第72話 涙の意味は?
~~これは、地球を救うために手を繋ぎ合う仲間達の物語である~~
「だって、ウチ知ってるもん!…………ウチの記憶は、フーちゃんの記憶だもん!」
「……
「…………ゴメン、所長…………分かってるです!……だから、ウチに可愛い猫耳付けてくれたんでしょ!」
「…………だって、そのままだったら…………お前が……あいつに見えて………………う、う、うううううう……………」
「所長、ゴメンってば……泣かないで…………」
今回の物品移動で、一番疲れたのは、夏野所長だったのかもしれない。
コン コン !
「失礼しまあああす!」
「ああ、むっちゃんセンセ!……あ、シー!」
「ん?所長?寝ちゃったの?」
「うん、物品移動で、ウチに付いて移動してたから、とっても疲れたの事ですよ」
「そう。……しばらく、休ませてあげましょう………………ところで、コロナちゃん。あなたは、大丈夫なの?」
「え?何がですの事?…………ウチは、アンドロイドだから、平気な事です!」
「うん、体は平気よね…………でも、気持ちは、大丈夫?寂しくない?」
「寂しい…………って、何?…………ウチに心は無いわよ…………」
「嘘!……そんなこと無いでしょ!…………いい?我慢しなくていいわよ!寂しくなったら、言うのよ!……きっとよ!」
「むっちゃんセンセ……………………」
ググググ ガッコン ガッコン ガガガガガ ガッコン………………
「え?何、この音?です!」
「うん、校長先生が、夏野所長の冷却装置内蔵の服飾製造工場をこの校舎の5階に増設したのよ」
「あの工場も移転したの事ですね」
「そうよ。夏野所長は、あの服飾工場で生産されている制服や大人用の水着の売り上げが、温暖化阻止のシステム作りの資金につながるからって…………校長先生頼み込んだの」
「そうなんだ……」
「でもね、わたしには分かるのよ、夏野所長の考えが
…………彼はね、あの工場が湖路奈さんの負担になっているって分かってるの
…………だから、もっと全自動で稼働し、管理もAiに任せられる最新式の工場を作りたかったの
…………そうすれば、湖路奈さんが楽になるからって」
「え?所長が…………どうしてですの事?」
「決まってるじゃない!……夏野所長は、あなたのことが、大切だからよ!」
「そんなことないもんです!所長は、ウチのことを通して彼女を見ているの事です!」
「そんなことないでしょ……コロナちゃん!彼女のことを見ているんだったら、あなたに猫耳なんか付けないでしょ!」
「あ!…………この猫耳…………所長が付けてくれたんだよ!……そう言えば、さっきも………」
ポタ
ポタ
ポタ
「コロナちゃん?泣いてるの?」
「え?ええ?…………涙?…………今まで、嘘泣きはしたことあるけど、涙なんか出たこと無い……のに……です………」
胸山先生は、優しく静かに湖路奈の頭を撫でた。
(つづく)
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