第21話 空港

 聖奈が旅立つ日がきた。みんなで、と言っても同僚達との送別会は終わってるらしいから、空港への見送りは聖奈が強く断ったらしい。


 それは聖奈の強い意志だ。見送りって苦手らしく、涙もろいってものある。


【聖奈〜せっかく一緒に住めたのに〜😭】


 親父、恥じらいもなく大泣き。とても欲しくて養子に迎えた一人娘だもんな。


【ほら、お父さん!!しっかりして。遊びに行けばいいでしょ。だいたいいつも家にいないで出張続きなんだから人のこと言えないでしょ!!】


 お袋はサバサバとしてる。聖奈の気持ちを何よりも尊重する人だから。


【それは、そうだけど…聖奈〜!!!】


親父が聖奈に抱きついて大泣き😭


【お父さん、泣かないでよ。恥ずかしい】


聖奈は押し返した。それは確かに恥ずかしいよな。


【じゃ、みんな、元気でね!!】


 聖奈はさっぱりとしてる。無理してるかも知れないけど。


お袋は、


【まだゲート入らなくても、早すぎない?】


【うん…でも、私も辛くなるから、ここで】


【零とは話すことないの?】


 言葉に詰まる俺に、聖奈も気まずい雰囲気を察して俺に、


【零、ちょっとお茶する?チェックイン済んでるから、そこのカフェで】


すかさず俺も、


【そうだね】


何故か親父も、


【そうだ!!!そうしよう。俺は何飲もうかな~?】


お袋が、親父を引っ張って、


【零と二人にしてあげて。もう、ほんと気が利かない人なんだから。私達は向こうのレストランに】


【いてて、何でだよ、聖奈〜向こう着いたら連絡くれよな~】


聖奈が、手をふって、


【お父さん、お母さん、ありがとう!!連絡するね】



……………………………………………………………



【聖奈、親父恥ずかしかったな】


【うん。でもね、私は嬉しかったよ。養子だから特に親の愛情って凄く感謝してる】


【親父大好きだからな〜聖奈のこと】


【お父さんから見たら零も同じだよ】


【娘のほうが気になるんじゃないの?】


そんな他愛もない話をして、


【零、あれから何か解った?琴美って娘のこと】


【何も。遊園地の👻屋敷もまた閉館になったからね。噂が噂を呼んでる気もするが…何度もその場所に行っては入れず諦めてそれの繰り返しだよ…】


【そう…その娘のこと、本当に大好きなんだね。現実に出会えるといいね】


【現実に出会っているんだけどさ…俺はね】


気まずいな、この空気…


【あのさ、】

【あのね、】


かぶった〜、さらにさらに気まずい〜


【聖奈から言って】

【零から言って】


再びかぶった〜どうする?


二人で笑って、


【こんなふうに笑って旅立てるなんて幸せ〜!!!!!】


【確かに!!】


これで、良かったね。


あれ?何か、変だ…


【零、どうしたの?】


【何か、頭が…片頭痛かな?】


違う。何かおかしい。片頭痛?音?声…声だ!!!


※すぐにお姉さんを止めて!!!※


おかしいな、この声…この声…知ってる。


琴美!!!!!


【何処にいる?琴美?】


【零、どうしたの?急に?】


【琴美の声が!!!】


※すぐに止めて。お姉さんを!!!※


何を止めるって…ここだとすると、飛行機!!!


これは、琴美の声?鬼気迫る感じだった。


何か大切なことを伝えているような…


【聖奈、今日飛行機乗らないで!!!】


【何で?無理に決まってるじゃん。チェックイン終わってるし…そろそろいかないと】


【どうしても、止めなきゃならない気が…これは俺ではなく琴美の。あー、どう伝えたらいいんだ!!】


【どうしたの?おかしいってそんなの。零、どうかしちゃったの?】


【これは絶対に何かある。聖奈が乗ってはならない意味が。頼む!!!俺を信じて】


 俺は周りを気にすることなく強く聖奈を抱きしめて懇願した。


【うーん、零、寂しいのは解るけどさ、私なりに決意して…】


突然、空港のアナウンスが、


※〇〇便ご利用のお客様にご連絡いたします。▲▲到着空港上空への飛行禁止措置が発令されました。詳細はわかり次第ご連絡いたします※ 


【……私が乗る便だ。どうしたんだろう?】


 聖奈は慌てて離れて職場に連絡をして、何か連絡を受けている。とにかく琴美らしい声の指示通りだ。そもそも出発出来なかったけど、


何で俺は解ったんだろ?というよりも、琴美だ。


教えてくれたのは、あの声は、琴美だ。


聖奈が戻ってきて、


【零…どうしよう😥】


【どうしたの?とりあえず何て?】


【配属先変更になっちゃった…】


【どの国へ?いつ行くの?】


【…向こうでの仕事も無しに…】


はぁー、どういうこと?転勤無しってこと?


【零、とりあえず詳しい話は帰ってから聞かせて。さっきのことも。私はここから職場に直行する。荷物お願い】


【解った。気を付けて】


聖奈は振り返ることもなくダッシュで。



なんで琴美の声が聞こえたのかな?


辺りを見回したけど、もちろんいないよな。



とりあえずお袋達と合流するか。


確かレストランに行ったよな?たぶんここだな。


やっぱ、ここだったね。


【零、聖奈とゆっくり話せたの?寂しくなるけど、リモートで顔も見れるからね】


解ってないな…


【聖奈の乗る予定の便、欠航になったよ】


【なに?】

【何で?】


 アナウンス聞いてないな。乗る便も把握してないのか、この二人は…まったくもう。


【で、聖奈、職場に直行したから。俺達も帰ろう】


【職場に?じゃ暫くはこっちに住めるのか!!】


親父の質問うるさい!!


【とりあえず聖奈戻ってきてから聞こう。俺も解らないけど、転勤そのものが中止になったみたい】


【そんなことあるの?欠航なったくらいで?】


もう、この両親うるさいな…


【だからさ、解らないって詳しくは!!戻ってきてから聞いてよ。家でルックも待ってるだろ。帰ろう】






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