第10話 中学2年生


この学校でもやっぱり、虐めはある。


「秋ちゃんって本当に地味よね」


「ほんと、ほんと、地蔵さんみたい」


例えが微妙・・・


「・・・秋さんがいると空気が重く感じるよね」


「そうだよー、あー、秋さんと違うクラスが良かったな〜」


________


「・・・優君・・・ありがとうございます」


「いいよ。それより、俺は秋さんと同じクラスで嬉しいから」


秋さんは図書館に居ることが多く、小学生の頃から図書館通いの俺と気があっていた。


「・・・優君、この小説・・・とかオススメです」


漫画や小説をオススメして貰っており


「面白そう、読んでみるね」


オススメ仲間になっていた。


________

冬の墓


冬ちゃんのこと、春のことはまだ引きずっている。冬ちゃんの死亡のニュースと、カードを破られた時のことはトラウマのように何度も蘇る。


「・・・冬」


何度も冬に会いに来ているが、当然返事なんて返ってこない。


「・・・」


_________


「あ、手が滑った!!」


「・・・っ!!」


秋の弁当が倒される。


「・・・っ」


今、手が動きそうになった。だけど、今までの経験と秋さんから


お願い、優君が私を守りたい気持ちは凄く嬉しい。だけど私が我慢するだけで良いならそれでいいから


「・・・あー、きったな」「ゴミじゃん、まぁでも秋ちゃんには丁度いいかもだけど」


「・・・」


「あー、きったな。さっさと吐きなよ」

秋の顔を掴み、落ちた弁当のところに顔を向ける。だが、


「・・・いい加減にしろよ」

腕を掴む。


流石の、優も我慢の限界がだった。


「・・・なに、アンタ?」


「やり過ぎだろう」


「・・・優くん」


「・・・はぁ??ゴミに、向かって掃除させ「フン!!」」


優は落ちた食べ物を強引に口に入れた。


「ちょっ、何するのよ!!汚い!!最悪」


「お前、」「おい!!」


見ていたクラスメイトが俺に向かって怒り出す。


だが、俺は気にしない。


「・・・どうだ??お前がしようとしたことをされた気分は」


「・・・最低よ!つかセクハラよ!!訴える!!みんなこいつを訴えて!!」

クラスの一部が先生に言いに行ったようだ。


俺はクラスの男子達に押さえつけられる。


「・・・優くん!!」


秋さんが心配した顔をしてくれる。


「・・・そもそもさぁ、アンタが悪いのよ。アンタがジメジメして気持ち悪いから、私がお仕置きしてあげたのに」


「そうよ、アンタみたいなのが居なければいいのに!!」「最低!!」


クラスメイトは再び、秋さんへの怒りを向いた。

その瞬間

「おい、何が起きている!!」


先生が入ってきた。


________

その後、俺は先生に呼び出されて事件の詳細を話した。


「・・・お前の言ってることが本当かも知れないが、俺達は虐めをどうこう出来るほど、教室は完璧じゃない」


「・・・そうですね」


「まぁ・・・とりあえずだ。お前が川にしたことは事実だし、停学になって貰う。」


「はい」


自分のしたことは間違いじゃないし、停学くらいで済んで良かった。



「・・・優くん、ごめんなさい・・・私のせいで」


「いいよ。俺は仕方ないと思ってるし、虐める方が悪いから」


「でも、」


「・・・いいよ。ねぇ、それより秋さん」


「・・・何?」


「虐める人は虐められる人の気持ちが分からないって言うよね」


「・・・うん」


「でも、俺さ思うんだけど」


「・・・何を?」


「そもそも、虐めどうこうの前に他人の気持ちがわかる人間なんて居ないよね。」


「・・・っそうだね。」


「だから、他人の痛みとか、苦しみとか・・・死んだ人の・・・死ぬ寸前の気持ちなんてさぁ、分かるわけないよね。」


________


春視点


お兄ちゃんと会えない一年が続いた。私の心はずっと苦しくして、何度も何度もあの時のことを思い出しては後悔して、後悔するだけで何も出来てない。


「春!!俺と付き合わない??」


「・・・ごめん」


親はお兄ちゃんの行方を教えてくれないし、自分で探しても見つからない。


今、お兄ちゃんはどうしているんだろうか、一人で寂しく、あの人のことを思い出して苦しんでいるのだろうか、それか新しい出会いや友達が出来て救われているのだろうか・・・それとも私への怒りに燃えているか、後悔して会おうと思ってくれているのか。


私はそんなことばかりずっと考えて中学2年生を過ごした。


________


優視点


それから、秋さんへの虐めは減った。悪口を言ったり、わざと弁当を落としたりするようなことをまだしていたが、その度に停学確定でやり返していた。学校側は俺が虐めの証拠を握っているので(拾ったお金で安い録音機を買っていた)退学にすることは出来ずにいた。


やがて、いじめの対象は俺に移った。

「・・・」

教室に入ると、無言で俺のノートを破る秋さんがいる。

安心した。これで、秋さんの虐めは無くなると思ったからだ。



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