第146話 【生配信回】悪い冒険者をやっつけろ!①

「はーい! ユイちゃんネルのユイちゃんです! 今日も生配信やっていくよー!」


「ユイちゃんネルの紗夜です。今回は、悪い冒険者を見つけて、やっつけて逮捕していこうと思います! みなさん、応援していてくださいね!」


"ぱちぱちぱち"


"始まった始まった"


"ほう、魔法少女が悪人に退治に繰り出すとは、見ものですね"


"大丈夫? 最近、闇冒険者を捕まえようとすると襲ってくる人型モンスターがいるって聞いたけど"


「はい、もちろんユイたちも知ってます! でも、来るなら来いです! むしろ返り討ちにしてやるです! ね、紗夜ちゃん?」


「うんっ、あたしたちがやっつけちゃいます! まあ、あたしたちが怖いんなら、出てこなくてもいいですけどー」


「それじゃ盛り上がんないけどー……怖いんじゃあ仕方ないねー。ぷふーっ、トップレベルの冒険者は襲われてないみたいだし、ビビリなのは間違いないよね、ぷぷぷっ」


"珍しく煽りよる"


"煽り紗夜ちゃんかわいい"


"嘲笑ユイちゃんかわいい"


"そういうのもっとちょうだい"[¥10000]


"ま、どうせ今回もモンスレさんいるだろうし、平気だろ"


"モンスレさん、ピンチのときはよろしくー"


「本当にモンスレはいねーんだけどな……」


 そこに紗夜でも結衣でもない声が入る。


"なんだ今の声?"


"スタッフさん? 声入っちゃってるよー"


「あ、わりぃっ、つい喋っちまった」


 雪乃は紗夜たちの素直に謝る。紗夜は気にするなと笑い、結衣は雪乃を画面内に引っ張ってくる。


「はい、今日はモンスレさんはいませんが、心強い助っ人が来てくれています! レベル4パーティ『花吹雪』! こちらはそのリーダーのゆきのん!」


「変なあだ名で呼ぶなって! 雪乃だ、雪乃。桜井雪乃! つか、アタシらまで映すなよ」


「遠慮しないでください。今日は一緒にやっていく仲なんですから」


「え、遠慮なんかしてねーし! ただ、アタシにこういうのは似合わねーだろって」


"この人、火蜥蜴サラマンダー戦の配信で感じ悪かった人?"


"でもなんか普通に仲良さそうじゃない?"


"ツン営業してた?"


「なんだよツン営業って! ま、まああんときはアタシも少し誤解してたっつーか……今じゃ普通に、だ、ダチっつーか……」


「はい、こんな感じで雪乃さんは、言葉遣いはちょっと荒いけど、ツンデレ風味で、思ったことが顔に出る、素直なかわいいお姉さんなんです!」


「あと、とってもいじりがいがあって面白いです」


「つ、ツンデレじゃねーよ! アタシがいつデレたよ!」


「「ついさっき」」


"ついさっき"


"ついさっき"


"ついさっき"


 紗夜と結衣、そして視聴者の心が重なった瞬間だった。


「くっ、お、おめーら……」


「ちなみに、撮影や照明は『花吹雪』のメンバーの方々がやってくれています! さらに、今日は特別で、『武田組』のみなさんも応援に駆けつけてくれました」


 と、カメラ係が、画面外にいた吾郎たちを映す。


「おい、映すな映すな。こんなむさ苦しい顔見せても、誰も喜ばねーから」


"ベテラン感の漂うおっさんだな"


"おっ、武田先生じゃん"


"先生、頑張れ~!"


"おれもう冒険者辞めちゃったけど、最後まで親身に相談に乗ってくれてありがとうございました!"


"頑張れ、おっさんの星"


「武田さん、意外と人気みたいですよ?」


「ほとんど身内ネタだろうがよ。いいから、画面にはかわい子ちゃんだけ映しとけって」


 映りたがってる若いメンバー1名を引きずって、吾郎は退散していく。


「と、今回はこの総勢8人でやっていきまーす! まずは第2階層から第3階層へ向かっていきます。闇冒険者出てこーい、人型魔物モンスターもどんとこーい!」


"いや、これ結構すごいメンバーじゃない?"


"↑どういうこと? 詳しく"


"↑冒険者パーティの中でも、ナンバー2~4が揃ってる"


"ナンバー1ってモンスレさん?"


"↑聞くまでもなかろうよ"


「こんなメンバーじゃ、逆に逃げられちゃうかなぁ? でも臆病ならしょうがないですよね。人型魔物モンスターは、そうじゃないって期待しますけど」


"紗夜ちゃんまた煽るじゃん"


"おれも紗夜ちゃんに挑発されたい……"


"サヨ、甘く見ちゃダメよ。相手はかなり強いはずよ、8人いても苦戦するかもしれないわ"


"危なくなったら逃げなさい。今回は本当に離れていて助けられないのだから"


「あれ、結衣ちゃん、今のコメント……」


「うん。これ、きっとロザりんだ。ロザりん、コメントありがとうー!」


"こちらこそ、いつも楽しく見ているわ。ありがとう"[¥15000]


"ロゼちゃん本人!?"


"気前いいなぁ"


「わ、ロゼちゃん、投げ銭ありがとう! 見守っててね!」


"ええ、くれぐれも気をつけて。ユキノもゴローも"


"じゃあ。また暇ができたらコメントするわ"


「うんっ、またねー!」


"ちょっとしたコラボだったな"


"ピンチに駆けつけてくれたらさらにいいけど、それは難しいかぁ"


「それじゃあ、ロゼちゃんからも応援ももらったことですし、気を引き締めて行ってみましょうー!」


 紗夜たちは引き続き生配信をしながら、逐一、自分たちの位置を特定できるような会話を交えつつ進んでいく。


 襲い来る魔物モンスターを次々に蹴散らし、第3階層に突入してからしばらく。


"!? 今、物陰でなんか動かなかった?"


"動いたか?"


"いややっぱり動いてる!"


 その気配には、魔力探査を使う紗夜は気づいていた。普通の魔物モンスターだと思っていた。


 だがそいつが、二本の足で歩いてきて、日本語を喋りだしたのなら、もう普通じゃない。


「雪乃……お前のせいだ。お前のせいだ……!」


"あれがウワサの……ッ!?"


"人型モンスター"


"本当に喋るんだ"


"なんの魔物だこれ……虫……?"


 現れた人型魔物モンスターは、人間としての腕のほかに、さらに左右一対のカマキリのカマのような腕を持っていた。


 また頭部には触覚。左右の目は複眼で、中央に単眼が追加されている。そして口も、蜂や蟻の顎のように左右に開かれる。


 威嚇するように口を左右に展開して、ガチガチと歯を当て鳴らす。


 雪乃は息を呑み、変わり果てた友人の姿を見据えた。


「アタシが分かるってことは、やっぱりおめー、梨央なんだな……」




------------------------------------------------------------------------------------------------





次回、合成人間キメラヒューマンとなった梨央の実力は?

ご期待いただけておりましたら、ぜひぜひ★★★評価と作品フォローで応援ください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る