第45話 あの伝説の、史上最高の英雄なのですね……!
「ちょっと待ってくれ? おれが
「それでしたら、やはり違うのでしょうか……? タクト様は、どのような活動をなされていたのです?」
「まあ、冒険者だよ。
「例えば、どのような戦いを?」
「大変だったのは
「その専門家は……『闇狩り』のハーカー卿のことでは?」
「そうそう、エドワード・ハーカーさん。ロハンドールの辺境伯でさ、何世代にも渡って
「ということは……タクト様、魔法学の祖も御存知では?」
「もしかしてシャロンさんのことかな?」
「はい、『勇学士』シャロン・スランド様です」
「懐かしいよ。他の仲間には
「そのお仲間というのは……タクト様を含めて7人?」
「いや……もうひとりいたよ。世間的には全然目立ってなかったけど、どんな武具でも作ってくれた人がいる。最後の最後、魔王討伐の旅に同行して……自分ごと魔王を封印して、亡くなられた」
「その方は……ショウ・シュフィール様?」
「なんで知って――いや、そうか。フィリア・シュフィール・メイクリエ……。彼の一族は、王族にまでなったのか……」
「はい。わたくしのご先祖様です。やはりタクト様の仰っていることは正しいようです。あの伝説の『
「史上最高って……。他のみんなのほうが明らかに強くて凄かったよ」
「いいえ、強さではないのです!」
フィリアは、ずいっ、と身を乗り出した。
「多くの脅威が存在したあの時代、英雄は各々、専門の敵にのみ対応しておりました。
両手を握りしめて熱く力説するフィリアである。
「そうして、破滅をもたらすあらゆる勢力から人々を救い続け、付いた二つ名が『
うわぁ……。これはきっと、活躍に尾びれがたくさんついちゃってるぞ……。
フィリアは目を輝かせながら、胸元で両手を合わせる。
「わたくし、ずっと憧れていたのです。いつも夜寝る前にせがむのは『
「あはは……幻滅させちゃってたら、むしろごめんなんだけど」
「いいえ! あなたは思い描いていた通りの方でした。グリフィン退治のときにも申し上げましたが、貴方は、誰かのためにその力を振るえる、本物の英雄です!」
「そう言われると照れるけど」
「握手をしてくださいませんかっ? それにそれに、一緒に写真をお願いいたします!」
フィリアは興奮気味に席を移動してきた。
おれの右手をフィリアの左手が包み込む。まるで恋人つなぎみたいに。
そしてスマホで自撮りをパシャリ。
その写真の出来に満足したのか、フィリアは満面の笑みを浮かべる。
「ありがとうございます、タクト様!」
いつにもましてはしゃいでいるフィリアは、可愛らしく魅力的だ。
あれ? これ、もしかして
告白してもワンチャンある?
とか思わなくもないが、大きな疑問があって、そんな気にはなれない。
「でもおれの活動は、フィリアさんにとって200年以上昔のことなんだよね? これはどういうことなんだろう?」
「はい……不思議です。こちらと
言ってから、ハッとする。
「だとすれば、わたくしたちは……もう二度と家族のもとへ戻ることができないのですね……」
おれがこちらに帰還してから、
そしておれも、あの素晴らしい仲間たちに二度と会えない。帰還したばかりの頃は自分のことで大変で意識できなかったが、改めて考えると寂しくなってくる。
けれど、顔を曇らせているフィリアに、おれは首を振る。
「いや時間の進み方は同じはずだ。おれが
「では……この時代の差異はなんなのでしょう?」
「仮説だけど……。異世界転移は、単に世界を移動するだけじゃなくて、時間も移動する現象なのかも。こちらの現代と
「もしその仮説が正しいのなら、同じ穴を通れれば、わたくしたちは元の時代に帰れることになりますが……」
「仮説は仮説だからね。
「そうですね。やはり、それに尽きます」
「人手が必要だ。まずは第2階層。冒険者のみんなを育てて、第2階層で通用しそうになったら調査に送り出す……。口で言うのは簡単だけど……」
「それについては、わたくしに少々考えがあります」
「どんな考え?」
「はい。ここは冒険者ギルドの真似事をしてみるのが良いかと」
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