ショッピングモール 武器屋
通称冒険者ギルドと呼ばれる今世の役所で冒険者登録を済ませた俺は装備を整えるため日本でも有数の巨大ショッピングモールにやってきた。
その規模はさすがは都会であり、冒険者もターゲットにしてる巨大なショッピングモールは、ここに来た冒険者は全ての装備が整うと言われるほど。
流石にネット通販の方が安いし揃えられるらしいが物の目利きやそもそも冒険の経験もない初心者はここで買った方がいいらしい。
それにこういうところは店員さんがしっかりと答えてくれるのだ。
バンバン質問していくつもりだ。
まずは肝心要の武器からだろうか……。
ショッピングモールには前世にはなかった武器屋がある。前世、海外なんかでは銃砲店があるという話だったが今世の日本にもそれがあるという感じだろうか。確か銃に関して、今世の記憶によると日本であっても冒険者の成人は資格を取れば銃器の使用が許されていた。
防具屋や道具屋もあるがまず武器屋に入ることにした。
冒険者をターゲットにしているというショッピングモールなだけはあり武器屋だけでも色々な店が並んでいた。
鉄格子で区切られ厳重な管理がされてることが一目でわかる銃砲店や単価数百万〜億クラスの魔法のこめられた武器やそのレプリカなどを展示してる高級店もある。
俺はそんなお店の中からホームセンターのような雰囲気を醸してる地味な武器店に入った。
壁棚に飾られているのはナイフ、包丁、刀、といった刃物からバット、トンカチ、メイス、といった鈍器、スコップやバール、一目では何に使うかわからないものまで多種多様な武器達だった。
「らっしゃーせー」
慣れた店員のどこかチャラいお兄さんの掛け声を聞きながらざっと眺める。
求めているのは護身用の武器だ。
ただもっぱらこのあと見にいく本屋で習得予定の魔法で戦う予定ではあるのだが意図しない接近戦で身を守れる武器が欲しいのだった。
今世の義務教育では一応ダンジョンから出てくる魔物に備えるために一通りの武器の扱いや管理は触り程度は習うのだが特にこれと言って俺には得意な武器はない。
平凡な中学生なのだ。
そも、近接武器を使ったところで中学卒業時点の小僧の体では有効な武器になるのは難しいそうだし、どれにしようかと悩む。
「らっしゃーせー、お困りですか〜?」
ありがたいことにさっきの店員さんに声をかけられたので答えるとする。
前世の俺ではできなかったことだ。
「これからダンジョンに潜る魔術師なんですが護身用の武器が欲しくて……何がいいか悩んでます」
そう俺が言うと店員さんは俺の体をざっと一瞥するとこう答えた。
「新人冒険者さんですか〜! そういうことならちょっと待っててくださーい」
奥に引っ込んだ店員さんがしばらくして持ってきたのは鞘に収められた刃渡り30センチほどのナイフと謎の紐だった。
「魔術師だったら防具をしっかりした方がいいと思うんで武器の方はこの二つでいいと思います〜サバイバルナイフとスリングっすね。片手で使える武器っす。魔術師さんだとなるべく呪文使えるように動きを阻害しないようにしないといけないっすからね」
スラスラと店員さんが説明してくれる。
「えっと、ナイフはわかるんですけどスリング?」
どこからどう見てもただの紐……いや、ちょうど真ん中に布地がある。
「投石器、日本だと印地ってやつっすよ〜っていっても今は丸石より鉄球のほうが安いぐらいなんて投鉄器って感じですね〜」
「ふむ?」
ちょっと俺にはよくわからなかったが説明を聞くに投石器らしい。巨人殺しで有名な武器なのは知っていたがこんなシンプルな紐も投石器になるのは知らなかった。
印地と呼ばれることも知らなかったな。
「この布地の間になんでもいいっすけど置いて振り回して投げるだけのものっす。試していきます?」
お店の奥に試射コーナーがあったので少し練習をさせてもらった。コツを掴むまでは手間取ったがコツを掴んだ後は当たるようになった。紐から放り投げられた小さな鉄球は空き缶を貫通してかなり凹ませていたので威力は満足だ。
コツはあまり振り回しすぎないこと、勢いが乗ったらすぐに投げると当たりやすかった。
1番気に入ったのはその値段だ。
ただの紐と鉄球なのでサバイバルナイフより安かった。
「こちらに網膜と指紋認証お願いしまーす」
「はい、ものはギルドの方にお願いします」
冒険者には装備品の倉庫が与えられている。
危険な武器をそこらへんで持ち歩かれては困るということで潜るダンジョンの近くの施設に保管してもらえるのだ。
「まぁダンジョン内だとスリングは少しスペース喰いますけど透明のやつとかの接近に気づけたなんて話もあるんで悪くないっすよ〜ナイフの手入れなんかもうちでやってるんでよかったらまたお越しくださーい。あざした〜」
「はい。ありがとうございました」
「あざした〜」
サバイバルナイフとその手入れ用品とスリングと鉄球500発を購入して俺は店を後にした。
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