かくして大学、保険
「ごめんなさい! お待たせしました!」
「やあやあサクラ初めまして!」
大学構内。日本の先輩を通して紹介してもらった現地の大学の日本学(Japanologie)の学生さん(ダニエルさんとしておきます)が、私の滞在最初に必要な諸々の手続きの手伝いをご快諾くださっていた。諸々の手続き、すなわち入学手続き、保険、そして滞在許可証取得。最後の一手は「現地の人間がついていったら絶対的有利」とのことで、トラブルや困難をよく聞く滞在許可証申請・取得も現地人が随伴すると成功率が格段に上がりそうなのである。
「もう聞いてダニエル! 寮に入ったら突然一人部屋で、しかもお手洗いに紙がなくってすごい困った!」
うんうん、と聞いてくれるダニエル。
「じゃあ入学手続きから行こう」
これまたものすごい列の入学受付部門に行き、受付番号を引いて待つこと何分だったか。ダニエルも一緒に入学して無事に手続き終了、学生証発行。
「はい、学生証」
……紙。カードではなく、紙。
「これが今学期の在学シールだから貼ってね」
シール……紙にシールで学生証……。
「それ、毎学期シール重ね貼りしていくからケースあった方がいいよ」
「うん……」
ダニエルに言われ、私はその後、比較的すぐに文具屋でプラスチックケースを買うことになる。
「それが済むと、さて住民登録(寮でももちろん必要)、学生用銀行口座の開設、とダニエルのおかげでとんとん拍子に手続きは終わっていく。これで何の問題もなく全て終わるのでは、と思うくらい。
「じゃあ保険手続き行こうか」
保険の手続きを済ませないと滞在許可証が発行されない。つまり申請前には現地の保険加入が必須なのである(そして保険加入のためには銀行口座が必要であり、銀行口座開設のためには入学手続きと住居証明が必要であり……というわけでこの順番なのだった)。
保険手続きも難なく終わると思っていた。だって健康保険だし。もう学生証も銀行口座もあるし。
バスに乗って少し離れた公共保険機関へ、まだドキドキしつつも向かいます(もしかしたら別日だったかもしれません)。
待合で呼ばれ、ダニエルもそばにいる中で手続き。なんと安心することか。カウンターのおじさんに提出。おじさんがそこで私の持っていたパスポートその他から必要事項を用紙に書き込んでいきます。さすが仕事人、慣れたものだ、早い早い。
「はい、じゃあこれが控えね。カードができたら郵便で届くから」
「ありがとうございます!」
なんだあっさり終わったなぁ。良かった、これでもう一つのハードルを超えた。
「疲れたねぇ」
「疲れたねぇ。ありがとうダニエル!」
「どういたしまして! 僕はもう帰るよ」
じゃあねーと満足感いっぱいで別れ、買い物とかやることたくさんあるし、私も寮に帰ろう。保険の書類もできたし……
ぱらりとおじさんに渡された控えをもう一度見てみる。
……………………!!
公共ネットの繋がる場所で立ち止まり、ばっとメッセージアプリを起動、
「ダニエル! あのおじさん私の誕生日間違えて書き写してる!」
『ほんと!?』
「言わなきゃ駄目だよね?」
『駄目だね! 大変!』
バスを降りたばかりなのに再び焦れる思いでバスを待ち、役所にとって返しておじさんに修正を依頼、「あはは本当だ違ったねー」なノリで修正され、疲労困憊で家路に着いたのでした……
✏️✏️✏️続く✏️✏️✏️
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます