第141話 たとえ禁忌であろうと
第3階層奥は他のパーティに任せ、おれたちは第4階層を重点的に探索する。
徘徊しているのは、基本的には普通の
ときおり広い空間があるものの、ほとんどが通路で構成される第4階層では、数は脅威だ。
トップエース級のパーティを欠いていた先行調査では、あまり進展がなかったのも頷ける。雪乃たちが出会うまで
先行調査が済んでいた範囲を越えて探索していくことで、いよいよ
「みんな注意してくれ。
「おぞましい……。誰がこのような合成を……」
あからさまに嫌悪感を抱くフィリア。そして静かな怒りを見せるのは、ロザリンデだ。
「上級吸血鬼にも悪い子は多いけれど、ここまで命を弄んだりはしないわ。せめて苦しまないように、優しく殺してあげましょう」
「研究のためにも、サンプルを捕獲したいところですが……その余裕はなさそうですね。一条さん、私が前に出ます。その隙に、尻尾を切り落としてください」
飛び出していく丈二。要請に従い、おれも前へ。
だが丈二は思ったように相手を抑えられない。
例に漏れずこの
すぐロザリンデが援護に入る。
「――!? ダメだわ、心がない……! 操りようがないわ!」
「わたくしにお任せを! 津田様、5秒後に全速で後退してください!」
「了解しました!」
5秒のカウント後、フィリアは集中させた魔力を開放。強力な魔法を発動させる。土や石を自在に変形させる魔法だ。
丈二は瞬時に効果範囲外へ脱出。
しかし魔法の効果が出るほうが早い。狭い廊下の上下左右が、鋭い棘に変じて突き出される。さしもの
勝利を確信して、フィリアたちの表情が緩む。
刹那、おれはフィリアの眼前に剣を振るった。
「――えっ?」
フィリアが目を丸くしたのは、おれの行動に対してだけではないだろう。
その瞳には
おれが尻尾を切り落とすのが一歩遅れていれば、フィリアは猛毒に犯されていた。
ロザリンデが咄嗟にフィリアの腰を抱いて後退させる。
「この子、自分が死ぬのも恐れないというの!?」
「そう作られてるんだ!」
「くっ、トドメを!」
丈二の短槍が
「フィリアさん、火だ! こいつを燃やし尽くすんだ」
「は、はい!」
指示通り、フィリアが火炎を放射。
「――よし。ここまでやれば、いいはずだ」
丈二は脳を狙って頭部を貫いたが、
だから四肢を切断した。そうすれば、もしまだ生きていたとしても、ろくに身動きできないはずだ。
それでも這って向かってくる恐れがあるので、炎上させた。高熱によるダメージよりも、酸素を奪うことを重視している。いくらなんでも酸素無しで生存はできないはずだ。
念のため剣を収めず構えて続ける。
丈二は今度こそ安堵のため息をついた。
「ここまでやって、ようやく倒せるのですか……」
「ああ、
「わたくしの時代では、製造を禁忌とされて久しいです。
フィリアの言に、ロザリンデも頷く。
「随分前に、魔王と呼ばれたエルフが開発したのだったわね。その後、技術が流出して悪用する組織が乱立したと聞いたけれど……」
「ああ、おれの仲間にひとり、そういう組織を専門に戦ってる人がいたよ。ただ、あの人の戦い方は、
「『
「そう。あの人、普通に強いから
丈二は困ったように唸る。
「となると、一条さんだけが頼りですね。我々の
「ああ、任せてくれ。って言っても、
フィリアは、その意味をすぐに解した。
「タクト様は、あの人型
「確証はないよ。でも……正直そうだと信じたい」
「なぜ、そのような最大の禁忌を?」
「たとえ禁忌であろうと、その技術が、隼人くんの命を救っているかもしれないからさ」
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※
次回、第4階層探索続行です! 拓斗たちは無事に手がかりを得られるのでしょうか!?
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