第85話 困った奴

~~これは、地球が爽やかさを取り戻した勇敢な人達の記憶である~~




「う~ん?マナちゅぁ~ん?何か用なかぁ~?」



 ゲッ?どうした?アッツ……いつにも増して、べっとりしてそうな気がするんだけど?



「アッツ!何、変な声出してんだよ!」

「あ!ひっどい~マナちゅぁ~んったらああ~…………ボクチャンね~今、最高な気分なのよ~」

「え?いいから、普通に喋れって、アッツ!」



「うーもー!

 ……だってね、今、シーセンセを尋ねて校長室へ行ったの!

 ……そしたら、とっても美味しいチョコね、食べちゃったの……えへっ!」


「で?……なんでそんなに喜んでんの?」


「だってさ、最近“地温研”では、オヤツ全然食べないじゃん!

 ……実は、俺もあのオヤツタイムを楽しみにしてたのにさ!

 …………ううう……ヒックヒック……」



「おまえ、泣くなよ!そんな事で!

 ……全くアッツってば……?…?クンクン?…クンクン?……あれ、おまえ、チョコ食べたって言ってたよね!」




「うん、美味しかったよ!ちっちゃい、ボトルのような形をしたチョコなんだ!

 ……一口齧るとね、中からトロッと甘い蜜のような液体が出てくるんだよ!

 ……ちょっとピリッて、舌に刺激があるけど、じわああっとなんとも言えない良い匂いが広がるんだよね

 …………あんまり美味しいから、オレね、一箱全部食べちゃった!えへっ!」



「“えへっ!”じゃないよ、アッツ、それ……ウィスキーチョコだよ!……お酒だよ!お酒!」



「えーーー?そうなの?

 ……でも、美味しかったニャアアアア……グー……スー……スー……」





「アッツ!アッツ!…………こいつ、寝ちまいやがったよ!まったく、もー」



 とにかく、アッツが気にするくらい、この“地温研”の日常が変わったのは、やっぱり部長であるミー先輩が変わったからなんだ!

 このままだったら、“地温研”は、バラバラになっちゃう!折角、BEL(ブルー・アース・ラボ)として頑張らないといけないのに、あたし達がこんなじゃダメよ!


 こうなったら、シーセンセに相談してみようかな?


 それにしても、アッツの奴、一人でそんな美味しいチョコ食べやがって、モー。目が覚めたら拳骨🤛お見舞いしてやるからね!


 シーセンセ~あたしも食べたい~










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はい、あっちょん!あーーーん💖」

「パクッ!……モグモグ……うーん、美味しいよ!これは、ラム酒チョコかな?」


「はい、せーかい!……もーさっきのブランデーチョコね、熱太郎ちゃんがぜーんぶ食べちゃったのよね!

 あの子、何しに来たのかしらねえ~なんか、相談があるとか言ってたけど……」


「ま、いいさ!男の子は、チョコが好きなんだよ…………僕もだけどね!むっちょん!」

「ま!はーい、あーーん!」




 ドンドンドン……ドンドンドン……



「あら!また、誰か来たわ…………はーい、ど~ぞ!」




「あ!やっぱり!シーセンセったら…………いただきます!モグモグ…………うひゃあああ、これは美味しいですね!……モグモグ……モグモグ……」



「ちょちょちょ……マナちゃん、マナちゃん……あんまり食べると、酔っちゃうわよ!熱太郎ちゃんみたいに!」



は!……イケないわ!あたしったら!


 アッツみたいに、醜態を晒すとこだったわ…………それにしても、シーセンセったら、校長室でこんな“楽しい事”して、モー大人ったら…………羨ましい!



「丁度よかったわ!校長先生もいるから、一緒に相談に乗ってください!」


「まあ、ここは校長室だから、僕が居るのが当たり前なんだけど、マナちゃんは誰を目当てにここに来たのかな?」


「そんなの決まってるじゃないですか?……美味しいオヤツですよ!オヤツ!」


「へ?オヤツ?」



「そうそう、ここへ来れば美味しいオヤツが食べられるって…………知ってるんですよ!」


「あれ?むっちょん?……誰かな、そんな情報流したの……」


「あははは……いいじゃありませんか……生徒が校長室へ来るのを楽しみにしてるんですよ……あはははは」


「まあ、そうだね!むっちょんが言うんだから、間違いないよね!」




 ふっ……チョロいわ!校長先生!

 ……これで、校長室のお菓子は、あたし達のものよね!

 当分、ミー先輩がオヤツタイムにしなくても、あたし達は生き延びられるわ!あはははははは



 って、こんなこと考えてる場合じゃないのよね!



「シーセンセ、校長先生……大変なんです!南中子みなこ部長が…………」



(つづく)

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