第81話 傷だらけの勝利

~~これは、地球を救うために手を繋ぎ合う仲間達の物語である~~





「こ・ろ・なあああああああああーーーーーーー!」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「しっかりして!湖路奈ころな

 ……今、あなたに倒れられたら、私達にはどうすることもできないのよ!………お、おね……が……い…………….·´¯`(>▂<)´¯`·. 」








 しかし、湖路奈も沈黙してしまった。







 煎餅職人せんべいしょくにんの集団は、ただ一人残された上杉南中子うえすぎみなこ目掛けて迫って来たのだ。









『……ミナ……ミナ……しっかりしなさい!』







 南中子みなこが、諦めかけた時、微かに彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。




「だれ?……誰なの?」




『…………今、あなたが倒れたら、誰が地球をもとに戻すの?…………ミナ!あなたは、ずうーっと頑張って来たわ!お姉ちゃんは知ってるわ!……あなたなら、絶対できるって!』




「え?……お姉ちゃん?……布礼愛ふれあお姉ちゃんなの?」




『もう少しよ!さあ、立ち上がって!ミナ!』




 南中子みなこは、握り締めた湖路奈ころなの手から、力強い励ましを感じたような気がして、思わず顔を上げ前を見た。

 そこには、ゆっくりと自分を見つめ、微笑む姉、布礼愛ふれあの顔があった。


 

「お、お姉ちゃん!…………」


 南中子は、全身に力が蘇り、姉の手を頼りに再び立ち上がることができた。



『ミナ!思い出すのよ…………誰が、これだけの職人を集めたの?……核になっているのは誰?』



「あ!そうか…………お姉ちゃん、分かったわ!そうね、1号店の職人さんね…………私、やってみるわ!」



『頑張って!あなたなら、きっとできるから…………』





 南中子は、姉の手を離し、しっかりと前を見て体制を整えた。




「オンダンファイブ・オールスキャン・サアーーチ!」


 ブルーの眼鏡から放たれる青い光線は、部屋中に散会する煎餅職人を隈なく照らした。





 ブッブーー……ブッブーー……ブッブプ―……


 ブルーの光線は、ある一人の職人を照らした時、真っ赤な蛍光色になり、サーチブザーも鳴り響いた。




「あなたが、そうなのね!……待ってね、今、楽にしてあげるから!」



≪オンダンブルー・メガトン・アタッーーーーク!≫


 ブルーの両手からは、蛍光色に光り輝く真っ青な空色の光線が放たれ、1号店の煎餅職人に命中した。



「ウワアアアアアアアーーーー」


 1号店の職人は、店中に響く叫び声を上げたが、間もなく微笑みながらその場に倒れ込んだ。


「…………あ、あり…が…………とう………」


 彼は、倒れる間際、本当に小さな声で、そう言うと……体中から醤油色の煙が立ち上り、気を失ってしまった。


 次の瞬間、あれだけ周りにいた煎餅職人は、跡形もなく消えてしまった。




 後に残ったのは、10個目の“氷の結晶”と、倒れて気を失っている5人のオンダンVだけだった。

 最後の力を振り絞ったブルーでさえ、その場に突っ伏してしまっていた。









  ≪バン!≫



 まもなく、店の戸が勢いよく開けられた。



「しまった!遅かったか!……………」



(つづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る