第十話 伝説の森ダンジョン 先行開放開始
「皆さん、おはようございます! ボクが今どこにいるかわかるかな?」
目の前のドローンカメラに手を振ると、コメント欄に流れるメッセージがありがたやありがたや。
:ライブ配信きたー!
:クッコロお姉様、待ってた!
:ずらりと並ぶ入退出ゲートと転移魔法陣! もしかして!
「察しがいい人は気がついたかな? 本日の日本時間正午より開放される伝説の森ダンジョンのウォーチューバー向けエリアからお届けするよー!」
:キター!!!!!!
:キター!!!!!!!!!
:配信、助かる!!!!
「順番に説明していくよー! ウォーチューバーの皆さんは、他のダンジョンと同様に、ダンジョン省認可拠点に設置されている転移魔法陣から入退出ゲート前に転移してきてねー!」
ダンジョン直上だけに出入り口を設けると、採取者とウォーチューバーが現地に殺到してトラブルの原因になったり、ダンジョンと縁が無い地域が過疎化したりなど社会的問題になったそうな。
今ではこの国のダンジョンはダンジョン省認可拠点として転移魔法陣を各地域に建てることで色々な権益に配慮してるんだとか。
ちなみに、クローバーみたいなウォーチューバー企業事務所にも、ダンジョン省に認可された転移魔法陣があったりする。
ウォーチューバーが企業に所属する最大のメリットが、これかなあ。
「入退出ゲートを通り抜けたその先には、他のダンジョンと同様にダンジョン省認可の各施設があるよー。お客さんが増えてくれたらスペシャルな施設も順番に用意できるから皆来てねー」
:スペシャルな施設ってなんだろ?
:ヒントだけでもください!
「ヒントかー。どうしようかなー? ネタバレって興ざめしない? どうしようかなー? チラッチラッ」
:煽りよるwww
:コメント欄、チラ見するのはヤメてもろてwww
:あれ? スパチャ送ろうとしたら……何だこれ?
「気が付いてしまった人がいるようだね。ボクの配信チャンネルは! スパチャはダンジョンコインでの支払いのみ対応したんだよね!」
:ファーwww
:どうやってダンジョンコインで支払うんだよ!
「ボクに送りたいダンジョンコインを配信用のドローンカメラで撮影してもらえば、うちのダンジョンコアの元に転送されるよー」
どうにかスパチャでダンジョンコインを世界中の視聴者からかき集められないだろうか?
アンティゴネーに相談した時の表情は見ものだったね!
彼女の発想では思いもつかなかったようだけれど、ダンジョンコインを増やす手段は幾つあってもよいわけで。
専用の魔術式を彼女と共同開発して、ダンジョン省にある条件と一緒に提供した。
ダンジョン省としても新しい利権の開拓は大歓迎だったようで食いつきも良かったよ。
「ダンジョンコインの使い道は、伝説の森ダンジョンで増やしていく予定だから過度のスパチャはできないようにしたよ!」
:10コイン――鮮烈のデビュー配信は痺れたぜ!
:10コイン――スパチャ一番乗り!
:10コイン――2ゲット、ズサー
:10コイン――応援してます!
:3コイン
:2コイン
:10コイン――なるほど! 1回の上限は10コインまでしか送れないのか!
フハハハハッ!
思わず高笑いしてしまったよ!
ボクの手元に残るのはスパチャされたコイン総額の3割だけれど、ダンジョン運営の見通しが明るくなってきたよ!
「スパチャありがとー! 最初はダンジョンショップを用意する予定だよ! 他にもダンジョンコインの使い道を整備していくから貯めておいてね!」
:まさかのダンジョンショップ、クルー!
:日本国内だと、ようやく3軒目?!
:これだけでも、伝説の森ダンジョンに行く理由が追加されるじゃん!
「商品やサービスの内容については、ダンジョンショップの実装まで待っててね!」
:本当に煽りよるwww
:楽しみにしてます!
メッセージを斜め読みしながら、まだ無人の入退出ゲートを通り抜ける。
ダンジョン省認可の鑑定所や医療施設などの前をそのまま通り過ぎて歩を進めると森の木立、すなわち本当のダンジョンの入口が見えてくる。
ボクは立ち止まって、振り返り。
「ここから先に一歩踏み出すと安全を保証できないよ。入り口付近とチュートリアルコースは、ゴブリンケイブダンジョンと比べるとずっと楽ちんだけどね」
:クッコロお姉様の楽ちん表現は信用できないかもwww
:そんなこと言っても、ユニークモンスターだって待ち構えているんでしょう?
「おっとそのお客さん、目の付け所がシャープネスだね! もちろんいるよ」
:ファーwww
:やっぱりユニークモンスターがいるのかよ!
「初心者にはより初心者向けらしく。そうでない腕自慢には、それなりに。なあに、ボクは他のダンジョンマスターと違って手加減だってできるから命までは取らないさ」
:それはそうだな
:ウォーチューバーが配信中に殺人したらポリスメンの出番なわけで
「ボクはこの先で挑戦者を待っているよー!」
皆の前で力こぶを作って見せながら。
「ウォーチューバーとして、名を上げたければ! まとめてかかっておいで!」
:うおおおおおっ
:稼ぐぞ、稼ぐぞ!
:クッコロお姉様サイコー
:クッコロ! クッコロ!
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