きみのともだち
「むむむう」
そして、今日も最後の一個が目の前で消えた。
いや。
消えなかった。
「どうしたのでしょう。あいつめ」
最後の一個が無事だというのに、ポン太はプンプンしている。
「最近、消えなくなったねえ」
そうなのだ。
近ごろ、そんな危機にさらされることなく、ふたりで完食できてしまう。
「こ、これでいいんですよ。
よろしかったら、いかがですか?」
「え、今日もいいの?」
なぜだか最後の一個に手を出さなくなった。せっかく残ったのに。
「あいつめ」
ポン太がこの町に来る前のことはよく知らないのだけど、いろいろ聞いてみると五目稲荷をさらっていくのは彼の知り合いのキツネらしい。
「昔から、ポン太の最後の一個を取っていくのです」
こんぺいとう。おせんべい。おだんご。おにぎり。
「姿を誰にも見せないのです」
いたずらはするのに、恥ずかしがりなのだそうだ。
「この町までこのポン太を追いかけてきて、嫌がらせを続けようという魂胆だったのでしょう」
大好きな五目稲荷の日だけ、最後の一個をさらっていくようになって。
「言わなきゃよかった……いえいえ、迷惑なのですから!」
『もう絶交です!』
こないだ、ポン太はついつい言ってしまったのだった。
だからほら、なんとなくしょんぼりしている。
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