第3話 お話を作るためには

「めんどくさい」「めんどくさい」と口癖のように言い、タバコを鬼のようにふかしながら絵コンテをなんども描き直し、


 どれだけBパートが進んでいても、翌日には「廃棄だ」でゴミ箱行き。女の子の口元の微妙なズレが気に食わず、何時間もそればかり描いている。


 根気強いなんてものではない、「脳が開いた状態」なのである。なので、お茶を飲もうとキッチンに立つと、紅茶のありかを忘れてしまったり、仕事部屋ではさっきまであった消しゴムをなくしてしまったりする。



 ストーリーが始まるまでには、自分の中でうごめく闇を制さねばならないのだということがよくわかる。闇は光より先に存在する。当然、光よりも強いという人もいる。作者は、ストーリーをスタートさせる前に、さまざまな準備をスタートさせるのである。そのスタートとは、なにか。




 たいていの文章指南書には、「プロットを書け」と書いてある。物語をスタートさせる前に、あらすじ程度のものをメモしろというのである。


  そのあらすじ程度のものを書くのにも、過ごしている日常の中で気になったこと、観察したことなどをメモするのがネタになる。仕込みの段階ってわけ。お味噌を作るみたいだね。



 思いつくまま筆にまかせて次々書いていっても、いずれ壁にぶつかるのだから、下準備のうちにじゅうぶんストーリーを練っておけ、というのがその趣旨だ。つまりこれが、スタートの前のスタートである。



 アウトラインを書き、人物の性格に無理や矛盾のない設定をして、ロマンスも多少は組み込み、皮肉に富んだストーリーを創るのが醍醐味なのだと書いてあった。



 そんなに簡単に作れる人は、いるんかい!

 いるんだったらその爪の垢を煎じて飲みたい!



 だいたい、性格なんてすぐわかるのかな。自分が見た印象だけで書いたら、偏見になりゃしないだろうか。相手が自分に見せているのが仮面だけだったとしたら?



 それを補足するために、観察があると人は言う。

 観察って、苦手なのよねー。

 なにしろ、何にもないのに転んじゃったり、おんなじ場所をぐるぐる迷子のわたしなんだし。自分の気持ちで手がいっぱいだよ。



 その自分の気持ちを豊かにすれば、いろんな人格が浮かんでくるのかな。

 ある時は主婦、あるときは作文のおばちゃん、しかしてその実体は……ハニーフラーッシュ! 愛の戦士キューティーハニーさ! (古ッ)

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る