第2話
「すみませんが、登録はできません」
ギルドの受付の人にそう言われた。
王都から離れた街にあるギルドを訪れた俺は受付で冒険者登録をしようしたが、そんなことを言われてしまった。
は?何言ってるんだこの人は。
理解できないんだけど。
冒険者登録ができないだと?
「なんでですか?最低限の要件は満たしていますよ」
誰でも冒険者登録をすることはできるが、最低限の条件として年齢制限がある。子供が冒険者になるのもさせるのも防ぐためだ。
俺はその条件は余裕で満たしているぞ。
「要件を満たしていないと思ってるんですか」
「いえ。それについては何ら問題なく満たしています」
「だったら登録できるじゃないですか」
「しかし、一つ問題があるんです」
「問題?」
「マーチ=アステルさん。あなたは元王国に仕えていた騎士でしたよね」
「そうですけど」
「すみません。元王国の騎士は冒険者になることはできないんです」
何?
そんなこと聞いたことないぞ。
「でも元騎士の冒険者はいるんじゃないんですか」
「いるにはいます」
「だったら俺だって……」
「昔の話なんですよ」
「昔の話?」
「最近、騎士の立場にいた人間は冒険者の登録はできないという国王命令が出されまして」
なんだよそれ。聞いたことないぞ、そんな命令。
「いつからですか」
そんな命令が出されたなんてこと聞いたことない。
王宮の中にいたのなら絶対に耳に入ってくるはずなのに。
耳に入れないようにしたってのか。
「ほんの数日前です」
数日前だと。
数日前と言ったら俺が王都を出た日じゃないのか?
まさか、俺の耳に入らないようにしたってのか。
そんなことあるのか?
「どう言う理由ですか?」
俺は恐る恐る尋ねた。
「恐らくですけど、実力のある人が冒険者の方に流れてしまって、王宮の方や貴族の方に回ってこないと言うのを防ぎたいんだと思いますよ。それに王国に仕えていた騎士が冒険者になると言うのはどうしても王国のイメージを損なうことになりますから」
「何それ…………」
「後、多分ですけど。あなたが冒険者になることで元騎士の冒険者が自分の取り分を奪われるのを防ぎたかったんだと思いますよ。元騎士の冒険者と王宮はかなりズブズブな部分もありますから」
「なんで。そんなことあるのかよ」
「そういう方々は裏の仕事で暗殺もされるんです。それをする代わりに自分の取り分を保護してもらうんだと思います。昔は元騎士の人が結構冒険者になられていましたが、ここ数年でぴたりといなくなってしまいましたから………
そんなことあるかよ。
既得権益のせいで俺は冒険者になれないだと
「冒険者になれないってかよ…………」
「申し訳ありません」
今すぐここで暴れ回りたい気持ちをグッと抑える。
「わかりました」
それだけを口にして、受付の人に軽く会釈した。
絶望した俺は冒険者ギルドを去るしかなかった。
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