第144話 この施設は停止させていこう
「実物に遭遇するのは初めてで、戦闘でも戸惑ってしまいましたが、実はわたくし、
「フィリアさんが?」
「わたくしの
「
「製造まではしていないので問題ありませんでした。その方は女性のわたくしから見ても綺麗で、格好良くて……さらに禁忌という言葉に魅力を感じてしまう年頃だったのもあり、大変興味深く学ばせていただきました……」
「その人も、よく人に教えられるほどの知識があったね」
「
「そうなんだ。でも助かるよ。フィリアさんは、おれの知らないこともたくさん知ってて頼りになるなぁ」
「それを仰るなら、タクト様です。わたくしの知っていることなんて、タクト様の足元にも及びません」
「いやいや、それは過小評価だよ。君がいなきゃできないことはたくさんあったんだし」
「タクト様がいらっしゃらなければ、そもそもわたくしはここにいないでしょうし」
そこで、ぱんっ、とロザリンデが手を叩いた。
「こんなところでイチャイチャしないの。わたしだって、我慢してるのにずるいわ」
「あ、ごめん。いやイチャイチャしてるつもりはなかったんだけど……」
「してましたよ。それはまた落ち着いてからどうぞ。それよりフィリアさん、
丈二はため息交じりに話を軌道修正する。フィリアは、少しバツが悪そうに苦笑してから答える。
「はい、そもそも
例えば、哺乳類をベースとして、無理矢理に昆虫の手足を移植したらどうだろう? 内骨格の肉体に、外骨格の部位だ。それだけで破綻しているが、魔法的な処理を施すことで一応、形にはなる。ただしその肉体にかかる負荷は、相当なものだろう。
「ですので、負荷になってしまっている部位は切除してしまったり……すでに生命維持に不可欠になっているなら、ベースの肉体に相性の良いものに付け替えたり、といった手術で寿命を伸ばすことができます。上手くやれば、ベース本来の寿命を超えた長命を与えることもできるのではないか、と
「そうだとしたら、希望が出てくるよ。すぐにはもとに戻せなくても、その方法を研究する時間は稼げる」
「……下手をすると大騒ぎですね。不老長命は人類の夢です。
「それは、どうでしょう?
丈二の危惧に答えたフィリアだが、すぐあることに気づいて視線を落とす。
「延命のためとはいえ、風間様をこの
「そう悲観することはないわ、フィリア。わたしも
ロザリンデはそう微笑んだが、その笑みを儚げなものに変わっていった。
「それにしても、長命……ね。わたしはあなたたちに会えたから、それも良いことだったと思えるけれど……その前は、逃げて隠れて眠るだけの日々が永遠に続くと思って絶望していたわ。長生きしても、良いことばかりではないのに、なぜ求めるのかしら」
その疑問には、誰も答えられなかった。
長命であるゆえの想いは、おれたちには想像しきれない。
「……とにかく、これから隼人くん、ついでに梨央さんを見つけて、捕まえて延命処置をする。完全に戻してあげるのは、研究が進んでから……ってことでいいかな?」
反対意見はない。おれたちの方針は決まった。
「よし、じゃあ戻るけど、その前にこの施設は停止させていこう。ロゼちゃん、頼める?」
「ええ、いいわ。尾けてきてる
「オーケイ」
おれは敢えて、近くの設備に触れようと手を伸ばす。
すると、おれたちを監視している
その隙にロザリンデは霧化して移動。溜め込まれた魔力石から繋がる魔力回路のスイッチを切る。
各種設備が順次動きを止めていき、明かりも消えていく。
これで
監視している
おれが設備から離れれば、その
自由意志をもった
そう思った瞬間、おれの中である違和感が生まれた。
「どうしたの、タクト。もう出るのではなかったの?」
合流したロザリンデに問われて、おれはその違和感を口にした。
「どうして、ここでは
けれど自由意志を持つ
実際、秘密結社ウィズダムは、自らが生み出した
自動量産するなら、忠実な
なのにここでは違う。
おれの違和感への答えは、見つからなかった。
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※
次回、一方その頃の雪乃たち!
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