第87話 4階の研究室

~~これは、地球が爽やかさを取り戻した勇敢な人達の記憶である~~




「ほらっ!アッツ、起きてよ……起きなさいってば!《ゴン!🤛》」

「痛ってーーえ?……あれ?……俺、何かしたか?」

「起きた?アッツ!」

「お、おおー…………ところでマナ?何、今の拳骨?」

「さっきの返しよ!……そんな細かいこと気にしないで、さっさと付いて来て!」


「へーーい……マナさま~」



 とりあえず、みんなを引き連れて夏野なつのキャップのところに向かうことにしたの!

 

 とは言っても、校長室こそ離れているけど、地温研の部室も夏野キャップの研究室もすべてこの虹ノ森高校の4階にあるのよね。


 校長先生とシーセンセは、校長室から引っ張って来たけど、部室で寝ていたアッツを起こした時に、「どこ行くの?」って、ミー先輩が聞いて来たので、面倒くさいから一緒に連れて来ちゃった!

 まあ、夏野キャップには、上手いこと言って誤魔化すから大丈夫!




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 コンコンコン!


「夏野キャップいますか~?」


「おう!マナちゃんか…………それにみんなも、まあ、入ってくれ」


「おじゃましま~す!…………キャップ、ちょっと相談したいことがあって……」


「んー。実は、僕も君達に相談……と、言うか……お願いと言うか……協力してほしいことがあってな…………」



 おや?夏野キャップも何かあるんだ!……こりゃ、先にそっちの話を聞いた方が、いいような気がして来たぞ。うまくいけば、こっちから相談のお願いしなくても、上手くいい考えがもらえるかもしれないし……。


「それじゃあ、キャップの話を聞きますよ……丁度みんなを連れて来たんだから、いいでしょ!」


「よし、それじゃあ、隣の大ホールに行こう!……あそこで、ちょっと説明したいことがあるんだ!」








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「うしょおおーーー!やっぱり、この部屋は凄いや…………壁一面のモニターに世界各地の気象情報が映し出されてるもんな」


 まったく、アッツは子どもみたいに燥いじゃって!どうして、男の子って、こんな秘密基地みたいのが好きなのかしらね!

 あたしなら、もうちょっと飾り付けとかして、可愛いお部屋を作るのにな……


 ま、そっか……この部屋をデザインしたのが、夏野キャップだし、お金を出したのがあっちょんだからな……秘密基地になるのは、仕方ないのかなあ。



「ところで、夏野所長……お話って、いったいなんですか?」



 おや、ミー先輩が食いついてきたぞ!さっきまで、黙ってPCの画面と睨めっこしていたのに…………ただ、相変わらず沈着冷静なんだよね~…………その笑み一つない冷たい話し方もいいんだなあ~




「そうだな!…………実は、“氷の結晶”の必要個数が満たされたんだ!」


「え?どういうことですか?所長!」


 真っ先に、椅子から立ち上がり、反応を見せたのが、ミー先輩だった。あの冷静な上杉南中子うえすぎ みなこの普段からは、考えられないような反応だった。




「うん、だから…………これで、地球を冷やす道具が手に入ったということなんだ!」


「じ、じゃあ…………これで、地球は冷えるんですね!」


 久しぶりに笑顔を見たような気がした。ミー先輩が、あんなに嬉しそうな顔をするなんて、よっぽど嬉しいのかなあ。




「ただ、次に進むには、問題があるんだ…………」





(つづく)

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