第3話
「瑞季ちゃんこそ、なにをお願いしたの?」と聞くと
「わたしは、王子さまに出会えますように!」と答えた。ぼくらは、そのまま、帰りはじめた。
「そっかー。瑞季ちゃん、ほんとに王子さま、探してるんだねー!ぼくも、今年、結婚できますように、ってお願いしたんだー」というと、瑞季ちゃんは
「わたしが結婚してあげる!」と言い出した。
「あはは!ぼくと、きみとは、結婚できないよー!年も違うしね!」と言うと、「なによー!恥かかせないでよー!」
と、瑞季ちゃんは、急に怒って駆け出した。瑞季ちゃんは、走って、神社の前の道路へ飛び出た。
「あ!危ない!」
横から、トラックが走ってきた!ぼくは、無我夢中で、瑞季ちゃんを抱きかかえ、トラックの前を走り抜けた!
「ブーーーーーッ!」
と、クラクションを鳴らし、トラックは走って行った。た、助かった。ぼくまで、はねられるかと思った。
「大丈夫?瑞季ちゃん」
「見つけた!あなた、わたしの王子さま!!」
時計をみると、十四時三十九分だった。あ、もうすぐ、もとの場所に帰れる。
「瑞季ちゃん、ごめん。ぼく、もとの場所にもどらないと」
ベンチのところまできていた。
「未来で、ぼくら、会おう!」
「えーーーー!」
そう言うと、また、空間がゆがみだし、ぼくは、また、もとの場所にもどっていた。陽のあたる、ベンチ。ぼくは、静かに本の続きを読みはじめた。田中瑞季が、また、うろついてきた。
「あ、田中さん!」
呼び止めた。
「なんですか?」
「王子さまを探してるんでしょ?ひょっとして、こんな顔してません?」
ぼくは、自分の顔を指さした。
「あははは!まさか、わたしの王子さまは、もっとかっこ良くて......、あれ?そう言えば、なんだか、あなたに似てるような......」
「ま!初詣にでもいきません?」
「......、そうですね!」
『運命のひとに出会う』という本を、そっとかばんのなかに入れ、ぼくたちは、また、神社へ参拝しに行った。
冬の王子さま 林風(@hayashifu) @laughingseijidaze4649
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