はじまりのカクヨム

砂月かの

『はじまりのカクヨム』

物語を読むのが好きだった。

日常から離れて、物語の世界に入り込めるそのひとときが幸せだった。

魔法の図書館には、今日も読み切れないほどの新作が上がる。

お気に入りを見つけるのは、なかなかしんどいけど、発見したときのテンションは自分にしか分からない。


「これ、好きだ」


もうほとんど直感。けれど、完結保証なし。

作者様の諸事情で物語が中断されるのは、許容範囲。

だから、ついつい完結済み作品を探し歩いちゃう。

やっぱり気持ちよく最後まで読みたい。

でも、毎日のお昼休みに続きを待つもの楽しみの一つ。


読み専として足を踏み入れたカクヨムだけど、読めば読むほど欲が出る。

自分ならこんな展開にしたいなぁ~、とか、ここはこうした方が良かったなぁ~とか、こんな物語が読みたい! とか、欲って止まらない。


それなのに、探しても探しても読みたい物語にたどり着けない。

タグ検索で引っかかる作品は、半分正解、半分詐欺?


「なんか、違う……」


首を傾げることもしばしば。

だから、うっかり自作しちゃおうかな? なんて危険領域に足を踏み入れちゃう。

たくさん読んできたから、書き方は何となく分かる。

きっと面白い作品が書ける。


だけど、たぶんそこが勘違い。

ランキング上位作品に興味を抱かない場合、おそらく世間と好みが合わない。

つまり、読者はそれを求めていない。

それに気がつくのは、作品を投稿して、心が折れてから。



ちゃんとランキング上位作品を読んでいれば、さすがに面白いって分かるはずなんだけど、どうも、同じようなタイトルとあらすじに興味が惹かれなかった……。

自分の落ち度。



「絶対面白い!」


そんな意気込みで書き始めた作品は、もちろん自分が読みたかった物語なんだから、面白いに決まっています。

思い通りの展開を描ける自作品は、自己満足の範囲を超えない。



―― ポチッ ――



夢と期待を乗せて新規投稿のボタンを押す瞬間が、一番緊張する。

これがカクヨムスタートの合図。

数時間後、どのくらい読まれただろう? そんな期待を胸いっぱいにカクヨムを開いて、真っ青になる。

★ゼロ、PVゼロ、画面の前で時が止まる。


読者は大勢いるけど、誰一人として見てくれなかった。


その絶望感に、「書くんじゃなかった」と、酷い後悔を味わう。

それから、読まれない理由を知りたくなって、創作論とか探してみる。

カクヨムはどうやら繋がりや輪が大切なんだと、なんとなく知る。

ぼっちには辛い現実。


だけど、絶望って一度味わうと憔悴して何もしたくなくなる。

カクヨムが嫌いになってしまう。

心ときめかせてスタートしたカクヨムデビューは、あっけなくゴール(挫折)を迎える。


自分は自己満足の域を超えられなかった、ただそれだけなのに。



【お知らせ】通知に赤い点が灯る。



読んでくれた人がいた、★を送ってくれた人がいた。

PV1でも、★1でも、それがとてつもなく嬉しくて、涙まで浮かんできた。


諦めようとしていた心が温かくなる。


カクヨムで『リスタート』してみようと、決めた瞬間だった。



おわり

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