぇ〜」

なんて店員さんは言っていたが俺にはよく理解できない話だった。

店員さんもふわっとしていたので正確なところはわからん。

化学の話は説明されても正直俺はアラミドってなんだというレベルだった。


説明を聞いてもわからなかったが、命に関わる大事な装備なので妥協はしない。

(予算内で)一番いいのを頼みます。

と店員さんにお願いするとFRP製品のヘルメットを紹介された。繊維強化プラスチックと呼ばれるものでその製品は


「これはちょっと違うものですけど似たものは準軍用の防弾ヘルメットなんで、これも耐久性耐候性に優れた逸品なんですよ〜」


などと店員から説明された。

目を保護するバイザー付きの黒いヘルメットで見た目もカッコ良いものだった。

中学卒業したばかりの身としてはこれは気に入ってしまった。

いかに前世の記憶があろうとも男はこういうのがいくつになっても好きなのだなと思ってしまった。


ちなみに準がつくのは軍用といってもダンジョン産の素材を使った高級装備品が一般的で素材が足りない部隊のところに採用される装備らしい。


今世なりのハイローミックスというやつだろうか……俺にはわからんけども。


ヘルメットの次は胴体だ。

店員さんに尋ねる。


「魔術師さんなんですよね〜。確かダンジョン産のローブとかもありますがお値段かかりますからね〜。あ、ライダースーツにプロテクターなんかどうでしょう? 元はバイク用品なんですけど〜ダンジョンでも十分使えるものが今ならお安くなっていたと思います。たしか、なんと半額ですよ!」


とのことで試着させてもらった。

これまた黒くて、スーツの上にプロテクターで、胴体はもちろん脊髄やら肘やら膝やら腕やら脛やらもろもろを守ってくれる。


「スーツは防刃でプロテクターはハードタイプなのでしっかり頑丈ですし浅い階層なら十分以上の性能があると思います。これなら噛みつかれてもナイフで切りつけられても大丈夫です。手袋もついてきますよ」


一式装備するとかなりかっこいい。

サイズもぴったりだ。

内心はそう思ったが一応声はこうなる。


「売れ残るのもわかる……」


「あはは……動きやすさ重視の逸品でかっこいいんですけどねぇ」


店員も苦笑い。


全身スーツで……一言で言うと完全にしょぼい仮〇ライダーのような雰囲気がある。黒いので悪役かな……マニアックなところで言うとその雰囲気はゴツい装備で固めた公共放送番組でタイムトラベルしてスクープなハンターの人みたいな感じを連想した。こっちは色も黒いしあっちはプロテクターつけてなかったけど……そんな雰囲気。


そんな内心で前世でも誰にも伝わらなそうな例えをしつつ、装備品に関して妥協はしないと決めている。見た目より性能だし、値段が大事だ。


元はバイク用品で売れ残りということもあって半額となっていた。

性能も満足いくものだったため購入を決定。


この格好で歩くのは少し恥ずかしいが防御力重視だ。そもそもダンジョンだったらあまり人の目もないし気にするところじゃないな。


「あとは小型の盾とかどうでしょうか〜魔術師さんだとあまり必要ないかもしれませんけど〜あると便利ですよ。武器との兼ね合いもありますけどどうですか〜」


確かに武器は片手でも使えるサバイバルナイフとスリングなので盾を持つのは良いと思った。

店員さんの勧め通りにポリカーボネート製でほぼ透明のライオットシールドと呼ばれる小型の盾も購入。

機動隊が持ってるようなやつの軽量小型版だそうな。

呪文使う時はその辺にポイっと捨て置いてもいいわけだから盾は便利だろう。


「歩きづらくはなりますけどベルトにかけて持ち歩くこともできますよ〜」


とも言われたので盾は購入だ。


全て一式試着させてもらって動けるかも試した後購入。

武器と同じく倉庫に送ってもらう。


「ありがとうございました〜又のご来店をお待ちしております〜」


ニコニコお姉さんの店員さんに内心、もしやちょっとだけ良いように扱われたかなと自身の目利きのなさを悲しくなりながら店を後にした。


でも良い装備を買ったとは思っているので大丈夫。現代技術で作られた装備品によって魔術師でもただの布の服をはるかに上回る防御力を手に入れたのだった。


その後俺は防具ではないので別のお店でリュックとポーチとポーチに入れるポーションや非常用の飲食料品をいくつか購入した。

リュックはダンジョンでの収穫を持ち帰るために必要なものだ。

ポーチに関してはポーションを入れていつでも取り出せるようにするため、スリング用の弾薬もこれで持ち運ぶ。


傷を瞬時に治す回復ポーションは軽く数百万で取引されてるので買ったのは数万円程度の止血ポーションだ。

ポーションもほんとにたくさんの種類があって面白いのだが、どれも現状では手が出ない値段だ。

各種ポーションをちゃんと見るのは稼いでからだな。


さてこのあとはフードコートで腹ごしらえをして、そのあとは本屋で待望の呪文について購入するとしよう。楽しみだ。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る