第3話
ソファに座って、テレビで昔の地球にあった大自然の映像を集中して見ていたら、お父さんに話しかけられた。僕はまたイラつきながら、それをお父さんには見せないように「なに?」と返事をする。
「明日の休みは、三人で特別動物園に行こうと思う。それでもいいかな?」
僕は驚いてソファから飛び上がり、お父さんの顔を見つめた。
特別動物園って言った? そんな……。信じられない。
「どうかしたのか? 何か問題でもあるのか?」
「──いや。嬉しくて。本当に特別動物園に行けるの?」
「本当だとも。お父さんは嘘をつかない」
「分かってるよ。ただ……、確認したかっただけ」
「そうだな。お前はいい子だ。いい子だから連れていける。いい子でないとそこには行けない」
僕は動物園に行けることと、お父さんからいい子だと言われたこと、これまで我慢してきたことが無駄にならなかったことが嬉しくてたまらなかった。いますぐにでも、灰色の空の下でもいいから、大声を出して走り回りたかった。あまりの興奮で僕はウズウズとする足を抑えておかなければならなかった。
「だから明日の朝は早い。今日はもう寝なさい」
「──うん‼ 分かった‼」
僕は興奮のあまりすぐに声を出すことができないほどだった。こんなに嬉しいことは生まれて初めてかもしれない。僕はそう思いながら、自分の部屋まで走って行った。そして、お父さんの言いつけ通り、布団に潜り込んで目を閉じた。本当はもっと起きていたかったけれど、こんなところではしゃいで、やっぱりなしと言われたらそれ以上に悲しいことなんてない。だから言われた通り早く寝よう。明日はずっと行きたかった特別動物園。いつものガラス越しに見る動物園じゃない。中に入れるんだ! あの大自然をこの目で直接見れる! さわれる!
だから寝るんだ。早く寝るんだ。明日のために、早く寝るんだ。あしたのために、はやく──。
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