第41話 眠る布礼愛
==これは、地球を救うヒーロー達の日常に密着した物語である==
▲▽▲▽▲▽▲▽5年前のあの日……
午前中の授業もあったが、その前に経過実験している水着の様子を確かめようと思ったのだった。
まだ、だれも登校してしていない早朝の校舎。4階への階段を上りかけた時、急に非常ベルが鳴り響いた。
ジリジリジリジリジリリリリリリリリ………ジリジリジリジリジリ………
「何だ!どうしたんだ?……」
夏野は、階段を駆け上がった。もうすぐ、4階に辿り着こうという時、目の前に白っぽい煙のようなものが見えた。
「うっ!……焦げ臭い!……火事か?場所は?………あ!」
夏野は、目の前の研究室の扉から黒い煙が漂っているのを目撃し、焦った。
「火事は、ボク達の研究室か?」
慌てて、夏野は研究室のドアを開けた。途端に、真っ黒い煙が、夏野を襲った。
「
この時間、いつもの布礼愛なら研究室にいるはずだ!夏野は、白衣の袖で口を押えながら、研究室の中で大声を出しながら、布礼愛を探し回った。
「いつもの研究室には、居ない!……隣の実験室は?」
バン!
力一杯、ドアを開けた。
そこも、煙が立ち込めたいたが、先ほどよりは幾分濃度も薄く、色も白っぽかった。ここでも、夏野は、声を限りに、布礼愛の名前を叫んだのだった。
「あ!布礼愛さん!」
実験室の奥で、床に倒れている布礼愛を発見した夏野は、急いで駆け寄った。
「布礼愛さん、布礼愛さん!……大丈夫ですか?」
煙の中で、夏野は彼女に呼びかけながら、体を静かに持ち上げた。
「まだ、息はある!……さあ、逃げますよ、布礼愛さん!」
「……ま、ま、待って!……わたしより…………あの、あのデータを……」
息も絶え絶えの布礼愛は、自分よりも隣にあるものを指さして、必死で夏野に訴えた。
「そ、そ、そんな事!……ボクが、布礼愛さんを放っておくなんて……………」
「は、は、早く…………に、にげ………て、たい……よ…………………」
布礼愛は、夏野の腕の中で、意識を失ってしまった!
「……うううううううう……おおおおおおおおおお……おりゃりゃりゃりゃりゃりゃ……あああああああああああああ!」
夏野は、ありったけの力…………いや、火事場のバカ力で、自分の限界を超えた力を出して、布礼愛と布礼愛に託された物を両手に抱えて、煙の研究室から飛び出した。
「はあ……はあ……はあ……はあ……………布礼愛!布礼愛!助かったよ!……」
「…………あ~………たい……よう……さ……ん…………ありが……とう……………………………わたしの……研究……お……がい……しま……………す…フッ…・ ・ ・ ・ ・ ・ ――――――――――」
「ふ、ふれ、ふれあさーーーーーーーーん!うおおおおおおおおおーーーー!」
太陽は、研究室前の廊下で、横たわる布礼愛を抱きしめて、ありったけの声で叫んだ!
しかし、彼女の返事は無かった。
ようやく駆け付けた消防隊が来た時には、布礼愛は帰らぬ人になっていた。
夏野は、涙を腕で拭いながらも、布礼愛の体を救急隊に預け、自分は彼女に託された物を抱えて、この虹ノ森を後にしたのだった。
▲▽▲▽▲▽▲▽
「うう……うう……うう……フュエ……フュエ……ズズ……ズズ……」
「所長、またなのね……どうして、悲しいの?……わたしの膝で眠ると、いつも悲しい夢をみるの?…………ねえ………わたし…………所長を悲しくさせてる事あるの?…………」
暫くしたら、所長はまた安らかな顔に戻っていった。頬に涙の後を残したまま、彼は湖路奈に包まれて、安らかな寝顔を思い出したようだった。
(つづく)
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