第2話 何故こうなった……

 また、フェリシア様が説教モードになる前に、スキルの話をする。


「フェリシア様。俺のスキルって、どうなります?」


『……そうですね。まずは、確定してしまったスキルの説明をしますね』


 俺の確定してしまったスキルは、マップと錬金袋という二つだった。


 マップは、自分の周りの地図がわかり、人や魔物の存在がわかるスキル。


 錬金袋とは、スキルを持つ人のみが使えるマジックバッグが現れて、そこに素材を入れ錬金することにより、新たなアイテムを生み出すことが出来るスキルである。錬金しなくてもバッグとしての機能もあり、荷物を沢山持ち運ぶことが出来る。


 このスキルは、複合スキルというもので、錬金術とアイテムボックスの機能が使える。


 しかし、錬金術に比べると出来上がるアイテムの品質は低く、アイテムボックスに比べると容量が少なかったり、バッグを出さないと出し入れ出来ないなど、複数のスキルが使えるが、下位互換扱いのスキルだそうだ。


『二つのスキルは、このような内容です。あと、スキルのランクについても説明しますね』


 スキルにはランクが存在する。A、B、Cと三つのランクがありAが最高である。AとCでは、かなり性能の差がある。


「なるほど……。俺の好きなゲームっぽいスキルだなあ。記憶から選ばれたから、この二つが選ばれたって感じか……。俺的には、楽しそうなスキルだと思います」


『それは良かったです! ですがランク次第では、厳しい可能性も……。地球の神との約束である、十分な保証になるのでしょうか……』


「そういえば、俺のスキルのランクって聞いてませんでしたね」


『すみません! 失念していました。すぐに確認を。えー……はあ!?』


「……今度は何事ですか?」


『……こほん。大変失礼しました。なんて下品な声を……。ヤマトさんのスキルのランクですが、二つともにSランクでした……』


「へえ、Sランクかあ。……はあ!? Sランク!? A、B、Cじゃないんですか?」


『そのはずなんですが……。スキルは私が作ったものですから、Sランクなんてものは存在しません。あり得ません……』


 フェリシア様は、Sランクスキルの詳細を確認してくれた。


 マップAランクは、自分を中心に半径500メートルが範囲なのだが、Sランクは半径1キロメートルが範囲だそうだ。さらに、女神様も知らない『検索』という機能が付いているという。


 錬金袋は、出来上がるアイテムの品質は最高で、作れる種類も豊富、バッグの容量は無限、時間停止機能付きである。錬金術とアイテムボックスのAランクよりも、上の機能が付いている。


『Sランクは、かなり飛び抜けた性能のようです。おそらくですが、別の星の魂であるヤマトさんだから、Sランクに変化したのかもしれないですね。性能が悪くなる変化ではなくて良かったですが、これは困りましたね……』


「何か問題が?」


『はい。この世界では成人になったら、身分証明のカードを作るのです。そこには名前、年齢、種族、スキルが表示されます。もちろんランクもです。そこにSランクとなると……。もしかしたら、拘束されてしまうかも……。最悪、命を狙われる可能性も……』


「拘束!? 命を狙われる!? マジですか……」


 今まで、あり得なかったSランクがバレると拘束されて、自由の無い生活か、研究と称して酷い目に遭うかもしれない。最悪の場合は、この世にあってはならないものとして、命を狙われる可能性もあるという。


 フェリシア様は対応を色々考えてくれたが、まさかの事態にテンパっているのか、現実味がないものしか浮かばなかった。ずっと14歳と言い張るとか、町に一生近づかないとか、まともに生きてはいけなさそうだ。


 暫く考え込んでいたフェリシア様だが、残り一つスキル枠があることに気がついた。そのスキルで、Sランクを隠しましょうと提案してきたのだ。


「隠す? そんなスキルあるんですか?」


『無いです』


「え? ……フェリシア様、ふざけてるんですか?」


『ち、違います! 最後まで聞いて下さい!』


 フェリシア様の作戦は、こうだ。


 スキル『女神の加護』というものがあり、これは幾つかのスキルが含まれる複合スキルだ。本来の内容は、身体能力強化や魔力増加など、あらかじめ決まった効果の中からランダムで数個選ばれるというものだ。


 それをランダムではなく、効果を選べるようにする。そこに『偽装』という新しいスキルを作って入れるという方法だ。


「新しく作るのかあ。フェリシア様にしか出来ない発想ですね」


「……フェリシア様も、トラブルを誤魔化すです」


 今まで大人しく正座していたユキが、いらないことを言う。


『ユキ! 誤魔化すとは何ですか! このままでは、ヤマトさんは転生しても辛い生活になってしまいます。地球の神との約束を果たす為にも、必要なことです。そもそも、あなたが━━━』


(あーあ、また説教モードだよ。ユキも余計なこと言うから……。また少し待つかな)


◇◇◇◇◇


 今フェリシア様は、スキルを作っている。説教は30分くらい経っても終わる気配がないので声をかけたら、また謝られた。ユキは早く止めて欲しそうに、こちらをチラチラ見ていたがスルーした。スキルが完成するまで待つしかないので、ユキに話しかけてみた。


「ユキってさあ、いつかは女神様になったりするの?」


「はいです。その為の修行なのです」


「でも、トラブル起こしてばっかりみたいじゃん」


「うっ。その通りなのです……ショボン」


「スキルの調整が終わったら、一緒に転生するんでしょ? 本当に大丈夫? フェリシア様に、やっぱり俺一人でって……」


「だ、大丈夫なのです! もう後が無いのです……。フェリシア様の信用を取り戻したいのです。あたし頑張って、必ずヤマトさんの役に立つです! だから……」


「わかったよ。じゃあ、説教を止めるのが遅かったのも気にしてないよね?」


「ぐぬぬ……。やっぱり、あたしの『助けてチラ見』に気付いていたです。でも、気にしてないのです。説教には慣れてるです!」


「慣れちゃダメじゃん……。てか俺は、この世界のこと全くわからないからさあ。正直、一人で転生するのにビビってたんだよ。だから、よろしく頼むよ」


「はいです! あたしに、おまかせなのです……エヘン」


『ヤマトさん、お待たせしました。スキルが出来ました』


 それでは、フェリシア様の作戦を決行しよう。


 まず、魂に付与するのは言語理解と適応力にする。女神の加護には、新しく作った『偽装』とフェリシア様のおすすめを、バランスを取ったランクで選んでもらった。『偽装』を自分でも操作出来るかの確認の為に、スキルとランクが見えるようにしてくれた。


 結果、俺が得たスキルは、こうなった。


マップ Sランク

錬金袋 Sランク

女神の加護

 ・偽装 Sランク

 ・幸運 Sランク

 ・身体能力強化 Sランク

 ・状態異常耐性 Sランク


「何故こうなった……。フェリシア様! 全部Sランクなんですけど!?」


『……はい。これは予想外です。まさか私が設定したものまで、Sランクに変わるとは……。しかも、確定されています……』


「フェリシア様も、たまには失敗するのです……ニヤリ」


 予想外の出来事に、ユキの余計な一言も耳に入らないフェリシア様。後から設定した女神の加護の中身まで、全てSランクになってしまった。やはり、この星の魂ではないことが原因だと思われる。


 暫く呆然としていたが、とにかくSランクを偽装してみることにした。フェリシア様の指示に従いながらやってみた。


マップ Bランク

錬金袋 Aランク

女神の加護

 ・幸運 Aランク

 ・身体能力強化 Cランク

 ・状態異常耐性 Aランク


『ヤマトさんにも使えましたし、偽装スキルは上手く作用しましたね。SランクをB、Cランクにするのは、能力的に無理がありますが、全てAランクだと悪目立ちしてしまいますので……。こうするしかないですね。これでも、かなり優秀なランクなのですが、何とか大丈夫かと思います……』


 フェリシア様の説明によると、マップは最初Aランクを予定していたが、他のスキルをAランクにしなくてはいけない理由が出来て、かなり無理があるがBランクにした。Bランクは半径200メートルほどの範囲なので、ユキ以外の誰かと居る時には注意すること。


 錬金袋はAランクでも奇跡的にしか出来ない物を、幸運がAランクなことで、ラッキーで高品質な物が出来るという設定にした。容量無限と時間停止機能については人に知られない方が良いので、場合によって誤魔化しは必要とのことだ。


 身体能力強化もCランクは無理があるほど強化されているが、一つはCランクがある方が目立ちにくいので設定した。ここくらいしかCランクに出来なかったので、上手く合わせて欲しいと言われた。


 そして状態異常耐性だが、ここに予想外のことがあり、マップを無理矢理Bランクにしたのだ。


「あれ? 状態異常耐性は、BやCでも良いんじゃないですか?」


『それが……Sランクは状態異常無効だそうです……』


「無効ですか……。じゃあAランク以外無理ですね。Sランク凄すぎですね……」


『はい……。ヤマトさん。十分な保証としてスキルを調整してきましたが、思いもよらない結果で、転生後に面倒事になるかもしれないです。申し訳ありません』


「いえいえ、フェリシア様が謝ることではないですよ。初めてのことで、予測不能でしたからね。転生後も何とかなりますよ。いざという時は、ユキが誤魔化してくれますから」


「なんとっ! 無茶振りなのです……キツイ。いや、でも……頑張るです! フェリシア様! あたしは、ヤマトさんの役に立つです!」


『ヤマトさん、ありがとう。ユキ、しっかり頼みますよ』


 やっと完成した俺のステータスとスキルだ。

 

ヤマト 15歳 人族

スキル

マップ Bランク

錬金袋 Aランク

女神の加護

 ・幸運 Aランク

 ・身体能力強化 Cランク

 ・状態異常耐性 Aランク


 あとは、ユキのステータスとスキルも設定したら、ついに(やっと?)転生出来るようだ。


(転生前から、バタバタだなあ……)

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