第109話 アツサもいろいろ
21xx年x月xx日(水) 天候:曇り後晴れ
山の紅葉が目立つようになってきた。ようやく、日本にも四季が戻ってきた。あと、1ヶ月もすると、ここ北の大地にも雪が降るはず。
あれから10年が経過した。
気温が下がり、天候が追いついて来ると、低緯度の土地も復活し、人間や動物の居住区も増えだした。
今は、地球連合政府がすべてを管理しているので、昔のような国によって経済の発展に差が出るようなことはない。どこで、生活していても幸せな毎日を送れる。
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※ここで、僕は極秘事項をこの日誌に記録しておこうと思う。この部分は、3次元バーコード処理でパスワードを掛けるので、誰にも見られることはない。
僕は、最初から分かっていた。
気が付いたのは、指紋認証の話が出た時、
たぶん、ミナちゃんは、知っていたんだと思う。
僕が気付いたのは、コロナのしゃべり方だった。あれだけ、文末に“です”を付けていたのに、あの後からは、まったく普通に喋っていた。
まあ、そのお陰で、コロナも家事全般(料理も)が出来るようになったし、何より助かったのはミナちゃんだろう。
あの戦いの後も、ミナちゃんは研究を続けた。くじけそうになった時は、必ずコロナに電話が掛かってきていた。
たぶん、フレアと話していたんじゃないかな………。
それでも、ミナちゃんは、地球連合政府に参加して、回復する地球環境保全に努めるようになった。今じゃ、立派な環境保全特務課主任課長だ。
ところが、湖路奈の中の“コロナ”と“フレア”は、次第に融合していった。今までは、別々に出現して、記憶の共有も少なかったが、次第にコロナは、それまでのフレアの記憶もすべて、上書きされていった。上書きというより、統合と言った方がいいかもしれない。
だから、今のコロナは、コロナなんだけど、フレアと同じことがすべて出来るようになった。
実際、これはどういうシステムなのかは、僕にはわからない。ただ、きっと布礼愛は、これを望んでいたんだと思う。
※ここまでが極秘
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「……あなた!晩ご飯ができたわよ……」
あ、妻が呼んでる。なんせ、妻は忙しくて、日曜日の晩ご飯だけが家族で共有できる時間なんだ。
「ああ、今日は、カレーライスだね!ミナちゃんのカレーは絶品だからね……いっただきまーーす!」
「もう、あなたったら、慌てると噎せるわよ!……セッカチなんだから…………そんなに急がなくても、もうすぐ一緒に生活できるからね」
そうなんだ、もうすぐ妻は産休に入るんだ。その後は、しばらく育休をとろうって相談したんだ。僕は、自分の研究所だから、好きな時に休めるけど、地球連合政府となるとそうもいかないもんな。
そう、僕は
ピロロロロ……ピロロロロ……ピロロロロ
「はい、もしもし」
『あ、ウチ、コロナ。博士!明日の月曜日は、ウチお休みもらっても、いいかな?』
「え?コロナ、また、休むの?」
『いいじゃん、博士!ウチは、今、大事なところヨ………愛しのマグマ君が、デートしようって言うんだもん!』
「ま、仕方ないな。コロナ、気を付けて行ってこいよ!」
『分かったよ!それじゃな!』
ガチャッ!
「コロナは、明日、デートだってさ!」
「え!いいわねー。マグマ君とうまくいってるのね!良かったわ!」
実は、コロナがミナちゃんの気持ちを分かって、僕との差し渡しをしてくれたんだ。コロナが僕のことが好きで、構ってくれないと最初怒っていたのは知ってるんだ。
でも、コロナのことを考えると、やっぱり歳をとってしまう僕よりももっと相応しい相手を見つけてあげたいなって思ったんだ。
そんなことを考えていたら、先日あの“地球戦艦マグマ”のメインコンピュータが、暴走しだしたんだ。まあ、暴走っていっても、恋煩いになったんだけど。
何が何でも、コロナと話がしたいって、言うことを聞かなくなったんだ。
それで、僕は、戦艦マグマのメインコンピュータのAiをカートリッジ式にして、新しいアンドロイドに組み込んだんだ。
仕事の時は地球戦艦として働き、非番の時はアンドロイドのマグマとして、行動できるようになった。
すると、マグマはすぐにコロナに交際を申し込んだんだ。僕は、びっくりしたけど、コロナも満更でもないようだった。これは、コロナの電気回路の電圧やAiの電極波形にもしっかり現れているから間違いないみたいなんだ。
それで、僕もミナちゃんも、今はコロナの恋を応援することにしたんだよね。
10年経って、地球の暑さは収まってきたけど、恋の熱は相変わらず高いかもね!
★記録者:夏野 太陽(研究室長……現在は博士になった)
【地球観測日誌はつづく】
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