第14話 高校2年生

それでも、私はお兄ちゃんを諦めなかった。


やっぱりお兄ちゃんには何か事情がある筈だし、冷静にこんな感じのお兄ちゃんじゃ、他人に暴力を振るう力も出て来ない。


きっと何か事情があった筈。


それこそ・・・私の時みたいな。


_________

 

調べた。・・・そして、やっぱり当たっていた。


夢「・・・本当に本当にごめんなさい」


お兄ちゃんに叩かれた女の子はクラスの子から脅されていたらしい。そして、お兄ちゃんに言ってしまったようだ。秋さんのことを酷い言い方で馬鹿にして、


「そもそも、あの時優さんは全然本気じゃなかったんです」


「え、」


「優さんは私がこんな立場に居て、脅されてたことを察しくれてた見たいで、・・・あのビデオで叩かれた時、手加減されてました。」


やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんだった。そう、絶対に他人は傷つけない。お兄ちゃんは誰かを守る時は戦うけど不用意にこんな関係ない人を傷つけない


「・・・なのに、私は勇気を持てなくて、虐めて来た人には手加減されてたのもバレて・・・私怖くて、優さんは良いからやられてフリをしてくれて、私は・・・」


________


「お兄ちゃん・・・聞いたよ。手加減だったこと」


「・・・そうか」

この学校に転校して来てから初めて口を開く


「ずっと、ずっと黙ってたんだね。バレないようにあの子を庇う為に」



写真で恥ずかしい写真とか他にも命令されてしてはいけないことを沢山撮られてしまったんです。だから私は仕方なくて・・・


「・・・」

お兄ちゃんはまた何も答えない。


「・・それだけじゃないよね。私を巻き込みたくなかったんだよね」


お兄ちゃんは驚いた顔をする。そして少しだけ嬉しそうだった。


 「そうだな。」


「ねぇ、でも・・・本当はもっと別な理由でしょ」


「・・・っ」


さらに、お兄ちゃんは驚いた顔をした・・・そして口を開く。


「うん。もうそうだよ。本当はどうでも良かった。もう虐められようがそうでなかろうろうがどうでも良いし、脅されてとはいえ夢さんだって犯罪も言ってはいけないことを口にした事実は変わらないしね」


久しぶりに聞く、兄の普通の会話・・・そして、見たこともない楽しそうだけど、世界に絶望して諦めて笑っている。


「・・・知ってるんだろう??俺の中学のことも」


「うん、川さんから聞いた」


「・・・俺さぁ、生まれて来たからずっと色んなことに必死だったよ。馬鹿みたいに・・・ずっとさぁ、春を守って、冬ちゃんを好きになってそれから必死に立ち直ろうと思ったら、心が折れてさ・・・もう本当にどうすれば良いんだろうって・・・貧乏神だよな。冬ちゃんも俺にプレゼントをあげようとして亡くなって、秋も俺との思い出が自殺に繋がって・・・」あはは、本当に馬鹿みたいだよ。俺って、本当に馬鹿。こんなにさぉ、好きな人に取り返しのつかないことをしておいて、絶望するだけして、自分は死ないの・・・」


今頃になってわかる。お兄ちゃんはずっと誰かを幸せにしたくて、自分も一緒に幸せになりたかった。でも誰も家族でさえ、お兄ちゃんの存在自体否定し、クラスメイトからネグレクトによるどうしようもないことを責められる・・・そんな時に、冬さんが秋さんがお兄ちゃんの前に現れて、


「怖いんだよね。天国には二人が居るのにさぁ、二人はもっと俺より傷ついて理不尽に亡くなったのにさぁ、・・・酷いよな、俺にはお前が春が居たのに・・・」


お兄ちゃんは助けらて居たんだろうな、そして、そんな二人を助けられない自分自身も憎くて


「本当に、俺って何がしたいんだろうな。いやしたくないのかな」


「もういいよ」


「・・・何が??何が」


「もう良いよ。お兄ちゃん」


「・・・はぁ??何を言ってんだよ。お前」


お兄ちゃんは怒っているでも、あの時とは違う。今は私を馬鹿にするような同時に誰か、友人を理解したくても理解出来ない哀れみなような感じ


「・・・わたしがお兄ちゃんを幸せにするから」


「・・・いや、お前が・・・そんな」


春は兄の言葉を塞ぐように抱きしめる。


「・・・もう良いんだよ。私がこれからずっと一緒だから」


「・・・」


優は何か言いたくても何も言えない。


「大丈夫だから。これからどんなに嫌でも傷ついても私は一緒だから。例え私が死んでも、保険にお兄ちゃんを幸せをしてくれる人を用意しておくから」


春は優から少し濡れた感触を感じる。


「もう、私はお兄ちゃんを虐めないし、一人にしない。もう頑張らないで、私のヒモでいいし、明日から学校辞めて、家でゆっくり私を待ってくれたらそれで良いから」


「・・・」


「・・・冬さん、秋さんの分も少しでも補えるように、私がお兄ちゃんを幸せにするから」


お兄ちゃんはそれから話せるように少し顔を離したけど、黙って私の背中に手を回して来た。




私はお兄ちゃんに酷いことをしちゃったし、お兄ちゃんは私のこと妹じゃないと言ったけど、あれは小学生の頃だし、そもそもお兄ちゃんは私のことを嫌ってない。どんなことがあっても、やっぱりお兄ちゃんを私を守るナイト(ニート)だ。


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保育園からずっと大切にしていた義妹にもう遅い 激 辛 @eaconnn

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