第76話 予期せぬ災い

~~これは、地球を救うために手を繋ぎ合う仲間達の物語である~~




 虹ノ森高校に“ブルー・アース・ラボ(BELベル)”が完成してからは、南中子みなこ達の放課後も多少は変化してきた。

 放課後BELベルに行くと、そこには夏野なつのキャップと湖路奈ころな助手が、いつも作業をしていた。



 彼らは、3つある研究室の一つに大掛かりなシステム配電盤を取り付けていた。




「こんにちは!キャップ。だいぶ作業は進んだの?」


「ん?あー、南中子みなこちゃんか……授業は終わったのかい?

…………見ての通りだ。ようやく、基本的な基盤を繋いだだけなんだ。先は、長いよなあ~」



 10畳ぐらいの部屋は、全て壁で囲まれていた。

 その一面に、今は、カラフルな配線が、所狭しと飛び出している。

 所長と湖路奈は、その1本1本を丁寧に取り付ける機器と接続しているのである。




「まあ、今は僕達に任せておいてくれ!」



 複雑な機器のセッティングは、所長達だけで行っていた。南中子達は、今までと同じように“同好会”の活動を続けていた。

ただし、もう同好会ではなく、歴とした部活に昇格しているのだが……。



「ミー部長―…………遅くなりました~」


 3つの研究室の1つは、南中子達の部室に当てられている。南中子みなこ真夏美まなみ熱太郎あたろう達の部室だ。

 大抵の場合、胸山むなやま先生も来ているが…………。



 もう、顧問では無くなったが、逆に校長先生との連絡係として、なぜか偉くなったような感じがする。その証拠に、胸山先生は、自分に自信をもったせいで、もうあのオドオドした様子は見られない。




「ミー部長、今日はこれで行きましょうか?」

「おー、それは懐かしいなあー」

「マナ、何だよそれ?」

「あれ?アッツもいるの?」

「俺だって、地温研ちおんけんだ!仲間に入れろや!」


「もー、冗談だってば!……はい、アッツには、この大きいのをあげる!」

「うっほーーい!……おい、知ってっか?この“○タ○タ焼き煎餅せんべえ”は、本当はすっごく硬いんだぜ!」

「え!そうなの?……でも、今は、こんなにヘロヘロよ!……でも、あたしは、このヘロヘロさがたまんないのよね!」


「まあな、今は、この冷水ミストのお陰で、どんな煎餅も硬さを維持するのは無理なんだ。だけど、歯の弱いお年寄りには、好評なんだよ。“冷水ミスト”のお陰で、“煎餅が食べやすい”って!」


「わー、ミー先輩、物知り―!」

「そっか?……」




 いつの時代でも、煎餅だけは作り続けられ、伝統は守られていた。




「って!俺らの活動って、なんかいつもオヤツばかり食べてる活動なんだけど、こんなんでいいんですか?部長?」



「気にするな、アッツ!私達には、私達の出番があるんだ。……今は、まだその時じゃないだけだ…………」


「そうよ、アッツ!……はい、あーーーん!」

「ああっぐふ……お前、煎餅を人の口に突っ込むなよ!」
















 ダダダダダダ……ドドドドド……ドン・ドン・ドン・



「〔バン!〕……た、大変よ!みんな!」

「どうしたんですか?シーセンセ?」


「町の商店街が、全て手焼き煎餅屋さんになってしまってたわ!どの店も、みんな店で煎餅を焼いているのよ!」



「わああ、嬉しいな。いろんな煎餅が食べられるんですね!」

「マナ!何馬鹿なこと言ってんの!……一大事じゃない!」

「ええ?どうしてですか?ミー先輩だって、煎餅好きじゃないですか?」



「マナ、よく考えてみろよ!煎餅は、火であぶって焼くんだ!火だぞ!」

「あ!そっか!商店街が全部で、煎餅を焼いたら…………」

「そうだ、あの商店街は、灼熱地獄になってしまうんだ!」



「うーー、アッツにしては、よく気が付いたわね…………」

「どうだマナ!見直したか?最近、俺は自分の家で手作り煎餅に凝っててな………………お陰で、ウチの台所は、灼熱地獄なんだ~よ~~ウエエエン!」



「アッツ?…………お前、何やってんの?ふふっ(= ̄ω ̄=)」





「いいから、ホラ!さあ、私達の出番よ!胸山センセ、コロナちゃんにも知らせてください!………私達は、先に商店街へ行ってます!」




「了解したわ!上杉部長!」



(つづく)

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