第4話 俺お金あるじゃん!
色々な話をしながら歩き、ユキのアドバイスで錬金袋のバッグを装備しながら、歩いている。普通にバッグとして使えるので、物を入れる時にスキルを発動すると、いきなりバッグが出てきて、悪目立ちするからとのことだ。
町の外壁が見えるところまで来た。今のところ、魔物にも遭遇せずに順調だ。町に入る時に、お金がかかる話を聞いて思い出した。持ち物に硬貨と思われるものがあったことだ。ユキに聞いてみた。
「そうだ。これって、お金だよね?」
「はいです」
お金の価値も確認する為に、色々な物の価格を聞いて、だいたいの物価から日本円での価値がわかった。
鉄貨→100円
銅貨→1000円
銀貨→1万円
大銀貨→10万円
金貨→100万円
大金貨→1000万円
白金貨→1億円
各10枚で上の価値になる。
後半の硬貨は、お目にかかることも無さそうだが、これがこの星の共通の硬貨だそうだ。複数の国があるようだが、お金は共通なのだという。ここで、また一つ聞くことが増えた。今いる国名を聞いてなかったのだ。
「今いるところって、何て言う国なの?」
「ここはアリッサム王国なのです。ちなみに、あの町はイベリスなのです」
「アリッサム王国かあ。じゃあ、王様がいるのかい?」
「はいです。王都アリッサムにいるです」
「そうなんだあ。まあ、関わることもない人だろうけどねえ」
「その通りなのです。偉い人と関わるのは、トラブルの素なのです。特にヤマトさんのSランクのことは、知られたら面倒なのです」
「確かに……。気をつけよう。折角の異世界人生が無駄になるのは嫌だし」
ユキと会話をしながら歩いていたら、もう少しで町の門に到着しそうだ。守衛とは、ユキが話しをするからと言われている。
門に到着したが、かなりの人が並んでいる。二列あって片方は進みが早いのだが、何故かユキは遅い方に並んだ。
「あっちの列の方が、早そうだよ」
「あっちは、住人やギルドカードがある人達の列です。町に入るのが無料なのです」
「そうなんだ。どの町でも同じような感じなの?」
「はいです。無料の人は左の列に並ぶのがルールなのです」
「へえ。良いルールだね。並び待ちの人が減るし、トラブルも減りそう。やっぱり、ギルドに入る方が良さそうだなあ」
「じゃあ、町に入ったらギルドカードを作りに行くです?」
「そうだね。仕事もしなきゃだし。ユキは、どう思う?」
「あたしもギルドが良いと思うです。危険なこともあるですが、冒険者ギルドはどうです?」
他にも商人ギルド、薬師ギルド、錬金術師ギルドなど、複数のギルドがあるようだ。複数のギルドに所属することも出来るようで、あとで必要があれば考えれば良い。今回は冒険者ギルドに所属することにした。
町に入ってからの目的地も決まり、あとは順番がくるのを待つのみだ。すると、後ろの方が少し騒がしくなった。振り返って見ると、少し離れた場所から大声をあげて走ってくる人がいる。
「守衛! すまない、怪我人がいる! 手助けが欲しい!」
「わかった! 今行く! 三人ついてこい」
守衛は部下を連れて、走り出していった。15分程で守衛達は怪我人を数人連れて戻り、そのまま町の中に入っていった。少しして持ち場に戻ってきた守衛は、他の守衛と会話をする。その話が聞こえてきて、状況がわかった。
助けを求めていたのは冒険者のパーティーで、東の森に依頼で行っていたのだが、途中で自分達では勝てない魔物に遭遇してしまったらしい。怪我を負ったものの、なんとか逃げ出せたようだ。
「魔物かあ。まだ見てもいないし、イマイチ実感が無いんだよなあ」
「もし魔物に遭遇しても、あたしがいるのです!」
「ユキって強いんだよね? この世界に慣れる意味も込めて、今度魔物を倒すの見せてくれない?」
「かしこまりーです」
途中、怪我人が運び込まれるトラブルもあって、少し時間がかかったが順番が回ってきた。ユキが対応すると言っていたので、任せることにした。
「イベリスへようこそ。カードの提示を」
「無いのです。二人とも15歳になったので、村を出てカードを作りに来たです」
「そうか。成人おめでとう。では、一人銅貨3枚だ」
「わかったです。……あれ? うそ!? 無い……ナンデ」
「ユキ、どうした?」
「お金が……。落としたみたいです……。ごめんなさいです……グスン」
「マジか……。あっ、俺お金あるじゃん!」
フェリシア様が、こういうことを予想していたのかはわからないが、二人にお金を持たせてくれていたので、事なきを得た。ここまで色々あったが、なんとか異世界最初の町に足を踏み入れたのだった。
「うわあ。これが異世界の町かあ」
「……」
「ユキ、いつまで落ち込んでんのさ」
「またミスってしまったのです……ショボン」
「フェリシア様の代わりに、俺が説教しようか?」
「うっ、それは嫌なのです……」
「じゃあ、元気だして! ずっと落ち込んでるより、切り替えて先に進もうよ。とりあえず冒険者ギルドでしょ? 俺にはユキが頼りなんだからさ」
「……切り替え。……あたしが頼り。……そうだったのです! あたしは、ヤマトさんの可愛いボディーガードなのです!」
「……調子乗んなよ」
「はうっ。スルーしてくれなかったのです……ガーン」
「「……あはははっ」」
馬鹿なやり取りを二人で笑いあった。これでユキの元気も戻り、冒険者ギルドに向かえる。守衛に場所を聞いたので、迷わずに着くことが出来た。これで、目的であるギルドカードを作ることが出来る。ここでもユキが対応してくれるそうだ。
ギルドの中に入り、受付と思われるカウンターへ向かう。俺達より少し年上と思われる人族の女性に話しかけた。
「冒険者ギルドへようこそ。本日のご用件は?」
「15歳になったので、二人ともカードを作りに来たです」
「成人おめでとうございます。カードについて、説明を聞いたことはありますか?」
「無いのです」
「わかりました。それでは説明しますね」
カウンターの女性は、カードのことを説明してくれた。
身分証明だけのカードは、各ギルドか教会で銀貨1枚で作ることが出来る。冒険者ギルドへの加入は、プラス銀貨2枚必要。また、複数のギルドに所属しても同じカードに記載されるので、何枚もカードを持つ必要はない。ここまで説明されて、冒険者ギルドへの加入をどうするか聞かれたので、もちろん加入すると答えた。
「それでは、ギルド加入の手続きを始めますね。お一人様、銀貨3枚になります」
お金を支払うと、女性は石板のようなものを取り出した。これに手を置くと、ステータスが登録される魔道具だそうだ。ユキが登録している間に、俺は偽装が大丈夫かステータスを再度確認した。偽装は問題なく作用していて、二人とも無事登録を終えることが出来た。カードが出来上がるまで、今度は冒険者ギルドの説明をしてくれた。
冒険者は全て自己責任である。
ランクがあり、一番下がGランクで、一番上がAランクである。Gランクからスタートして、依頼を成功するとプラス査定され、失敗するとマイナス査定される。明確なポイントなどはなく、実績をギルドが評価してランクが上下する。また、Cランクからは昇給試験がある。
このランクは、全世界共通で通用するものである。また、他の冒険者ギルドにも魔道具を使って情報は共有されるので、複数の冒険者ギルドで査定されても全て纏めて実績として評価されるので問題ない。
依頼は今のランクと、一つ上のランクまで受けることが出来る。掲示板に依頼書が貼り出されていて、それを剥がして受付に持って行き手続きをする。手続き無しで達成しても、報酬は支払われない。常設依頼は剥がさずに、依頼品を受付に持ち込めば良い。成功報酬は、ギルドが手数料を引いた金額が表記されている。依頼を失敗すると違約金が発生するので、自分に見合わない依頼は無理に受けない方が良い。
パーティーを組む場合は、自分と相手のランクが二つ差以内とする。また、特別な場合(ギルドからの指定など)は除く。
ギルドカードを破損、紛失した場合は再発行に銀貨2枚かかる。
依頼を3年間受けないでいると除名される。依頼を受ける度に期間は更新される。除名されても記録は2年間残るので、その間に銀貨2枚で再登録が出来る。
「以上が、冒険者ギルドの説明になります。長くなり申し訳ありません」
「いえ、詳しく教えてくれて、ありがとうございます」
「とても、わかりやすかったのです」
「ありがとうございます。それではギルドカードをお渡ししますね。こちらになります。ヤマトさん、ユキさん。あっ、私はマリーといいます。宜しくお願いしますね」
「マリーさん、ありがとうございます」
「ありがとうなのです」
「今日から依頼を受けることが出来ますが、どうしますか?」
「まだ準備も出来てないので、今日は休みます」
「そうですね。準備は大切ですからね。では後日、依頼に出発する前に、もう一度声をかけてもらえますか? 簡単な初心者講習がありますので」
「わかりました」
無事ギルドカードを手に入れて、次は何をするか考える。ユキと話して、宿の確保や店のチェックなどをすることにした。それでも、明日からの為に掲示板だけは見ることにした。
「へえ、依頼って色々あるんだなあ」
「まずは、Gランク依頼を探すです」
掲示板は、ランクごとに固まって貼り出されているので探しやすかった。Gランクは採取系や、町の中でのお手伝い系が多いようだ。魔物討伐もあるが、数は少なかった。
掲示板のチェックを終えて、再び受付のマリーさんのところに行き、安くておすすめの宿や、食事処、買い物の店を色々と教えてもらった。まずは、宿の確保に向かうことにした。
明日からは、冒険者としての異世界生活の始まりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます