第5話 小3 ボッチ

 小学3年生になった


 クラスで離婚の話を聞いた。苗字が変わったようだ。 みんな、その子のことを心配していた。お父さんが居なくて大変だねと、だけど俺は全くそうは思わない。むしろ父親なんて居ない方がいいと思うくらいだった。


ーーーーーーー


 俺は一向に友達は出来ないけど、対して妹は少しずつ友達が出来るようになった。もう妹の方が大人に見えて来た。

 それを本人に言うと

 「お兄ちゃんの方がよっぽど大人だよ」

妹はいつもそう言ってくれる。

 

 俺は決めた。このままじゃ、また恐れられて友達が出来ないまま。それだと妹にも迷惑が掛かるし!だから友達を作る!!


________


だけど、友達は出来なかった。誰も話しかけてくれないし、話しかけて避けられてしまう。


 でも結局、放課後の約束は全てお金探しに使っているし、学校では図書館に行って妹が好きそうな本を探すことに夢中になって居るし・・・と思って自分で自分にそう友達を作らなくて仕方ないと言い訳するようになっていた。


________


運動会だけど、当然うちの親は一回も来ない。みんなは弁当を食べているが、俺たちはこっそり持って来ているお菓子で我慢している。

 運動会をする度に、自分と周りの大人の差に悲しく感じる。 妹もずっと辛そうだ。


 「お兄ちゃん、私たちのお父さんとお母さんはなんで来ないのかな??」


「・・・多分、見ても面白くないからだと思う」


「・・・そうなのかな、」


「うん、」


「でも、みんなのお父さんとお母さん達は楽しそうにカメラ持って応援してるよ」

 妹は羨ましそうにしている。俺も羨ましい。ずっとあんなふうになりたいと思っている。


「そうだね」


「ねぇ、なんで、こんなに私達のお父さんとお母さんって私達に嫌なことばっかりだし、ご飯を食べさせてくれないのかな」


 「自分達のことしか考えてないからだよ」

 そして、妹は俺の服に握りしめて涙を流す。

「・・・私、お父さん嫌い!!お母さんも嫌い!!」

 

「俺もだよ。でも」


「でも?」


「妹は大好き」


「私も、お兄ちゃんは大好き」


 今思うと中々ギザで小3らしくないことを言って居たと思う。だけど、この言葉は既に子供の軽い言葉じゃなくて、深い深い愛情がこもって居た。

________


 友達を作る努力を諦めなかった。色んな人に話しかけた、だが相手にして貰えず、むしろ嫌な目で見られた。段々と話しかけられると不幸が起きるみたいな風潮が出来てもいた。虐めまではいかなかったけど(喧嘩が強いから)孤立は続いた。


でも、最近お金集めはより効率的に進んでいた。貯金も出来て来たし、今度やっと良いものを妹に買ってあげられるかもとワクワクもして居た。


___

 そして、妹の誕生日、俺はやっと妹の欲しいって言っていた物を買ってあげられた100円玉を一気に出した時は店員さん困った顔してたけど・・・


「ありがとう、お兄ちゃん。本当にありがとう。」

 妹はそのプレゼントを大切そうに抱きしめてくれた。


________


 俺は急に話しかけられた。

 そして、初めて遊びに誘われた。 妹にそのことを話すと


 「やっとお兄ちゃんに友達が出来たの!!やったね!お兄ちゃん!!」

 妹はとても喜んでくれた。俺も友達出来て嬉しかったし、何より俺が友達を出来て喜んでくれる妹が見れてもっと嬉しく感じた。


 けど、その遊ぶ約束をして居た日に、その友達は来なかった。

 妹には遊べなかったことを話すと、もしかすると熱が出たのかもと励ましてくれた。

 次の日、その子は登校しており、昨日は大丈夫だったかと聞くと


 「あー、お前ね。一人でずっと待ってて面白かったよ。騙されてるとは気づかずにねー!!」


 ショックだった。友達に騙されたこと、何よりあんなに喜んでくれた妹に申し訳なくて・・・

________

  

「お兄ちゃん、今日はヒロ君達とどんなことを話したの?」


放課後に妹が俺に聞きに来てくれる。


「・・・その、今度どんな遊びをしようかなって」


「へぇー、そうなんだ!!良かったね!!お兄ちゃんにもこれで友達が出来るんだね」


咄嗟に嘘をついてしまった。


______


 そして、バレた。


 「お兄ちゃん、嘘ついたじゃん」

 俺は初めて妹に嘘をついていた。

 「あんなに、心配したのに、やっと出来たと思って嬉しかったのに」

妹は泣いている。

 「ごめん、」


「嘘つき!!お兄ちゃんは私に嘘付かないって思ってたのに」


 「ご、ごめん」


「嘘つきで、友達の居ないお兄ちゃんなんて嫌い!!」


絶望を感じた。ずっと大切で大好きだったな妹に一番言われたくない言葉でそして、嫌いと言うのは、あのクソの親達と一緒に思われてしまったと思った。

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