第82話 生還

~~これは、地球を救うために手を繋ぎ合う仲間達の物語である~~




「…………う……うう……こ、ここは…………」



「ミー先輩!ミー先輩……ううっ!ふぇっ!……エエエ~……よかったああ~」

「部長!……分かりますか!」



「ああ、アッツ?……マナ?……み、みんあ……」



「気が付いた?よかったわ!……南中子みなこちゃあああ~~ん」



「センセ…………何……泣いてるんですか?」



南中子みなこ君……よく頑張ったな!ありがとう!」



「キャップ?……どうして?…………あ!みんなは?あの職人さん達は?」



「落ち着くんだ、南中子みなこ君。君は、3日も眠っていたんだから。

 …………君のお陰で、1号店の職人からウィルスが抜けると、全ての職人は消えてしまったよ。まあ、消えたというより、もとに戻ったんだな…………無事解決したんだ…………」



 しかし、夏野なつのキャップの声は、少し沈んでいた。事件が解決したのなら、いつものように能天気に騒ぎ立てても良さそうなものなのに。

 ベッドに横たわりながら、違和感を覚えながらも、上杉南中子うえすぎ みなこは周りを見渡した。


 

 彼女は、心配して駆け付けたであろう厚着あつぎ校長や剛毛ごうもう教頭、真黒まぐろ事務長の姿も見つけることができた。自分があの戦いの最後に全エネルギーを使い果たし、その場に倒れ、3日間も眠り続けたのだと理解した。


 最後まで目覚めかった自分のことをみんながどれだけ心配してくれたかを想像し、少し胸が痛くなった。



 もう一度、ベッドの上から周りを見渡した。ここは、学校の4階に設置された温暖研究室の医務室だった。彼女のベッドの周りには、ずうっと見守り続けたみんなの顔があった。





「すまなかった……僕がもう少し早く駆け付けることができれば…………」


「何を言ってんですか!

 キャップが、急いで準備してくれたグリーンの強化装備のお陰で、俺達は助かったんです!…………それに、最後にキャップが持って来てくれた、予備バッテリーがあったから、俺達は死なずに済んだんです」


「そうだよ、アッツの言う通りなんだ。コ、コ、コロナちゃんが……助けてくれたんだよ………」





「…………そう言えば…………コロナは?コロナちゃんはどこ?」


 ベッドの上で、上体を起こして、周りを探す南中子だったが、湖路奈の姿を見つけることができなかった。





「ああ、南中子みなこ君……………………湖路奈ころなは…………」


 夏野なつのキャップは、静かに首を回し、壁越しに隣の部屋に視線を送るのだった。




(つづく)

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