第55話 原動力

==これは、地球を救うヒーロー達の日常に密着した物語である==




「ごちそう様でした!お父さん、ありがとう…………」


「いやー、俺こそ感謝してるんだぞ!お前達には……」



 毎年恒例になっている岡崎家おかざきけの記念日は、今年も楽しく終わることができた。いや、『楽しく終わらせなけりゃいけないんだ』と、真夏美まなみは毎年思い出す。

 だって、お母さんは、メソメソしてることなんて大嫌いだったから…………。








 それに、あの時、優しく包んでくれたミーちゃんとフーちゃんの為にも…………


▲▽▲▽▲▽▲▽夕食後、真夏美はいつものようにお風呂に入り、一人で物思いに耽っていた。チャプン~…………






≪あたし達がくじけなかったのは、南中子みなこ先輩と布礼愛ふれあお姉さんが居たからなんだけど…………5年前のあの日、あたしは何もしてあげられなかった………≫


 真夏美も父親と病院へ駆けつけた。しかし、そこには、泣き崩れる南中子がいた。真夏美も、涙が出て止まらなかった。



 昔、自分がしてもらったように、温かい気持ちを分けたかったが、南中子には何を言っても伝わる気がしなかった。

 それだけ、彼女にとって姉は存在が大きかったということが、いやというほど真夏美には分かった。




 もちろん、真夏美はすぐに南中子の家を訪ねたり、話しかけたり、一緒に食事をしたりと、できることは何でもやった。しかし、それらは南中子にとって、癒しにはならないことがすぐに分かった。



 南中子は、中学に入ってから姉の研究以外は、まったく興味を示さなくなった。友達も作らなかったし、学校や家以外で姿を見ることは無くなった。


 それでも真夏美は、影ながらずっと見守っていた。そして、いつかは彼女の役に立ちたいと考えていた。

 真夏美は、勉強が得意じゃない。だから、南中子の研究に役立つためには、体を鍛えるしかないと考えて、中学では女子野球部に入った。


 少しぐらいの暑さなら負けない体を作り上げた。そして、高校に入った今、彼女はまっしぐらに“地温研同好会”の扉を叩いたのだ。



≪これで、あの時の恩に報いることができる≫



 真夏美は、嬉しかった。おまけに、オンダンVとして戦うことになり、その自慢の体力も生かすことができるようになった。

 彼女にとって、長きに渡る準備が花開いたようだった。






『おーい、マナー……大丈夫か?そんなに、長湯して?』



『あ、あ、はーーい!……今、出まーーす!……(いっけね、最近、嬉しくてすぐミー先輩のことを思い出しちゃうのよね~…………まあ、ところどころに、アッツが顔を出すから、長くなっちゃうんだけど……)』


 真夏美がんばれたのは、その上杉姉妹への想いがあったからなのだが……もう一つの支えがあったことに、本人はまだ気づいていなかった。






(つづく)

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