第68話 以前のように

~~これは、地球を救うために手を繋ぎ合う仲間達の物語である~~




「…………胸山むなやま先生!僕は、君に頼みたいことがあるんだ!」


 笑顔で、校長はそんな話を持ち出してきた。




 あの引っ込み思案な胸山むなやま先生が妙に乗り気で、みんなを驚かせた。


それに、真夏美まなみがニヤニヤしながらあちこちを見回しているので、南中子みなこ熱太郎あたろうは、何やら嫌な予感がしていた。






「僕はね、この同好会を研究室に格上げしようと考えているんだ。そして、胸山先生には研究室長をお願いしたい」


「え?研究室に?」


 真っ先に飛びついたのは、南中子だった。彼女にとって、この学校の“温暖化研究室”という言葉は、何物にも代えがたいものだった。


「ほ、本当ですか?校長先生!」


 校長に詰め寄った南中子みなこの迫力に、さすがの校長も身を引いてしまった。


「あ、ああ…………部長の君にまず相談すべきだったかな?すまん、できるだけ早くと思ってしまって……で、上杉君どうかな?」


「もちろん、お願いします!……こ、これで……私は……」


「いや、あの布礼愛ふれあさんの妹さんなら、絶対に了承してくれると思ったんだ。

 だから、先に他を決めて歩いていたんだが…………やっぱり、君に最初に相談すべきだったな……すまん」


「そんなことはどうでもいいんです。研究室さえ、復活できれば……」



「そう言ってくれると僕も嬉しいよ!ただな……君には本当に謝らなければならないんだ…………あのウィルスに侵されていたとはいえ、君の姉さんの研究を妨害していたのは、僕なんだ」



「ええ、分かっています、校長先生。

 ……でも、それはもう過ぎたこと。今は、この温暖化を止めることが大切なんです。

 …………姉さんだって、それを願っているはずなんです!」



「そうだな…………。うん!……。

 校舎4階の改修を明日から始めることにしたんだ。以前よりももっともっと使いやすく研究室を整備するから待っていてほしい。

 …………それで、……その~研究室の備品整備や同好会室の引っ越し、夏野なつの君達の研究所との連携など、様々な打合せをしたいんだが…………」



「あ!校長先生!大丈夫です!それは、シーセンセ……いえ、胸山むなやま先生が、校長先生のところへ毎日打合せに行きますから!」



「え?え?……ま、まい日?」



「おお、そうか!それは、助かる!僕も忙しくてね、学校の方もあるから、研究室のことは胸山先生、よろしく頼みますよ!」



「は、はい!≪デレ~~🤪≫……」






「おい、マナ?大丈夫か?シーセンセ、溶けてるぞ~」

「平気よ!……ダメならアッツが、影武者するから、お願いね!」



「ええええ!また、オレがシンドイの~?勘弁してよマナちゃ~ん~」

「こらっ!甘えないの、アッツ!≪ゴン🤛!≫……」




「痛ってぇ~……って、久しぶり!えへっ😉」



(つづく)

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