第71話 湖路奈のお願い!

~~これは、地球を救うために手を繋ぎ合う仲間達の物語である~~



「所長!これを持てば、いいですか?なのです」


「ああ、湖路奈ころなさ、ありがたいんだけど、そんなに持って“BELべる”まで歩いていけるのか?」


「何言ってるでか?です。これくらい、平気に決まってるでしょ!です。

研究室にあった、3人掛けのソファー1つ、1人掛けのソファー2つ、それにソファー用のテーブル1つ、後は細々した物を入れた段ボールが10個だけの事です。

へっちゃらの事です!」


「確かに、湖路奈は力持ちだけど、見ているとそのバランスが怖いんだけど!」





「もー、所長!ごちゃごちゃ煩いの事です!ぜーんぶ、手を滑らせて、所長の上に落とすですよ!」



「わああ、それは、勘弁!はい、大人しくしますから、ゆっくりな!」


「大丈夫の事です!スピードを上げて歩いても、オートバランスセンサーが利いてますから、崩れないの事ですよ!」



 湖路奈は、ソファーを縦に3つ重ね、その上にまたテーブルを縦に置き、そのテーブルに、段ボール箱を1縦に10個重ねた。

 そして、一番下のソファーを両手で軽々と持ち上げ、自転車並みのスピードで改築した虹ノ森高校4階のBEL(ブルー・アース・ラボ)へ向かった。



 コロナは、このような荷物運びを4,5回行って、全ての物品移動が完了した。

 通常の引っ越し業者なら一日がかりの仕事なのだが、湖路奈の場合はおよそ30分ですべて終わらせてしまった。




「ふーっ!ああああ、疲れたなあーー、ねえ所長?」


「嘘つけ!あんなにバリバリ運んで、疲れる訳ないだろ?だって、お前、汗一つかいてないじゃないか?」




「あああ!所長―――、酷っいーーー!汗かいてないだって~……ウチに、汗腺かんせん付けなったくせにーーーー!」



「え?そうなの?……そんなに本物そっくりなのに、汗腺は付けてないんだ!…………こんなに人体の細胞組織を綿密に再現できているのに、どうしてなんだ?」




「うふふふふ…………だって、汗かいたら、くっさくなっちゃうじゃない?……くっさくなったら、恥ずかしいから、ウチ汗腺は付けないでって、お願いしちゃったのですよ!」



「え?お前、制作過程にも関わってたの?」



「もちろんなのよです!だって、この体は、二人の物ですからね!…………だ・か・ら・疲れたの事ですよ!マッサージしてくださいの事です!」




「はいはい、また、僕がマッサージしますよ!湖路奈さま、どこを揉めばいいですかな?」



「そうですの事ね…………まずは、腕をお願いの事です!」


「はいはい……(そう言えば、あいつもよく揉んで欲しいって言ってたなー)」






「ああ、所長?次は、足をお願いしますの事です!」



「じゃあ湖路奈、この運んで来たソファーにうつ伏せに寝てくれ!………………じゃあ、足首のところから揉んでいくぞ!」



「あ、ああ、お願いしますの事でーーす!…………うう、気持ちいいです!」



 まったくあいつは………………人工筋肉なんだから、凝ったりしないはずなのに、こんな余計なシステムをくっ付けて…………。何のつもり……なん……だ?………



「…………所長、もう少し上も…………」



「ああ、はいはい……………」



「ありがとう…………もう少し上…………」



「……………………………」



「ああ…………う・え………」



「?…………………………」



「いい!…………うえ…………」



「??………??…………」



「もっと!……………………」



「なあ…………これ以上は…………まずいでしょ!」



「えーーー!いいとこなのに…………ケチ!フーちゃんとは、やってたのに!」



「な、な、なに、言っての?湖路奈!…………」



「だって、ウチ知ってるもん!…………」






(つづく)

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