第2話 5歳 きっかけは何かしら闇がある

いつかの俺視点


珍しく機嫌が良く笑顔な母を見て嫌な予感を感じて居た。


 「勇者、お父さんが出来るのよ」


だけど答えは全くの予想外で・・・

「お父さん??」

 お父さんは出来るものなのだろうか??前に聞いた時は・・・アンタせいで居なくなったのよ!!と叩かれてしまった。


「そうよ!!」 


お父さんが出来ることに少しワクワクして居た。もしかすると優しいお父さんで今の地獄のような生活が変わるかも知れない。ゲームやテレビ、おもちゃも買ってくれるかも知れない。ずっと憧れてた誕生日プレゼントも貰えるかも知れない。


「あー、早くしたいわ」

________

 そして、お父さんと初めて会った時に驚いた。

 「えっ、」

  俺は驚いた。相手は春ちゃんのお父さんだった。

 「うそ??勇者くん??」

今でもその時から妹となる春の顔は鮮明に覚えている。後に聞かされるんだけど、あの時に言おうした言葉はお兄ちゃんになって欲しいだったようで、この時にその願いが思いも寄らない形で叶ったようだ。

 そして、今思うと母親と父親が関係を持ったのは、朝帰りの俺達を迎える時に出会って居たのだろう。考えてみると5歳の後半から俺も春も迎えがかなり遅くなって居たし、タイミングが被っての迎えが多かった。きっと何かしらをしてから迎えに来て居たのだろう。

ーーーーーーーーー

 5歳 

それから、しばらくは平和だった。虐待もされることもない・・・と言うより放置だった。二人は基本部屋でベットの上に居る。食事の時くらいしか一緒に居ない。でも俺達にはとってはそれが一番だ。


 「お兄ちゃん!!」

 春はすっかりこの呼び方に慣れて居た。


 「春、今日は一緒にかるたをやろうか」

保育園で作ったカルタを持って来た。カルタはうるさくて、前までは母親に怒られて居たが、今は怒られなくなった。


 毎日、春と話しをして、遊んで、少し前が嘘のように今が本当に幸せだと感じた。

________


 保育園の友達が兄妹になった私達に話しかけて来るようになった。再婚して兄妹になった俺達が珍しいのだろう。だが、俺達は軽く話をしてすぐに二人になる。保育園に居ても春と居るのが一番だから・・・


 「ねぇ、お兄ちゃん」


「なに?春?」


「お兄ちゃんは私を守る王子様になってよ」


「いいよ。」


「やったー!!」

 春にとってこの時のは初めて告白のつもりのようだったが、当然俺には本当の意味が伝わって無かった。でもこの約束は二人にとっても大切な約束になった。


________

 両親が居ない日のこと


 両親はよく出掛けているのにこの時の犯人もタイミングを狙って居たのだろう。


 「春?」

春はさっきまで一緒に居たのに、トイレに行った後に居なくなってしまった。急いで、家の中を探した。玄関がいつもよりごちゃごちゃしていることに気がついた。急いで扉を開けた。春のさらわれる姿を見つけた。「ゆかぁー!!ゆかぁー!!」春は口を縛られている。

 恐怖で一瞬だけ体が動かなかったが、すぐに動かないと春が助けられないことに気づいた。

 そして、考える。どうすればいいかと。俺は前は散々母親に攻撃されて、大人には敵わらないことをよく知っている、だからこのまま追いかけても意味がないと分かって居た。


 まず、母親の言葉を思い出す。

 もし何かあっても、私を頼るんじゃないわよ。


 クソォ!!怒っても春は助からないし、すぐに別なことを考えた。

 手当たり次第、近所の人に頼み込んだ。通報を直ぐにしてくれて、警察はすぐに動いてくれた。

 そして、登園中に通った怖い道を思い出す。そこを目指した。

____

 そして予想は当たり、春が居た。けれど大人には勝てないことがよく分かってる。


 「はぁ、はぁはぁ」

 それに、もう走りすぎて体力の限界だった。

 

「春!!」


「お兄ちゃん!!」

とりあえず軽く安心した。何かされてた訳じゃなそうでとりあえず安心した。


「なんだ、ガキか??ぁああの家の小僧か」

 怖かった。けど春のために頑張らないといけないし、警察も来てくれる筈だと信じる。


「は・・・春を離せ!!」


「ふん、ガキがヒーローごっこか??」

 ヒーローごっこ・・・春とも何回もしたけど、この時はヒーローじゃなくて、弱い子どもだと思っていた。もしヒーローみたいに変身をしたり、力があったらとっくにしている。


 「おらぁー!!大人を舐めるんじゃねぇぞ、ガキ」

後に思うが、俺はとっくに煽って居たわけではない。子どもにただ離せと言われただけで怒るこの犯人は相当頭がおかしかったのだろう。

そんな頭のお陰で、完全に油断して居た犯人は容赦なくまだ対して投げる力もない俺に近距離で石ころを救助にぶつけられて居た。


「いてぇー!!」


 「お兄ちゃん!!!」


 「このガキ絶対にボコす」


そして、痛がっているうちに


「うぁー!!」

 今度は頭突きをした。


 「いてぇ!!って、うぉ、やめろ!!痛い!!やめろ!!」

止めてはいけない。ここで止めたら俺は負けてしまう。頑張っても大人には力で勝てないのだ。こうやって弱点をつかないと春も俺も助からない


 「お兄ちゃん!!」

妹は縛られてる。早く助けてあげたい・・・けど俺は警察が来るまで頭突きを止めなかった。


 


 流石にやり過ぎだったかもと思ったけど、俺はまだ小学生になってない子どもだし、命掛けだっし、妹を守る為だったから仕方ないよなぁ。


 

 そして警察がやって来た。 俺達は保護された。


 「お兄ちゃん!!ありがとう!!ありがとう!!」


「良かった。良かったよ!!」

 心の底から喜んだが、当然これで問題は終わらず、あのクソ親達に話が届いてしまった。これが新たな地獄の始まりだった。

______

 面倒ごとを起こしたことに非常に理不尽に怒られたが、その後5歳児が犯罪者を懲らしめたことがとても話題になった。ネットで話題になり、親も俺達には散々怒った癖に親も平気で俺達のことを褒めたような動画を撮ったりして、流行りそのお陰で大金が入って来た。勿論俺達は一切使わせて貰えなかった。そして、両親は家にもっと家に帰らなくなった。最初は嬉しかったが、一日中空けることが当たり前のようになり、俺達の食事のことも忘れている。


 「お兄ちゃん、お腹すいたよ」

「とりあえず、これ食べていいよ」

「でも、それってお兄ちゃんのじゃないの??」

「俺は前に沢山食べたから、大丈夫」

「・・・うん」


 この時俺達は当然知らなかったのだが、父親はお金を平気で風俗などに使っており、母親にバレてしまったが、母親も母親でホストに使っていたことがバレてしまった。

____

 両親は喧嘩をすることが増えた。俺達の平和だった時間は無くなってしまった。たまに親が投げたものが飛んでくることがあり、妹だけはお兄ちゃんだし守らないと思い必死に体を張って守った。

 

 リモコンが当たる。痛かったけど、腕だったし、春に当たらずに済んだ。

 「お兄ちゃん!!私を守って、そんな」


「良いよ。春が無事でよかったよ!!それよりも、あっちで布団被ってよ。その方が安心だよ」


「うん」



布団に入ると春は我慢して居たことが吐き出すように泣いてしまう。


 「私のせいで、お兄ちゃんがお兄ちゃんが」


「いいよ。俺は春が無事で良かったよ。」


「でも、でも」


「・・・静かにしないと叩かれるよ」


「・・・グッス、でも、でも涙も止まらなくて」


「大丈夫、俺が顔を抑えるから。」

 妹の音がそとにもれないように顔を包み隠すように抱きしめる。


 「・・・ぐすっありがとう、お兄ちゃん」


 それから、少ししたが妹は泣き止まない。俺的には泣き止まなくても、別に良いんだけど。親にバレてる大変だし・・・


 考える、どうすれば泣き止んでくれるか



『お兄ちゃんは私を守る王子様になってよ』


「お姫様。」


「・・・お兄ちゃん」


「お姫様は私がお守りしますね」


「え、でも」


前に二人で一緒に読んだ絵本を思い出す。


「俺は姫を守る王子です」


「・・・私のことを守ってください。王子様」


「喜んで」


妹は涙を流しながら笑顔になってくれた。


この時初めて


「かわいい」


思わずそんな言葉が溢れた。


「・・・本当に??」


「うん、」


「ありがとう・・・お兄ちゃん大好き」


この瞬間に俺は本当に絵本のように姫様を妹を守ろうと誓った。


「俺もだよ」


________


両親は喧嘩をよくしている。対して俺達は仲が良い。卒園まで全然友達も出来なかったけど、春と一緒になれたし保育園の先生達も良かったから楽しい保育園だったと思った。


卒園式には俺達だけ両親はやって来なくて終わってから迎えに来た。


一言も保育園はどうだったとか?小学生の話もしなかった。ランドセルや筆箱のリクエストは聞いて貰えず、気付いた買ってもらって居た。


・・・その時の中古の傷がすでに沢山ある筆箱とランドセルは卒業まで使い続けることになる。


「お兄ちゃん、小学校楽しみだね」


「うん!!」


小学校は勉強する所だとしか分からなかったが、春と居られるなら楽しみだった。



小学校編

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