さぁ入寮、大学だ!

 安い航空会社でトランジット、当然到着時間は遅く……その日はツテで知り合った現地在住の方に案内していただきホテルに一泊。

 翌朝。朝食を終え、さあ寮へ! 

 住まいである寮の契約は、奨学金の期間、つまり学期開始と同時。しかし諸々の手続きのため二週間早い入国である。ホテル住まいはできるはずなし。入寮予定の寮が休暇中の空き部屋を短期貸し出しを行っていたのを幸いと、短期の契約を申し込んでおいた。

 アパート仕立てではなく個室ありのシェアになるけれど二週間待てば良い。トイレとシャワー簡易キッチン付きで研究に集中できる個室はやはり値段が高いのだし、学期開始まで我慢でコスト削減。

「すみません、まず半月契約していたさくらです!」

 長い受付の列を待ち、カウンターで宣言。確約メールも印刷してきたし、問題ないはず。

 と思ったのは甘かった。

「ああ、あなたの十月からの部屋、入れるようになったから今からそこ使って」

 え、月末週末に一旦退去だからホテル予約してたけど、いらないってこと⁈

「はい、賃料こっちね」

 シェアより相当上がってるんですけど!

「じゃあこれ鍵」

 一階の中庭に面した部屋の鍵を渡され(この時点でやや不安が出る。女子寮ではない)、なんの謝罪もなく受付終了。

 さよなら私の奨学金から食事その他に回る分……

 しかしそんなことは言ってられない。拒否したら宿無しだ。この後は大学手続きのために人と会う約束がある。急がねばならないのだ。

 そして今私は、お手洗いに行きたい!!

 申し渡された部屋に直行、スーツケースと鞄をほっぽりトイレに踏み入れるや……

 紙が無い。

 えええ! 

 いや待て、ここは寮。完全個室では無い子たちはお手洗いもシェアなのだからそっちの棟に行けば……

 放った鞄を掴み鍵をかけ、広い領内を走る。どっちよシェア棟!? あっ、こっちっぽい。このガラスドアの向こうっぽい……

 ガチャ……

 って言わないいぃ……鍵かかってるし! 向こうに清掃員さんいる! 開けて開けて開けて!

 え?

『こっちは入れないよ、戻れ』

 ですよね、そのジェスチャー? うわぁん個室部屋の人間は立ち入り禁止ってことぉ?(今考えるとセキュリティの問題だろうか)

 もういいよ大学行くよ、早く大学!

 そうして外に飛び出てトラムに乗り込み、十分ほど先の大学本舎のお手洗いに助けてもらったのでした……


 📕📕📕続く📕📕📕

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