第73話 大きな拍手

~~これは、地球を救うために手を繋ぎ合う仲間達の物語である~~




「みなさん、お集りいただきありがとうございます」


 校舎4階の大ホールの正面に立って、「ブルー・アース・ラボ(BELベル)」の研究室長(キャップ)として初めて挨拶をした夏野太陽なつの たいようは、幾分緊張していた。





 バレーボールコートほどの広さを有する大ホールには、元地温研同好会の部員や顧問、それに温暖化研究所の助手という“オンダンV(ファイブ)”の面々の他、このBEL発足の立役者である厚着校長や陰ながら奔走してくれた剛毛ごうもう教頭と真黒まぐろ事務長が真剣な眼差して列席していた。





 しかし、このBEL発足を心待ちにしていたのは、世界各地の研究支部のみんなだった。すべての研究支部員は、このBELに集いたいのを必死で我慢した。


自分達の日々の観測が、明日の地球を救うという気構えがあったからである。






 その気持ちは、研究室の大ホールに用意された、たくさんのモニターに映し出された一人一人の顔を見ればわかった。






「今、ここに、全世界地球温暖化研究所「ブルー・アース・ラボ」(BEL)」の発足を宣言します!」




「「………「「………わああああああああああ………」」………」」




 壁一面のモニターや会場に集まったオンダンVの面々から、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった!







「僕は、宣言する!

 もうすぐ、温暖化阻止の切り札である“氷の結晶”が規定量に達するだろう。これを見越して、ここBELでは、温暖化阻止システムの開発に着手しようと思っている。

 ついては、ここのシステムと同期させ、世界各地で温暖化を阻止できるように、同期システムを構築してほしいと思う。


 システムの詳細は、ここのBELのマスターコンピュータから後ほど送信するので、受け取り体制を整えて欲しい。


 また、同期システムの構築のための資金調達方法として、こちらで開発した冷却服飾自動作成機器汎用版の設計図も公開するので、活用して欲しい。


 この作戦は、どこの国も、どの場所も、どんな民族も…………すべて悲願としてきた。今、ここで手を繋がずして、どうするか!さあ、全世界の研究者よ!己の魂に誇りを持て!そして、立ち上がれ!!!」









「「「……「「……うおおおおおおおおおおおお!……」」……」」



 またもや、地響きとも思える歓声が、響き渡った。








 南中子みなこは、姉の布礼愛ふれあからもらった研究ノートを握りしめながら、ある種の感慨に耽ってしまった。






(つづく)

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