第62話 凸凹コンビ

==これは、地球を救うヒーロー達の日常に密着した物語である==




≪レッツ・オンダン・ファイブ・チェインジ・アーーーープ!≫


 狭い試着室で、2人は目いっぱい輝き、辺り一面をレインボーフラッシュで彩った。

 カーテンから漏れ出る虹色の蛍光は、店中の温かいミストに反射し、小さな虹を至るところで発生させていた。



「うわあああーーなんて奇麗なのかしら!」


 先ほどからスチームアイロンを振り回していた、かわいい店員さんは、虹に見とれてしまった。




「今よ!イエローアッツ!」


 試着室のカーテンが勢いよく開けられ、ピンクマナイエローアッツが、飛び出して来た。


「イエローはトップスを!…………あたしはボトムスをやるから!」


「りょーっかい!ピンク!……ナイスアイディアだぜ!」




 イエローとピンクのオンダン戦士は、脇目も振らず一直線に店員さんに突撃した。そして、彼女を両側から挟むようにして通り過ぎた。

 その瞬間、店員さんは気を失ってその場に倒れてしまった。


「イエロー、それを早くこっちに寄こして!」


「お、おお……ピンク、ほいっ!」



 オンダンピンクは、両手に真っ赤なビキニを持ち、それに向かってオンダングローブの先からオンダンビームを浴びせた。

 オンダングローブを填めた、ピンクの指先から照射されたビームは、除菌作用が強化されたものであった。


みるみるうちに、真っ赤なビキニからは、真っ黒い霧のようなものが溢れ出てきたが、間もなくその霧も消えてしまった。


 その後には、いつものように“氷の結晶”が現れたのだった。9つ目だった。




「よし!うまくいったな」


「お、おお、そ、そう、だだだだーーー」


「どうした?イエロー?」




「い、いいや……て、てん、いんさんを……は、はや、はや、早く……た、た、助けな、な、ないと!!」


「あ!だめーーー!アッツは、あっち向いてて!」


「えーー、は、早く、た、助けないとおおおおーーー!」




「いいの!あたしが助けるから!……とにかくアッツは、ダメエエエエエエ!」




 そこに、倒れている店員さんは、オンダンイエローとオンダンピンクに、ビキニのトップスとボトムスを奪い取られたままだったのだ。


 ピンクは、とにかくイエローを遠ざけてから、店に展示していたビキニをとりあえず着せてから、彼女を揺り起こした。

 店が混乱した時、全てのお客は外に避難していて、ここにはイエローとピンクしかいなかったのが幸いした。



「大丈夫?ねえ、起きて!起きて!」


 チェインジを解いたマナは、優しく店員さんを抱き上げて呼びかけた。



「……う、うう……わ、わたし、どうしたのかしら?……あなたは?」


「えっと…………通りすがりの、ただの客です」



 そこへ、やっぱりチェインジを解いたアッツがやってきた。




「チェッ、残念!

…………………大丈夫ですか?

えっと、オレ達は、この店の“特別限定チラシ”を持って来たんです!」


 何を期待していたのか、アッツは少し残念そうにしていたが、すぐに目的のチラシを見せた。


「あ、ああ……そうだったんですか!では、早速、こちらへどうぞ!」



 商売熱心なのか、店員さんはまだ自分が違う水着を着ている事にも気づかず、2人を店の奥のビップルームに案内した。

 その頃には、避難した客や他の授業員も店に戻って、また、いつも通りのお店になっていた。




「あ!店長。そちらの方は、ビップのお客様ですか?」


「ええそうよ。私が案内するから、お店は、しばらくみんなで、お願いね!」


「はい店長、分かりました。ごゆっくり!」






「へー、この人、店長なんだ~」


 アッツは、店長に案内されながら、小さな声で真夏美に話し掛けた。





「……道理で美人だと思った。…………ところで、マナ、どうして店長自身じゃなくて、あのビキニが怪しいって思ったんだ?」


「そんなの簡単よ!あの真っ赤なビキニのトップスは、彼女に合ってなかったのよ!絶対に、あれは自分で選んだものじゃないはずよ!」



「え?合ってないって、どういうこと?」



「やっぱり、アッツは男の子ね~……あのトップスには、規定以上のアンダーパットが詰め込まれていたのよ!」



「うーーーっ!そっか、オレは表面の温泉マークばかりに気をとられていて、中身までは見ていなかったんだーーーー!」


「何言っての!

アッツは、中身は見ないで、変な想像ばっかしてたんでしょ!もー《ゴン》!🤛」


「う、ひょおおおーー.·´¯`(>▂<)´¯`·. 」



(つづく)

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