第8話 謎の贈り物・

==これは、地球温暖化に立ち向かう、純真な高校生たちの物語である==





「あ!ミ、……部長!(ミー先輩は、“地温研ちおんけん”の時は、部長って呼べって言うの)大変です~!!」


 あたしは、段ボールの中から手当たり次第に荷物を引っ張り出した。


「見て見て!これ、ブーツよ。それから、ロングの手袋!そして…………きゃあーー、可愛い水着だわ!あ、それにレースのパレオとレースの上着かしら?」


 他の段ボールも見ると、同じようなデザインの物が入っていた。ただ、それぞれに基調となる色は違っていた。


「おい、マナ!この段ボールには“岡崎 真夏美おかざき まなみ 様”って書いてあるぞ」


 ミー先輩が覗いた段ボールには、あたしの名前が?

 ……じゃあ、これは?……あたしは、さっき明けた段ボールの蓋をひっくり返して見た。そこには、“中村 熱太郎なかむら あたろう 様”って書いてあったの。


「これ、アッツのだ!」




「あれ?こっちは、“上杉 南中子うえすぎ みなこ 様”って書いてるぞ」

と、アッツが大きな声で叫んだ。



 すると、後ろの方でシーちゃんセンセが小さい声で、ブツブツ何か言っていた。彼女は、段ボールを抱きしめながら、悦に入っていた。


「わ、わたし……の物まで……あ、ある。……わたし、み、認められた?

でも、なんで?……ど、どういう……こと?」


 シーちゃんセンセは、満面の笑みで、段ボール箱を開けていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆アイキャッチ!

https://kakuyomu.jp/users/kurione200/news/16818023212176680873

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆挿絵。一休み



「おい、こんなものまで入ってるぞ!」


 アッツが、段ボールの中から最後に出したのが、腕時計だった。あたしも自分の段ボールから同じようなものを探し出した。あたしは、すぐ手にはめたみたが、少し厚い文字盤とゴツイ作りに、少しがっかりした。

 これは、どう見ても女性用じゃない感じだった。





 するとシーちゃんセンセが、急に大きな声で叫んだ。


「こ、これ……ダイバーズウオッチよ!……み、みて……ここ、気圧や水圧、水深、高度などが計測できるデジタルウィンドウが、文字盤の中にあるわ!」


 そして、これまた嬉しそうに腕時計を眺め、すぐに左手に填めた。

 シーちゃんセンセは、そのダイバーズウオッチに頬擦りして、とても気に入った様子だった。


「センセ!詳しいのね。ダイビングとかやってるの?」


「あ、あ、マナちゃん……う、うん……最近は、海のな、中が、……涼しくて……いいのよ。そ、それにね…………海に潜る人は、……あんまりいないの。

 …………私、人が苦手じゃない、でも、う、うみの……中は……しゃべらなくていいし……」


「そっか、シーちゃんセンセにとって、海の中は、快適なんだね」



「そ、それに、……最近……は、海に、変な……怪物も出るから……誰も寄って来ないの…………私だけの海なの!」



「胸山先生、あなたはその怪物は、怖くはないのか?」


 ミー先輩が、不思議そうな顔をして尋ねた。



「あ、部長さん、ああ、それは平気…………怪物とは、仲良く……な、ならなくて……いいから!」



 真剣な顔で話すシーちゃんセンセは、本気でそう思っているような口ぶりだった。


 え?大丈夫かなぁ、………?




(つづく)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る