第10話 Sランクだけどバレなきゃ問題ない! ……ことにしよう

「どんな、お宝になるのかなあ」


「あたしの目利きに間違いはないのです……フフフ」


 ゴミ捨て場で、ユキが魔力感知で見つけてきたものを錬金していく。それを鑑定していくと、色々な能力付きの装備品だった。


鉄の盾 Aランク 錬金素材 鉄屑

 重量軽減(小) 打撃耐性(小)


革の胸あて Aランク 錬金素材 革の切れ端

 切断耐性(小) 打撃耐性(小)


革の軽鎧 Aランク 錬金素材 革の切れ端

 衝撃軽減(中) 魔法耐性(小)


革の籠手 Aランク 錬金素材 革の切れ端

 筋力上昇(小)


革のブーツ Aランク 錬金素材 革の切れ端

 敏捷上昇(小) 疲労軽減(小)


革のブーツ Aランク 錬金素材 革の切れ端

 筋力上昇(小) 疲労軽減(小)


ネックレス Aランク 錬金素材 鉄屑

 状態異常耐性(小)


ブレスレット Aランク 錬金素材 鉄屑

 消費魔力減少(小)


 これ等の装備品がタダで手に入ったとは、錬金袋Sランクは改めてチートだと思った。錬金したものが、全て汚れも無く新品の状態だったのは、地味に嬉しいポイントだった。


 最初の予定では破損品を安く買い、錬金用に端材が使えれば、出費が少ないという計画だった。それが、まさかの出費無し。それどころか、依頼達成で収入アリとは嬉しすぎる誤算だ。


 出来上がった装備品をどうするか、ユキと相談して決めた。俺は革の軽鎧と、革のブーツの敏捷上昇の方を装備する。鉄の盾は普段装備しないが、いざという時の防具としてバッグに入れておくことにした。


 ユキは革の胸あてと革の籠手、革のブーツの筋力上昇の方を装備することにした。


「ブレスレットは着けないの? 魔法使えるから、ユキには良い装備なんじゃない?」


「いらないのです。魔力は、簡単には枯渇しないだけあるです」


「そっか……。すっかり忘れてたけど、女神の弟子なんだから、それくらいあるのかあ。この壊れた装備品の微かな魔力にも気づいたし、ユキの存在自体がチートなんだよなあ……」


「なんとっ! ヤマトさん! あたしを可愛いだけの子狐だと思ったら、大間違いなのです! ……プンプン」


「可愛いはスルーして、状態異常耐性のネックレスもいらないよね?」


「ぐぬぬ。久しぶりにスルーなのです……ガーン。状態異常も効かないのです……エヘン」


「何だか忙しい感情だな……」


 ユキは強いので装備無しでも平気らしいのだが、冒険者としては悪目立ちするので着けることにした。装備しなかったものは、バッグにしまっておく。いつか、お金が足りなくなった時に売るのもアリかなと思う。


「てか、獣変化した時の装備って、どうなるの? 俺を探してた時、獣型は服着てなかったよね?」


「はいです。獣変化したら、服も装備も消えるです。人に戻った時に、元の状態に戻るです。このスキルは、獣人族特有の一種の魔法なのです」


「なるほど。魔法ならありか。これ魔法じゃなくて変身だったら、毎回服が破けるだろうから大惨事だよね」


「なんとっ! そんなハレンチなことになったら世の中の男性達は、あたしにメロメロになってしまうのです……ウフフ」


「さて、今度は何を錬金しようかなあ」


「無視は辛いですう……グスン」


「あははっ。ホント、ユキは面白いわ。そろそろ良い時間だし、夕食に行こうか。残りは食後だな」


「はいです。お腹ペコペコなのです」


 一旦夕食を食べることにして、錬金は休憩することにした。


◇◇◇◇◇


 美味しい食事を食べて気分もリフレッシュしたところで、残りの錬金をする。俺も気になるものを拾ってきたと言ったが、ユキに魔力感知してもらったら全てハズレだった。鑑定すると鉄や革だったので、錬金用の素材にすることにした。魔力感知はハズレだったが、くすんだ銀のナイフだけは、新しい種類の手持ち素材が増えたので当たりだった。


 ユキは瓶に入った液体も、沢山拾って来ていた。異世界知識的には、おそらくポーション、回復薬の類いだろう。鑑定結果は、効果の切れた回復ポーションや効果の切れた毒消しポーションなどだった。


 ポーション同士での錬金は可能だった。他に錬金可能なものを探していたら、錬金を操作していたパネルに『レシピ』という項目を見つけた。そこには回復ポーションは、ヤック草とアワセ茸で出来ると書いてあった。今まで無かった項目が何故増えたのか? おそらくだが、ポーションをバッグに入れたからだと思う。素材であるヤック草とアワセ茸がバッグに入っていたことも、関係しているかもしれない。


 今のところレシピは、回復ポーションと毒消しポーションしか載っていない。毒消しポーションは、チュワ草とアワセ茸で作るようだ。とりあえず、回復ポーションと毒消しポーションを作ってみた。今までは錬金術の範囲を超えた状況だったので、よくよく考えると、これがある意味初めての錬金術だったんだと思う。


 ちなみに出来上がったポーションは、両方ともAランク品だった。素材にはCランクやDランクを使ったので、ここでもチートが発動しているようだ。


 もう少し試そうと思い素材をセットすると、また新しいコマンドを発見した。今度は『複数作成』というものだ。自分なりに調べてみると、バッグに入っている素材で作れる最大数が表示されているようだ。試しにヤック草をバッグから1本取り出してから、複数作成を確認すると作れる数が減っていた。


 ヤック草をAランクからEランクまで各1個ずつをバッグに入れて、複数作成で2個回復ポーションを作ってみた。すると、DランクとEランクのヤック草が無くなっていた。複数作成で作ると低いランクから使用してくれるようで、地味に親切機能だった。


 他には、回復ポーションにヤック草が錬金可能だった。アワセ茸もだ。そのポーションを作る素材も、錬金可能のようだ。回復ポーションAランクに、ヤック草Cランクを合わせると、回復ポーションSランクが出来た。これは予想通りだった。


 回復ポーションAランクは、深い傷でも治すことが出来ると鑑定でわかった。Sランクでは、欠損部位の修復も可能だそうだ。さらに病気などの体調不良まで治るという、回復ポーションの治療範囲を越えた代物だった。また世に出せないものだが、自分たちには使える良いものが出来た。


 よくよく考えると、今まで回復手段も無く魔物が居る場所で探索をしていた。ユキが強いので怪我の可能性も無いとは思うが、異世界知識があるから、なんて豪語する割には抜けていると反省である。


「よーし、回復手段確保! そういえば、ユキって回復魔法も使えるの?」


「はいです。即死じゃない限り大丈夫なのです」


「やっぱり、女神の弟子すげえ……」


 俺が感嘆の声を漏らすと、ユキはしっぽを振って喜んでいた。


 残りは魔道具類が幾つかある。素材は鉄や革だったので、無事に錬金が出来た。


マジックポーチ Aランク 錬金素材 革の切れ端

 容量拡張(大)


魔道水筒 Aランク 錬金素材 鉄屑

 燃費向上(中)


魔道ランタン Aランク 錬金素材 鉄屑

 燃費向上(中)


マジックテント Aランク 錬金素材 革の切れ端

 全自動設置回収 魔物避け(大) 

 空間拡張(小)


魔道コンロ Aランク 錬金素材 鉄屑

 燃費向上(小)


魔石燃料発射筒 Aランク 錬金素材 鉄屑

 燃費向上(中) 威力増加(小) 

 耐久強化(中) 反動減少(小)

 命中補正(小) 発射音減少(小)

 重量軽減(中)


拡散型魔石燃料発射筒 Aランク 錬金素材 鉄屑

 燃費向上(小) 威力増加(中) 

 耐久強化(中) 反動減少(小)

 命中補正(小) 発射音減少(小)

 重量軽減(中)


 ユキが見つけてきたものは、どれも便利なものばかりだった。目利きに自信ある発言に嘘は無かったようだ。


 水筒、ランタン、テント、コンロ、これで野営も可能だろう。ただ二人とも、料理が得意じゃないのが問題だ。一応、地球では簡単な自炊もしていたし、やはり俺が料理を頑張るしかないのか……。ネット環境があればレシピや動画を観ながら料理が出来るのだが、フルールでそれは叶わない。今までの記憶が頼りだ。料理のことは、これからの課題にしておこう。


 マジックポーチにはポーションや少しの食料などを入れて、ユキが装備することにした。ユキは回復魔法が使えるが、バレたくない時や魔法が使えない状況の時の為に持ってもらった。錬金袋Sランクとは違い、時間が停止しないので定期的に中身を入れ換える必要がある。多少手間だが、色々な状況を考えると必要な手間だろう。


 そして、今日の依頼人のゴミからもらった魔道具が二つ完成した。名前が長いので、わかりやすく偽装スキルで書き換えをした。ハンドガンとショットガンだ。見た目のまんまだが……。


 今作った道具類はマジックポーチ以外、全て魔石が燃料になるタイプだった。手持ちの魔石は、そこまで多くないので明日からは魔石を稼ぎに森に行こうかと思う。その時に銃の性能を試したい。しかし、壊れた状態を見た後なので、かなり不安になりSランクに錬金することにした。


ハンドガン Sランク

 燃費向上(特大) 威力増加(大) 

 耐久減少無し 反動減少(大) 

 命中補正(大) 発射音減少(大)

 重量軽減(大) ヤマト専用装備


ショットガン Sランク

 燃費向上(大) 威力増加(特大)

 耐久減少無し 反動減少(大) 

 命中補正(大) 発射音減少(大)

 重量軽減(大) ヤマト専用装備


「なんじゃこりゃ……」


「どうしたです?」


「銃が壊れにくくなればと思ってSランクにしたら、壊れない銃が出来ちゃった……」


「壊れないことは、良いことなのです。他の人にSランクがバレなければ、大丈夫なのです。寧ろ、あの壊れた状態を思い出すと恐ろしいのです……ブルブル」


「そ、そうだよね。何故かヤマト専用装備なんて能力が増えて俺にしか使えないみたいだし、Sランクだけどバレなきゃ問題ない! ……ことにしよう」


「なんとっ! ヤマトさん専用装備! かっこいいのですう……キラキラ」


 無事に? 安全な? 武器も手に入り、明日からは魔石集めを兼ねて、銃を使ってみようと思う。

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