第47話 こんにちは。また来ました
「ただいま戻りました」
「あら、おかえり。1人かい?」
「ユキは、子供達と遊んでから帰るそうです」
「そうかい。あの子は子供っぽいから、教会でも人気だろ?」
「はい。小さい子達のリーダーになってましたね」
「あはははっ。何だか絵が浮かぶね」
「おう、ヤマト。どうだった?」
「あっ、レナードさん。大人も子供達も、みんなおかわりして喜んでくれましたよ! 本当に、ありがとうございました」
「良かったな。礼なんて気にすんな」
二人に教会でのことを色々話した。やっぱりユキのことを話すと、二人とも爆笑していた。一通り話し終わると、ちょうどお客さんが来たので部屋に戻った。夕食まで、ゆっくりしようと思う。
◇◇◇◇◇
「ただいまです」
「おかえり。子供達と遊んだの?」
「はいです! 楽しかったのですう。でも疲れたのです……グッタリ」
「あはははっ。あの子達、元気いっぱいだったもんなあ。で、何して遊んだのさ?」
「忍者ごっこなのです!」
「はあ!? 忍者ごっこは、流石にマズイんじゃ……」
「ヤマトさん、心配ないのです。もちろん、誤魔化してるのです! ……ニヤリ」
「なら、大丈夫……か?」
ユキは子供達と忍者になって、走り回ってきたらしい。地球のことは言わずに、誤魔化して遊んだようだ。これで何かマズイことになることも無さそうなので、まあ大丈夫だろう。
その後、夕食を食べて休むことにした。
◇◇◇◇◇
「うーん。今日も良い朝だなあ」
「すぴー、すぴー、みんな、ニンニン、ですう」
ユキは子供達との、忍者ごっこの夢を見ているようだ。ユキを起こして、朝食にしよう。
朝食を終えて部屋に戻り、今日の予定を話した。
「今日は午後に、仕立て屋さんにニット帽を取りに行かなきゃな」
「ついに完成なのです! 楽しみですう……ルンルン」
「でも午前中は特に予定ないし、どうしようか?」
「また、町を見て回るです?」
「そうだなあ……あっ! ゴミ運びしようか」
「ゴミ運びです?」
「沢山錬金したから、端材の補充をしようと思ってさ。午前中で終わるでしょ」
「なるほどです。でも、受けられる依頼が無いのです……ザンネン」
「へ? 何で掲示板も見てないのに、無いってわかるのさ」
「幸運の
「あっ、そうだった……」
Eランクからは討伐がメインになるので、ゴミ運びなどの依頼はFランクまでしか無かったのだ。どうにか端材を入手する方法を考える。
「直接、工房に行くか? でも知り合いも居なのに、怪しい奴だよな……」
「じゃあ、直接ゴミ捨て場に行くのは、どうです? あの守衛さんが、居るかもです」
「おお! そっちの方が、良さそうだね。そうしようか」
「りょーかいなのです!」
今日の午前中は、ゴミ捨て場に向かうことにした。
宿を出てすぐに、全く予想もしてない言葉が聞こえた。
「あー! お姉ちゃん達発見! ……ニンニン」
「やったー! おとう……じゃなく殿のところに連れていこう! ……ニンニン」
「へ?」
「教会の子達なのです」
そこには俺がユキに教えたタオルの巻き方をした、小さな忍者が二人いた。
「二人とも、どうしたのです?」
「おとう……じゃなく殿が呼んでるの! ……ニンニン」
「殿って、マイルスさん?」
「そうだよ! ……ニンニン」
何かあったのだろうか? 小さな忍者二人と、教会に向かうことにした。三人は、例の走り方をしている……ハズイ。でも、子供達が楽しそうなので良しとしよう。
◇◇◇◇◇
「お姉ちゃん達、連れてきたよー……ニンニン」
「こんにちは。お呼び立てしてしまい、申し訳ありません」
「いえいえ、何かありましたか?」
マイルスさんの話しは、ポテチのことだった。ボランティアさんに、簡単に作れて美味しいので、屋台で売り出してはどうか? と言われたようだ。
売り上げがあれば、教会の運営も助かるので採用したい。でも俺達の許可無しに勝手に始めたくはない。そこで俺達にお願いするために、マイルスさんは昨日ユキに聞いていた俺達が泊まっている宿に来ようとしたらしい。しかし、子供達が行くと言ってきかないので、任せたようだ。
子達達は年配のお父さんを想って、代わりに来てくれたのだろう。もしかしたら、忍者で出かけたかったとか、ユキと遊びたかっただけかもしれないが……。マイルスさんが動かずに、俺達が教会に来たので結果オーライだろう。
「なるほど。ポテチが教会のためになるなら、是非売って下さい。全く問題無いですよ」
「ありがとうございます!」
「ちなみに、屋台って……」
「ああ、それなら」
マイルスさんが指差す方に、古びた屋台があった。昔お祭りのような時に、教会で屋台を出したりしていたらしい。ここ最近は参加していなかったので、使われなくなった屋台は、かなり傷んでいた。
どうも痛みが酷く、使えなさそうだ。代わりに荷車があるので、それも隣に並んで置いてあった。こちらも古いが、まだ屋台よりは使えそうだ。
「マイルスさん。直して良いですか?」
「宜しいんですか!?」
「もちろんですよ」
感動するマイルスさんを落ち着かせ、屋台を錬金で直した。ついでに荷車も、直しておいた。
「ありがとう。ありがとう……」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
みんな喜んでくれたようだ。今日は食材などを仕入れて、明日から人が多い場所で始めるそうだ。
「あっ、マイルスさん。少しの時間、荷車借りても良いですか?」
「構いませんよ。仕入れは、午後から行く予定ですので」
「助かります」
端材は革袋に詰めるつもりだったのだが、ちょうど良いことに目の前に荷車がある。こっちの方が、革袋より沢山の端材を持って来れるだろう。こういうラッキーに恵まれるのは、幸運スキルSランクのお陰だろう。
空の荷車を引き、本来の目的地のゴミ捨て場に向かった。
◇◇◇◇◇
「あっ! またお前達か……」
「こんにちは。また来ました」
予想通り、いつもの守衛さんが居た。今回は依頼ではなく、個人での使用ということを伝えた。捨てるものは無く、拾うために来たことも伝えた。
「本当にお前達は、意味がわからんな。まあ拾うだけでも、使用料を払うなら良いだろう。そんな許可を出すのは、初めてだがな……」
「ありがとうございます」
使用料は、銅貨3枚だった。料金を支払い、守衛さんと一緒にゴミの山に向かった。
いつも通りユキに気になるものを探してもらい、俺は荷車に端材を乗せまくっていった。荷車が山盛りになり、回収を終えた。
何度もおかしなお願いを聞いてくれた守衛さんには、本当に感謝でいっぱいだ。最初に来た時に、拾うことを禁止されていたら、端材を使う錬金は出来なかっただろう。
「そうだ、守衛さん。これどうぞ」
「ん? 何だ?」
俺は守衛さんに、近々イベリスを離れることを伝えてポテチを渡した。沢山作ったので、まだバッグには大量に残っているのだ。これを今までのお礼と、教会の屋台の宣伝に使うことにした。
「そうか。イベリスを離れるのか……。おかしな奴らだが、居なくなると聞くと、少し寂しいな……」
「本当に、お世話になりました。もしポテチが美味しかったら、教会の屋台の宣伝もお願いしますね」
お礼と宣伝をして、ゴミ捨て場を出た。
「先輩。何ですか、それ?」
「あの、おかしな冒険者に貰ったんだ」
「ああ、ゴミ拾いの……」
「これ、旨いらしいぞ。食うか?」
「いただきます」
パクっ
「うまっ! 何ですか、これ!?」
「……旨いな。教会のみんなが、明日から屋台を出すらしいぞ」
「絶対買いに行こう! 友達にも食べさせて、驚かせようかな」
◇◇◇◇◇
いつものように人気の無いところで、端材をバッグに入れた。俺は宿に戻って、錬金しようと思う。ユキは、また教会で遊んでから帰ると言うので、空の荷車を頼むことにした。
ユキとは別行動で、俺は宿に向かう。昼に集合して、昼食後に仕立て屋に行く予定だ。
部屋に戻り、今日の収穫をコツコツ錬金していた。すると、ドアがノックされた。
「ん? 一人か……誰だろ?」
マップを確認すると、ドアの前に一人いることがわかった。ドアの前まで行き、声をかける。
「はい。どちら様?」
「冒険者ギルドのヴァニラです」
「ヴァニラさん?」
ドアを開けると、ヴァニラさんが立っていた。
「態々部屋まで来るなんて、どうしたんですか?」
「ヤマトさん。突然部屋まで来てしまい、すいません。マリーさんに、この宿に居ると聞きまして。ギルマスが、お呼びです」
「ギルマスが……。わかりました。あっ、でも今ユキが出かけてて……」
「大丈夫です。時間的に、昼食後で問題無いそうです。ただ、なるべく早めに来て欲しいとのことでした」
「わかりました。後程伺います」
ヴァニラさんは用件を伝え、冒険者ギルドに戻っていった。ギルマスからの呼び出しは、オークションのことだろう。日にちが決まったのかもしれない。
「もうすぐ昼だし、ユキも帰って来る予定だけど……。まだ教会かな?」
マップで教会を確認する。どうやら教会には居ないようだ。
「居ないってことは……あそこか?」
屋台が多い場所を確認する。やっぱり居た。もうすぐ昼ご飯なのに、何か食べてるのか……。
「屋台で悩んでたら、なかなか帰って来ないかもな……呼ぶか」
こういう時は、イヤーカフが使える。
『こちらアルファ。ブラボー応答せよ。どうぞ』
『は、はいです。ぶらぼーなのです。昼ご飯は食べられるです! どうぞ』
やはり、何か食べていたようだ……。
『冒険者ギルドから連絡があった。昼食後に向かう。すぐに宿に帰還せよ。どうぞ』
『いえっさーなのです。帰還するです。どうぞ』
ユキが戻ったら昼食を食べて、ギルマスに会いに行こう。
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