第80話 灼熱の戦い!

~~これは、地球を救うために手を繋ぎ合う仲間達の物語である~~




「……何か……何か方法は…………ウゥゥゥゥゥ…………もう、もう少し……もう少し耐えれば…………」


 辛うじて踏ん張っている右足の膝も、もう灼熱の熱風には耐えられなくなってきている。意識が朦朧もうろうとして、床に両手を付いてしまったブルーには、もう残された手段は無くなってしまった。





 床に付いた手からも力が抜け、倒れそうになった時、ブルーに詰め寄る煎餅職人せんべいしょくにんの後ろから、あの懐かしい声が響いてきた。




「ブルー、ゴメン!待たせたわ!…………レ~ッド・スクリュー・ウィンドウ~」


 オンダンレッドの両手から放たれた凄まじい旋風つむじかぜは、ブルーに迫りつつあった煎餅職人達をまとめて蹴散けちらしてくれた。



「ブルー大丈夫!しっかりして!」


 ブルーを抱きかかえたレッドは、必死の形相で呼び掛けた。


「センセ…………遅いよ………」


 力なく笑って答えたブルーの体からは、力が抜けてしまった。


「グーリン!早く!……急速冷却きゅうそくれいきゃくとエネルギーチャージだ!」


「了解の事です!」


 グリーンの両手から放たれた冷風は、瞬く間にブルーを包み込み、冷房空間のバリアを作った。それから、空間接触くうかんせっしょくにより触れずともオンダンコスチュームの急速充電が始まったのだった。



「この灼熱地獄で戦うためには、このグリーンの改造が必須だったんだ!夏野キャップは、急いでくれたんだけど………本当にゴメン!君にばかり、苦労を掛けたな!」



「だ、大丈夫よ…………それより、ピンクとイエローが…………」


「ああ、分かってる……彼らも今、助けるから」





「充電完了!冷房空間もこのまま維持可能!の事です」


「よし、グリーン!次は、ピンクとイエローを助けるぞ!……照準セット!目標、右前方10メートル!……冷空ショックキャノン発射よーーい!…………発射!」



 ズッキュウウーーーーーウン!……………ドッパアアアーーーン!












「……フウウーーーウ……ん?…ん?…………ここは?」


「気が付いたか?イエロー!」


「あ、レッド!助けてくれたんだね!……ピンク!ピンク!起きろ!」


「ああ?あ!あああああ!…………みんな!…………ゴメン……あたしが煎餅に気をとられて………」






「大丈夫だ!……さあ、行くぞ!」


 まだ、回復が十分でないブルーこと上杉南中子うえすぎ みなこを、壁際に座らせたまま、他の4人は煎餅職人を倒すために、この煎餅焼きの炭が燃え滾る灼熱地獄の部屋で、後から後から湧いてくる職人達と戦った。


 向かっては来るが、職人達も自分の意志で戦っているわけではないことをオンダンVのみんなは良く知っている。だから、どうしても全力で叩きのめす訳にはいかない。






 グリーンが新しく装備してもらった、冷空砲や冷空遮断幕を使うも、多くの煎餅職人の動きを止める訳にはいかなかった。

 水を使って炭火を消すことも考えたが、どう見てもこの燃え盛る炭火に水を掛けると、水蒸気爆発が起きそうだった。

 この灼熱地獄を止める方法が見つからないまま、戦闘が長引いてしまった。







 

「グリーン!オンダンコスチュームの充電が無くなるわ!」


 この灼熱地獄の中で、戦うにはコスチュームの冷却効果を最大にしないと動きがとれない。しかし、そうすればエネルギーの消耗も早くなってしまうのである。



「みんな、空間充電をするから、右胸のスイッチを押してくださいの事です!」


「「「りょーーーかい!」」」


「空間充電スウィッチ・オーーーーン!」



「おおおーー冷却効果がまた戻ってきたぞーー!」

「よし、これでまだ頑張れるな!」





「みんな、危ない!伏せて―――――!」


 レッドの叫びも空しく、レッド・ピンク・イエロー・グリーンは、煎餅職人の醤油ウオッシャー攻撃を食らってしまった。


 全身醤油まみれ。


 この特殊な醤油は、オンダンコスチュームの冷却機能を完全に停止させてしまった。醤油が、コスチュームの外気吸入口を塞ぎ、冷却システムを制御する回路をショートさせてしまったのある。



「……ウ、ゥゥ、ウわああああああーーーー」


 冷却システムが壊れたコスチュームの中は、温度が急上昇し、彼女達の体からは滝のように汗が噴き出してきた。


「こ、これ、では……ウ、動けない!」


「ピンク!ピンク!……マナーーーー!」


 オンダンピンクが倒れた。


 レッドも意識が切れそうになっていた。


 イエローがピンクを助け起こすが、彼ももう動けない。





 グリーンは、他の戦士に充電をしたために、自らの電源が切れかけている。

最後の力を振り絞って、ブルーのもとへ這って向かっていた。

残ったエネルギーをブルーに託そうというのか、脇目も振らず這っていった。



「グリーン!もういい、ヤメテーー!」


 南中子は、必死で向かってくるグリーン……湖路奈ころなに向かって叫んだ!


「あなたは、もう十分戦ったわ!もうやめて!」


 それでも、湖路奈ころな南中子みなこを目指して這いずっていた。




 壁際に居た南中子も、膝を立て、手を前に伸ばして向かってくる湖路奈を掴もうと必死になった。



 手の届くまでの距離になった時、湖路奈は黙って、南中子の手を握り、その場でうつ伏せになって動かなくなってしまった。

 しかし、湖路奈の手だけは、力強く南中子の手を握りしめ、離れる気配はなかった。



「こ・ろ・なあああああああああーーーーーーー!」



 ありったけの声を出して南中子みなこは呼んだが、湖路奈ころなはピクリとも動かなかった。






(つづく)

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