第12話 高校1年生
「コイツ・・・何も話さないんだよな」
「・・・」
「気持ち悪い。つか臭いし」
「・・・」
「ゴミだよな」
「・・・」
「意外とあいつ頭が良いのがムカつく」
「・・・」
「髪もボサボサだし、何をしてもさぁ、返事ないし」
「ゴほっゴホッ」
優はトイレに顔を埋められて溺れかける。
「ほら、せめてこんな時にやめてくださいくらい言えるように慣れよ」
________
春視点
お兄ちゃんの行方が分からないまま高校生になってしまった。
「ねぇ、春。そろそろ忘れても良いんじゃないかな」
高校も一緒になった夏が私の気を使って言ってくれてる。
「・・・無理だよ。それくらい優し過ぎるお兄ちゃんだったから」
「・・・そうだよね。ごめんね。」
________
半年が経ってある程度グループが出来てきて、同時に虐められる人も出てくる。
「・・・ねぇ、春」
「・・・うん」
最近の川さんへの虐めは見ていられない。虐めなんてその時の快楽なだけで、後で自分に罪悪感や罪の重さが返ってくるんだから・・・それにされている人の痛みを知らないのに
「やめてください。それは・・・あっ」
川さんのノートが・・・破られている。
「酷い」
「やっぱり。ほっておけないかな・・・」
私は一人の女の子を囲むグループに突っ込む。
________
「お前だよな。桜さんを襲ったゴミやろうは」
「・・・」
「答えろよ!!ゴミやろう!!」
________
私はクラスメイトから嫌われることにはなったけど、お陰でこの川さん仲良くすることが出来た。
「・・・ありがとうね。春さん」
「いやいや、私が仲良くしたかったんだよ」
それに、なんだかお兄ちゃんみたいなことが出来て嬉しかったし
「・・・私実はね、中学の頃は凄く悪い虐めっ子だったんだ。」
「え、そうなの??」
「・・・うん、本当に最低だった・・・」
悲しそうに、当時のことを悔やむような表情・・・まるで、私みたいだ。
「・・・でもね。そんな私をずっと止めてくれたくれた男の子が居たの」
お兄ちゃんみたいだな。
「まるで、私を助けてくれた春ちゃんみたいに、私から虐められてる子を守ってたの」
「うんうん」
「それでね・・・」
「川ちゃん?」
川ちゃんは泣き出す。
「今度は私が、その子に虐められるようになったんだ」
「・・・っ」
「それで、やっと虐められた辛さが分かって、でも今度は私をその男の子が守ってくれた。」
じゃあ、お兄ちゃんみたいに女の子に寄ろうとしたんじゃなくて、本当に虐めが許せなかったんだね。かっこいい人だな
「そして、私を守りながら・・・必死にね。・・・必死にその子の虐めも止めようとしてたの」
涙は止まらない。きっと辛くて、同時に救われるような良い出来事だった
「けど、その虐め返してきた子は自殺したの」
「・・・っ」
ずっと、お兄ちゃんみたいだなって思ってたけど、そんなあって欲しくないところまで一緒だとは思わなかった。
だから、ずっと川さん悲しそうに涙を流して悔やんで
「・・・だからね。本当はずっと高校でも虐められるのは仕方ないと思ってた。だけど、春ちゃんが私のことを守ってくれた」
「川ちゃんなりの虐めてしまった子への償いだったんだね。」
「うん、でも。やっぱり虐めは辛いよ。本当に辛い。私もその子にノートを破らせるように命じたことは会った。けどされると凄く辛くて、」
私も何も知らないで、あんなことをしてしまった・・・
「・・・私は、もうどうすればいいのか分からなくて」
確かに、川ちゃんへの謝罪や、償いは本人は届かない
「せめて・・・さっき言ってた男の子にもう一度会いに行こうよ」
「・・・男の子?」
「うん、きっとその子を幸せにして欲しいと虐められてた子も願ってたんじゃないのかな」
「そうかも知れないけど、その子は亡くなったショックでもう病んでるの、私に会いたくもないだろうし」
「なら、代わりに私が会ってあげる。謝ってくるし出来る償いがあるなら、一つずつ、していこうよ」
私もお兄ちゃんに・・・冬さんに出来ることがあるなら何でもしたい。
じゃないと私も心が罪悪感と悲しみと後悔で張り裂けそうになる。
「・・・うん」
「それで、その男の子の名前はなんて言うの?」
「ゆ」
・・・っ!!ま、まさ・・・
「優君」
「お・・・お兄ちゃん・・・なの、もしかして、その人」
「えぇ?春ちゃんが優君の妹さん??そんなでも苗字は違うし、顔も全然似てないから」
「でも、確かにお兄ちゃんが大切な人を亡くしたのは、小学生だし、」
この時の私は話と直感的に運命的にお兄ちゃんだと確信していた。だけど認めなくて、お兄ちゃんがまた大切な人を失って傷ついたと言う事実を
「言って・・・た、優君は一度、そ・・・そんな、こと」
まるで、事実があってしまったかのような反応だ。
いやこんな偶然・・・ある訳ないよね・・・あって言い訳がないよ。
ダメだよ。もうこれ以上、ただでさえ、冬さんも亡くなって私がお兄ちゃんに酷いこと沢山して傷ついてるのに
「みょ、苗字は」
「宮本・・・」
「・・・嘘」
それはお兄ちゃんの今の苗字だ。
「なんで、なんで!!なんで!!」
川さんの腕を掴む
「・・・春ちゃん」
「なんで、なんでいつもお兄ちゃんなの!!なんでお兄ちゃんばっかり辛い目に遭わないといけないの!!なんで!!」
_______
優の家
「相変わらず、ゴミのような顔をしているわね」
「・・・」
「生まれてこなければいいのに、あんた」
「・・・」
「いい加減にしなさいよ!!」
バンっと音が鳴る。だが優は一切の反応を示さない。
________
私は川さんのお陰でお兄ちゃんの行ってる学校を知れた。
そして、お兄ちゃんをやっと見つけた。
髪は伸びまくってるし、服装もボロボロでも、見間違える訳がない。
話しかけたい。もう一度、名前を呼ばれて今度こそ謝って気持ちを伝えたい。そんな欲望が溢れてくるが
「・・・」
絶望しきっている兄に、掛ける言葉が何一つも見つからなかった。
そうして、見ている間に急にお兄ちゃんは殴られる。
「・・・お兄ちゃん!!」
私はお兄ちゃんの前に出た
「・・・は・・・る?」
嘘でしょ、お兄ちゃん私の名前を呼んで
「おい、お嬢ちゃん。コイツは女の子を襲ったクズ野郎なんだよ」
「・・・っえ」
「だから、一見俺たちが虐めてるように見えるかも知れないけどこれは制裁なんだよ。だからどいて貰っていいか?」
「・・・お兄ちゃんが、お兄ちゃんがそんなことする訳ない」
「お兄ちゃん??このゴミに妹なんか居たのかよ??まぁ良いや。とりあえず行くは・・・妹さん何か会ったらすぐに連絡してなぁ、これ俺の連絡先」
そう言って貰ったけど、直ぐに捨てる。
そして、
「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん」
思いが、色んな思いが溢れてくる。会いたかったずっと。会いたかった
「・・・」
お兄ちゃんはなんだか、辛そうな顔をしている。そして、
「・・・春・・・」
「お兄ちゃん」
「もう割って入って来るな。俺達の関係はとっくに切れた」
嬉しかった。あそこまで絶望して辛いことばっかりで、殴られても何も言い返せなかったのに、
やっぱりお兄ちゃんは優しい。どんなに傷ついても、
「そうだね。でも私が作り直すから、」
「・・・春・・・俺と関わんないでくれよ」
「・・・そんなの嫌だ!!お兄ちゃんは私が守るんだから」
昔、お兄ちゃんと約束してくれたけど、私が裏切った。なら今度はお兄ちゃんを守るから。
「・・・」
________
「本当なの??春??」
「うん、ごめんね。夏」
「はぁー、やっとまぁ、こんなこと言い出すとは思ってたよ。」
流石、小学生から一緒の友達。
「もう、お兄ちゃんを一人にしないから」
「・・・はぁ、ヤンデレ」
「ヤンデレじゃないよ。ブラコンだよ」
「・・・」
そして、私はお母さんとゴミ父を説得して転校することにした。
これでお兄ちゃんを守れる・・・そう思っていた
________
お兄ちゃんの学校に引っ越してきた。これでやっとお兄ちゃんの近くで守れる。
「・・・」
お兄ちゃんはただずっと、空を眺めている。
「おい、優。お前」
たまにお兄ちゃんに絡もうとして来る人が居るが
「お兄ちゃんに何のよう?」
「・・・ッチ、またこのサイコ妹やろうかよ」
「・・・だから、お兄ちゃんに何のよう?」
「っお前、いつまでもそんなゴミ兄貴と一緒だと苦労するぞ」
「・・・お兄ちゃんはゴミじゃない」
「・・・本当に何もしらねぇんだな」
「なぁ、やっぱり見せてやろうよ」
「何を??」
そして、ビデオには
「・・・うそ」
お兄ちゃんが女の子を叩く瞬間が写っていた。
しかも、これはわざとじゃ無くて、お兄ちゃんはその女の子をまた叩く。明らかに一方的だった。
お兄ちゃんがこんなことをする訳ない。でもこれは合成じゃ無くて本物で
「本当、わざわざお兄ちゃんを守るために転校して来たのに・・・残念だったな」
「・・・そんな・・・そんな」
___
私はお兄ちゃんにそのことを聞いた。だけど何も答えてくれなかった。
「お兄ちゃん・・・お願いだよ。教えてよ。どうしてこんなことをしたの?」
信じられなかった。どんなことがあってもお兄ちゃんは人を傷つけることはしない。いつも誰かの為に必死だったお兄ちゃんがこんなことをするなんて・・・でも、同時にお兄ちゃんを苦しめる数々の出来事からこんなことをしてしまってもおかしくない。
・・・だけど、幾らされても自分がして言い訳がない。
何よりそれはお兄ちゃんを虐めて理解したことだ。
「お兄ちゃん、その子は引きこもってるんでしょ。謝りに行こうよ」
「・・・」
お兄ちゃんは答えない。
「・・・お兄ちゃん」
「春ちゃんそいつは良いから。とりあえず今はほっておこうよ」
「でも、」
「春ちゃんからしたら大切なお兄ちゃんでも、夢ちゃんからしたらこいつ女の子に暴力した、クソ野郎だからさぁ」
「・・・っ」
確かにその事実は変わらないし、お兄ちゃんも否定をしようとしない。
でも私は学んだよ。
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