第40話 研究室の曲がり角

==これは、地球を救うヒーロー達の日常に密着した物語である==



▲▽▲▽▲▽▲▽湖路奈ころなの膝で、眠る太陽……





「……う、うっ……うー…………」


「……所長……また、苦い顔になってきた……苦しいの?……ねえ……」

 湖路奈コロナは、そんな所長の肩をちょっとだけ抱えるように、自分も前のめりになった。















▲▽▲▽▲▽▲▽研究室2年目の太陽たいよう布礼愛ふれあ……




「どうしたの?……布礼愛ふれあさん?」


 研究室に来ると、彼女はいつも脇目も振らず、調べ物をしたり、論文を書いたりしているのに、最近は窓の外を見て何か考え事をしている時が多い。

 そんな様子を見るたび、太陽は気になってどうしようもなかった。


 ただ、引っ込み思案な太陽にとって、そんな彼女に声を掛けるのは、とてつもなく大きな勇気がいることだった。




 本当にしばらく太陽は悩んだ。たった、これだけの言葉を掛けるのに、一ヶ月も掛かってしまった。





「…………うん……それがね……。わたし少し心配し過ぎかしら?」



「え?ええ……、何のこと?何か心配な事があるの?」





「……あのね!……校長先生のことなの!」


「校長先生が、どうかしたの?」


 太陽には、さっぱり見当がつかなかった。しかし、布礼愛は何か確信でもあるような感じで話し出した。




「最近はね、校長先生が研究室に来なくなったのよ……最初の頃はよく顔を出して、論文なんかも読んでくれたわ……」



「そう言えばそうかな……でも、最近は校長先生も学会があるとかで、よく教頭先生と打合せをしているから、忙しいんじゃないかな…………気にすることはないと思うよ」



「でもね、それだけじゃないの!……懸賞論文の募集を止めてしまったわよね……私達がこの研修室に招待されるまでは、毎年募集していたのよ。特別研究生も数人いたの!……でも、私達がこの研究室に来てからは、他の人はみんな卒業してしまったそうよ!」



「そうだったの?ボクは、てっきりボク達だけかと思っていたんだ……」



「そんなことはないわ…………こんなに広い研究室、他にもいろんな実験室もあるのよ、昔は多くの研究生がいたらしいわ」



「……すごいなぁ~、布礼愛さんは、そういうことも考えて調べていたんだ……ボ、ボクなんか、自分のことで精一杯で、周りのことなんて…………ゴメンね……」



夏野なつの君が謝ることじゃないわ!……わたしはただ気になる性格だから……他を気にし過ぎて、自分の研究があんまり進んでいないのよ……」



「そんなこと無いよ!君の研究は、素晴らしいんだ!……とっても、地球の為には大切なことだから、慌てないで確実に、いろんなことを考えなら進めている布礼愛さんが……正しいんだよ!」


「もう、うふっ!何よ、夏野なつの君ったら、そんなにムキになって…………でも、ありがと!太陽たいよう君!」


 夏野は、そう言って笑顔を見せてくれた彼女のことを、また好きになった。




 それから、夏野と布礼愛は、校長のことは気にせず、自分達の研究に没頭することが多くなった。




(つづく)

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