第21話 パーティー名どうしようか?
かなりの寄り道をしたが、やっと宿に帰ってきた。これで、今日拾ったゴミを錬金出来る。部屋に戻って、早速錬金開始だ。
まずは俺が見つけた『もしかしたらもしかするもの』を錬金したい。が、これは一つしか見つけられなかったのだ。二人分欲しかったのだが……。見つからなかったものは、仕方がない。
そこで一つ、実験がしたい。一つの物を二つに分けて別々に錬金したら、二つ完成するのだろうか?
試しにヤック草Cランクを千切って、二つにしてみる。その一つにペンぺ草を錬金……出来ない。千切ったヤック草の鑑定を見ると『故意に千切ったヤック草』となっていた。
(なるほど。これが錬金出来たら、一つの素材から何個もAランクが錬金出来てしまう。流石に、素材集めくらい頑張れよってことだわなあ。まあ今出来ることだけで、十分チートなんだし)
実験は失敗だった。ヤック草を千切ってしまって、素材を無駄にしてしまったと反省しつつ、千切ったヤック草同士を何となく錬金にセットしたら、錬金出来たのだ。出来上がったのは、ヤック草Cランクだった。元に戻るようだ。
「戻るんかい!?」
「え? ヤマトさん、何を遊んでるのです?」
「遊んで無いし……。実はさ」
ユキに経緯を説明した。
「ヤマトさん。それは、素材を無駄にするところだったです。素材だって、大切な資源なのです。そういうことは、良くないのです」
「ユキが、至極真っ当なことを……。体調悪いの?」
「なんとっ! あたしは女神候補なのです! たまには、真面目なことも言うのです!」
「自分で、たまにはって言っちゃったよ」
「あっ……エヘヘ」
「笑って誤魔化すんかい……」
やっぱりユキは面白い。でも女神を目指しているだけあって、真面目な部分もあるようだ。
ここからは、今まで通りの錬金をしよう。まずは、さっきから言っているものを錬金する。そのものとはベッドだ。ゴミ捨て場でみた時は、バキバキに折れた木の枠という感じだったのだが、よく見ると枠に脚が付いていて、もしかしたらもしかすると思ったのだ。
今朝、野営でベッドを使おうかと考えていたら、それらしきものを見つけた。これも幸運Sランクの力だろうか。あるある的には、ご都合主義とも言う……。
ゴミをバッグに入れてから、ギルドに行ったり、ショウガンを買いに行ったり、さらにはヴァニラさんの家に行ったりと、バタバタが続いたので、まだ鑑定も終わっていない。
「頼む……。ベッドであれ!」
鑑定の結果は……壊れたダブルベッドだった。
「……ある意味、二人分だけどさあ。微妙に違うんだよなあ」
「今度は、どうしたのです?」
また、ユキに経緯を説明する。
「なんとっ! 野営でベッドとは最高なのです! ナイスアイデアなのです!」
「それ、今朝も言ってたよ」
「え? そんな話は、していないのです」
「……あ。ユキ、寝言で答えてたんだった」
予想とは微妙に違ったが、とりあえず錬金してみる。壊れたダブルベッドは、枠の一部しかない。素材は木なので、今回はゴブリンの木槍を使うことにする。バッグに、沢山の在庫があるのだ。木製ではないマットレス部分は、どうなるのだろうか?
ゴブリンの木槍を複数使い錬金すると、ダブルベッドAランクが完成した。一度出してみないと、どういう状態かわからない。部屋の中にスペースを作って、バッグから出してみた。すると、マットレス部分も再生されていたのだ。
「はい。ベッド完成。でも、ダブルベッドだとは……ナンデ」
「やったです! これで野営も、快適なのです!」
「ユキは寝相悪いから、一緒に寝るとなあ」
「ヤマトさん。そんなこと言って、ホントはあたしの魅力に負けそ「それは無い」」
「ぐぬぬ。最後まで言わせないとは……テレヤ」
「ユキは、ポジティブだねえ……」
実は、もしかしたらシリーズがあと三つあるのだ。ささっと錬金して、これも御披露目しよう。
「こんなのも、あったよ。ジャーン!」
ダブルベッドをしまって、そこに並べられたのは椅子二脚とテーブルだ。
「なんとっ! これまた野営が快適になるのです! ヤマトさん、お宝祭りなのです!」
「何か、新しい祭りが出来ちゃったね……。でも、良いもの見つけられたな。俺は前回、ハズレ祭りだったからさ」
今までの野営は基本的に、地べたに座って料理や食事をしていた。倒木や大きな石などがあれば、椅子代わりに出来ると思うのだが、やっぱり本物が良い。ダンジョンの踊り場は何もない場所だったので、これだけでも体の休まり具合が違うはずだ。ダンジョン探索の効率も変わると思う。
俺が他に見つけたものは、くすんだ銀のスプーン、フォーク、ナイフのセットだった。所謂カトラリーセットというものだ。各4本ずつが箱に入っていた。捨ててしまうなんて、実に勿体無い。俺的には捨ててくれて、ありがとうなのだが。
ちなみに、普段の食事で使っている食器類は木製である。直して使おうかと思ったが、冒険者には似合わないので素材用にとっておくことにした。
ここからは、ユキが魔力感知で見つけたものだ。
外套 Aランク 錬金素材 布の切れ端
温度調整(中)
スパイダーの外套 Aランク 錬金素材 スパイダーの糸
温度調整(中) 切断耐性(大)
革の籠手 Aランク 錬金素材 革の切れ端
打撃耐性(小)
鉄の斧 Aランク 錬金素材 ゴブリンの石斧
重量軽減(小) 切れ味増加(中)
鉄の剣 Aランク 錬金素材 鉄屑
切れ味増加(小)
これらが、ユキが見つけた装備品だ。二人とも、今まで使っていた能力無しの外套を交換した。俺がスパイダーの外套を装備する。少しでも防御の能力があるものを、俺が装備するようにしている。チートユキさんは、本来装備品は必要ないのだ。なので「ヤマトさんが、少しでも強い方を着るのです」と言ってくれている。ちなみに、革の籠手も俺が装備する。
武器に関しては、全く扱える気がしないので使わない。ユキも自分の短剣の方が強いし使いやすいので、いらないと言っていた。
その他、魔道具はこちら。
二口魔道コンロ Aランク 錬金素材 鉄屑
燃費向上(大)
魔道水筒 Aランク 錬金素材 鉄屑
燃費向上(小) 温度調整(中)
魔道ランタン Aランク 錬金素材 鉄屑
燃費向上(小) 魔物避け(小)
魔道寒暖機 Aランク 錬金素材 鉄屑
燃費向上(中) 温度調整(中)
二口魔道コンロは、料理の時に活躍してくれるだろう。魔道水筒は温度調整が出来るので、冷たくしたり温かくしたり出来る優れものだ。魔道ランタンは、魔物避けの能力が付いていた。この三つは以前錬金したものより、ちょっと良い能力が付いている感じだ。
新しく手に入れた魔道寒暖機は、エアコンとでも思ってもらうと良いかもしれない。風は出ないのだが、暖かい波動のようなものを感じるのだ。もちろん、冷やすことも出来る。大きさは、20リットルのポリタンクを想像して欲しい。エアコンにしては、なかなかコンパクトだ。
結果として、かなり野営が充実するものが増えた。こういう時は、近々野営をすることになるのではないだろうか……。
「今回も、色々と良いものが増えたね」
「やはり、あたしの目利きは完璧なのです……エヘン」
残念ながら、新しい素材や指輪は見つけることが出来なかった。それでも、装備や魔道具が増えていくのは、とても嬉しいものだ。さらに今回は、家具まで手に入った。定期的に、ゴミ捨て場には行きたいものだ。
「そうだ。ギルドで先輩冒険者と話した、パーティー名どうしようか? やっぱり必要なの?」
「はいです。普通は、パーティーを組んだ時に決めるです」
「そうなんだあ。ユキ、何か候補ある?」
「可愛い子狐隊が良いのです!」
「却下! それじゃ、ここの宿と変わんないじゃん」
「ぐぬぬ。亭と隊は違うのです……ゲセヌ」
他にもユキは『
「でも、
「そこは、気に入ってくれたです?」
「地球で、狐じゃなくて虎の白虎隊ってのがあってさ。響きは、しっくりくるかなって」
「虎獣人のパーティーなのです?」
ユキに、白虎隊の話をしてあげた。
「てな話で、人族の若者の話だよ。最後は悲しい話だけどね……」
「うわああん。悲しい話なのですう。幸せになって欲しかったのですう。ううっ……」
「そこまで泣かなくても……。じゃあ、字は違うけど白狐隊を幸せにしてあげようか?」
「ううっ……どういうことです?」
「二人とも幸運スキル持ちだから『幸運の白狐隊』ってのは、どう? 名前の響きを借りて、幸せを付けてさ」
「とても良いのです! 可愛い子狐隊の次に良いのです!」
「こんだけ泣いといて、そこは退かないのね……」
パーティー名を名乗ることも、そんなに多くないと思うのだが、一応考えてみた。白虎隊を知ってるのは俺とユキだけだし、変に思われることもないだろう。
「無事パーティー名も決まったし、色々やってたら、もう夕飯時だね。じゃあ、下に行きますか」
「はいです。パーティー名を考えて頭を使ったので、お腹ペコペコなのです」
あれで? と言わなかったのは、自分にブーメランが返って来ないようにだ。昔、実家で飼っていた犬の名前はシロという。白かったからだ……。俺の名付けセンスは、そのレベルなのだ。
頭を使って、お腹が減ったので夕飯にしよう。あれで? と聞こえたのは、気のせいだろう……。
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