第六話 バスルームからは逃げられない
「謝罪の誠意があるから、算盤責めでも全然耐えられるから! どんどん
セルフで算盤責め(江戸時代に行われた拷問の一つ)を敢行することで、ボクなりに反省してますよ! と全力でアピールしてるのに!
我が心の友であるところの
帰ってきてから、凍てついた顔色でむくれてしまっている。
これはヤバい。
「
今まで黙って成り行きを見守っていてくれた
「……ひめのんを一人で行かせたのは間違いだったわ」
「あの、
「誰が! 誰が! 誰が! 言わせてるのよ!! 一言も相談しないで! あんな無茶をして! あたしがどれだけ心配したと思ってるの!」
痛い! 痛い! 痛い!
算盤責めなんて、全くへっちゃらだけれど!
「決めた! 決めたわ! あたしもウォーチューバーになる!」
ようやく
「ボクと違って、
ボクの反論に眦を決する
演者としての彼女の才能は隔絶している。
声質、演技力、歌唱力は同世代では抜きん出ているだけでなく、ルックスもボクと比較しても甲乙つけがたい。
なお、ボクの演技力と歌唱力はお察しください。
写真集の売り上げだけは、声優界のグラビアクイーンと称されるボクが勝っているんだけどね。
「誰かがひめのんの首に鈴をつけないと、
「
ごほんっ! と
「些事は全て、私どもスタッフにお任せください。お二人とも、もうお疲れでしょう。ご自宅に戻ってゆっくり休んでください」
声優顔負けのイケボで諭されてしまった。こうなると普段からお世話になっていることもあり、言い争いはやめて素直に従うしか無いわけで。
いやはや、
事務所から出るとすっかり深夜。東京の夜はネオンサインがきらびやかだけれど、物悲しさを感じるね。星の瞬きがなんだか頼りないんだもの。
今宵もボクの
「安全運転でよろしくね。今朝みたいにヒヤッとさせないでね」
などと呟きながら、
やれやれ、プロレーサーと比較しても見劣りしないボクの運転テクニックをなかなか信じてもらえないね。
「任されたよ。しっかり掴まっていてね」
普段より気持ち程度の時間を余分に掛けて、2人で暮らしているシェアハウスにたどり着いた。都心からバイクの通学通勤圏内で5LDKの一軒家。我が家にたどり着いてホッとしたのか、
やって参りました、待望のバスルーム!
お風呂は命の洗濯だよ!
「
全裸の
大きな湯船は最高だね!
「
自分自身のおっぱいをマッサージしながら声を掛けると、七瀬の頬は真っ赤に上気している。もうのぼせちゃったのかな?
「すす、スキルですって? どどど、どんなスキルを覚えたのかしら?」
一緒に湯船に入っている時の
「708ある姫騎士スキルの1つ、【おっぱいヒーリング】だよ。おっぱいが受けたありとあらゆるダメージを回復・再生する。切れたり伸びたりしたクーパー靭帯を再生させたり、乳がんも完治させたりもおけまる」
両手を頭の上にあげて丸印を決めて見せると。
「とんでもないスキルじゃない! そのスキルで救われる人が何人いるのか見当がつかないわ!」
「ボクは医者ではないし、医者になる気もないから医療行為はできないけどね。この手が届く範囲内の人しか助けることは出来ない」
もの言いたげに黙り込んでしまう
ボクなんかより気持ちが優しい女の子だから、思うところが色々あるんだろうね。
「そんな顔をしないでよ。【おっぱいヒーリング】を試してみない? おっぱいの血行が良くなるし元気も出るよ」
このあと、めちゃくちゃ【おっぱいヒーリング】した。
血行が良くなりすぎたのか、
お風呂上がりの牛乳が美味しい!
酒豪の
こんなところは、オッサン臭いんだよねえ。
まだ20歳になったばかりなのに。
ストレスをためやすい業界だから仕方がないのかもね。
また気晴らしに一緒にお出かけしたほうが良いかな?
ボクと
誕生日も同じ。
ボク達のどちらかが男の子だったら、
七瀬はボクの事を恋愛対象としては見ようとしない初めての貴重な同世代女子だったので、ボクはとても救われた。
前世から生意気と言いますか、わりと傲慢なボクが全幅の信頼を寄せる唯一人の心の友なんだよね。
どちらかと言うと奥ゆかしい性格だった
街で10人の男性とすれ違えば、20人は振り返る愛らしい美少女ぶりは同世代では飛び抜けているわけで、あっさりとデビュー。
アイドル声優ってめっちゃ男の子にモテるじゃんと。
クローバー経由で
ボクと
その結果、大学生2年生になった今も、同世代の男の子と接点がまるで無い!
前世同様、幼い頃から20歳に至るまで、生活圏はずっと女の園!
ボクの事をお姉様と慕ってくれる女の子の存在は、前世でもうお腹いっぱいなんだよ!
ルックスと声質については
演技力は残念扱いされてるけれど、それでも男性ファンは沢山ついてくれて、これできっと彼氏も出来るぞ!
そんな皮算用はうまくいきませんでした。
よく考えてみたら当たり前なのだけれど、アイドル声優とファンとの間で私的な直接交流は事務所的にはNGなわけで!
アイドル声優になるだけじゃ、まだまだ彼氏はできそうにない!
そこで、ウォーチューバーですよ!
ダンジョン内での戦闘と、活動のリアルタイム配信を強いられるウォーチューバー。
比較的安定路線の採取者とは違い、ウォーチューバーは危険も多いけれど、破格の報酬を元手にビリオネアに成り上がった成功者達が世界中にいるんだよね。
なにより、人気ウォーチューバーはモテる!
ガチ恋勢は今日も推しの配信を一喜一憂しながら見守っている。
金銭的な報酬は程々でも良いから!
彼氏が欲しい!
アイドル声優にしてウォーチューバーになれば、前世からの夢がきっと叶う!
クローバーの意向で身バレ対策としてアバターを被っているけれど!
前世の巨乳エルフ美少女の姿を再現したアバターだから、ビジュアル面の問題は無いはずだから!
やっとボクは、念願のウォーチューバーになったぞ!
ガチ恋勢、カモン!
ガチ恋勢の中から、未来の彼氏カモン!
おっと、ボクはいつも脳みそピンク色に染めてるだけじゃないよ。そこのところは、未来の彼氏候補の皆さんに誤解されたくないね。
ボクには、ボクだけの責務と宿命があるのだから。
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