第2話 鬼のうわさ
花つみ太郎はすくすく育ち、元気な男の子になりました。
梅は花つみ太郎を弟のように大切にしました。どこへ行くにも、何をするにもふたりは一緒でした。
花つみ太郎が町へやってきてから数年後、町に噂が流れるようになりました。
「近ごろ、このあたりに鬼が出ているらしい。鬼は若い娘を連れて行くんだそうだ」
町のみんなは鬼に怯えました。そして、町の娘たちに、家の外へ出ないよう言いつけました。
梅も怯えていましたが、どうしてもお花畑に行きたくてたまりませんでした。
そこで、太郎にお願いして、お花畑へついてきてもらうことにしました。
いつものお花畑に着いて、梅はようやくほっとしました。
「梅ねえさん、あんまり遠くへ行っちゃだめだからね」
「わかってるわ」
最初は少しだけのつもりでしたが、お花はやっぱりきれいで、
ひとつ、ふたつ、みっつ、……
お花を摘んでいるうちに、梅はいつの間にか太郎とはぐれてしまいました。
「大変だわ。早く戻らないと」
いくら大好きなお花畑でも、ひとりになるとやっぱり心が落ち着きません。
ザザーッ
お花が風に揺れるのが、なんだか不気味に見えました。
怖くなってなってうろうろしていると、
「おーい、梅ねえさあん」
どこかから自分を呼ぶ声が聞こえてきます。
「梅ねえさん、こっちだよ」
たしかに声が聞こえます。
「太郎が探しに来てくれたんだわ!」
嬉しくなって声の方へ向かうと、なんと、そこには鬼が立っていました!
「きゃあっ!あ、あなたが鬼ね」
「そうさ、おいらが鬼さ。さあ、こっちへおいで。おいらと一緒に遊ぼうよ」
「嫌よ、怖いわ」
「そんなこと言わないでさ。ほら、こっちこっち」
梅が嫌がるのにも構わず、鬼はお花畑の向こうの山のなかへ梅を引きずっていってしまいました。
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